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65.決着

 この成長は、魔法による一時的なものだ。

 成長した姿でいられるのは、一〇分程度。強い力を使えば、さらに残り時間は少なくなると聞いた。

 魔族の騎士を倒すのに、一瞬だけ全力を振り絞ったので、もうあまり変身していられる時間は残っていないだろう。

 

 あの巨大モンスターを仕留めるのにどれだけの力が必要なのか……全力で剣を振るえるのは、あと一、二回ぐらいか。


「やれ、メタルアーマーヒュドラ! 我ら魔女の天敵を滅ぼせ!」


 魔女の命令に従い、装甲竜が三つの頭から同時にファイヤーブレスを吐き、あたりを焼き払う。

 建物が吹き飛び、燃え上がり、住民達が悲鳴を上げて逃げ惑う。もはや都市全体が大混乱に陥っている。


 そうまでして、この俺を仕留めたいのか。

 上等だ。相手をしてやるぜ。

 『魔剣帝』の力、とくと味わうがいい……!


 ブロードザンバーを手にして、眼前にそびえ立つ巨大な三つ首の竜を見上げる。

 ……でかいな。あのモンスターから見れば、人間なんて虫けらみたいなものか。

 獲物の大きさ、形状を改めて確認しつつ、正面から近付いていく。


 中央にある首が正面を向き、俺に目掛けてファイヤーブレスを放ってくる。

 渦を巻いて飛来した灼熱の業火を、剣の一振りで四散させ、消し飛ばす。

 ……余計な力を使う余裕はないんだ。一気にいくぜ……!


「ア、アロン君、私も手伝うよ!」

「私も加勢しますわ。三人で集中攻撃をすれば、あのモンスターとて……」


 声を掛けてきたアーシェとマヨネラに、ボソッと呟く。


「二人にはフォローを頼む。でかい肉の塊が降ってくると思うので、被害を最小限に抑えてくれ」

「えっ? それって……」

「一人でやるつもりですの? 無茶ですわ……!」


 魔力を高めて加速し、一気に間合いを詰め、飛び上がる。

 炎を吐き続けている装甲竜の頭部へと肉迫し、魔力を込めた魔剣を叩き込む。

 ファイヤーブレスを消し飛ばし、巨大な頭部を十字に分割、真下へ降下する。

 長い首を螺旋状に駆け下りていき、剣を振るい、甲冑ごと首をザクザクとカットしてやる。

 同時に、腰に差していた三本目の魔剣、『ムラマサ』を抜き、刀身に返り血を浴びせる。

 ……ヤバイ、もう限界っぽいぞ。成長した身体が今にも消えてなくなりそうだ。

 残る二つの首のうち、一つに魔力の刃を飛ばして頭部を切断し、そして……


「これで……とどめだ!」


 『ムラマサ』に強大な威力が宿ったのを感じながら、ヒュドラの首を蹴って宙を舞い、残る三本目の首に向けて斬撃を放つ。

 妖刀から紅い魔力の刃が伸びていき、装甲に覆われた三本目の首の根元から頭部まで、ズバン、と一直線に両断する。

 ……すげえ切れ味だ。コイツはマジで名刀だな。


 三つの首をバラバラに斬りまくってやり、メタルアーマーヒュドラとやらは完全に沈黙した。

 そして、俺の身体にも限界が来ていた。身体が縮み始め、力が抜けていく。


「くっ……!」


 地面に膝をつき、どうにか着地に成功する。

 バラバラにしたモンスターの肉塊が、ドスン、ドスンと降ってくる。

 見上げると、真っ二つにした首の一つが、こちらに向けて倒れかかってきていた。

 やべえ、身体に力が……動けねえ……。


 倒したモンスターの下敷きにされる、と思った、その時。

 ふらりと、なにかの影が被さってきて……。


「はっ……!」


 剣を一閃、きらめく魔力の刃が大きく伸びて、モンスターの残骸を飲み込み、消し飛ばしてしまう。

 聖剣を手にしたそいつは、俺を見下ろし、ニコッと笑った。


「危なかったですね。もう大丈夫ですよ」


 それは偽魔剣帝に扮していた、もう一人の剣帝、カイル・ブランツだった。

 呆気に取られた俺を見つめ、カイルが呟く。


「アロン、という名を聞いた時に気付くべきでしたね。まさか、本物の魔剣帝が、こんな姿になっているとは……」

「……悪いな、面倒かけて。できれば秘密にしといてくれ」

「そうですね。あなたが子供の姿になったと知ったら、命を奪いにくる者達が殺到するでしょうし」


 どうやら詳しい事情を説明をする前に、俺が誰なのか気付いてくれたみたいだな。

 手を差し出してきたカイルに対し、首を横に振り、自力で立ち上がる。

 一気に体力と魔力を消耗したようで、めまいがするが……まあ、なんとか無事だ。


 ふと見ると、上空に浮遊した魔女が、忌々しげに俺をにらんでいた。


「お、おのれ、化け物め……こうなったら、この私が直接、手を下して……」

「……」


 魔女がこちらに向けて手をかざし、魔法を使おうとしたのが見えた。

 刹那、俺は手にしていた魔剣、ムラマサを上空に向けて放り投げた。

 ムラマサは勢いよく飛び、魔女の手をかすめて、鮮血を飛び散らせた。


「……惜しい。ハズレたか」

「ひ、ひいっ! お、おのれ、覚えておれよ! き、今日のところは、このぐらいにしといてやる!」

「眠い事言ってねえで降りてこいよ。今ここで決着をつけようぜ」

「え、遠慮する! さらばだ!」


 転移魔法を使ったのか、魔女は煙のように消えてしまった。

 ため息をつく俺に、カイルが言う。


「今の、わざと外しましたね。いいんですか、逃がしてしまって」

「ま、一回だけ見逃してやろうかってね。またなにか仕掛けてきたら、その時は問答無用で斬ってやるさ」

「子供にされても女性に甘いのは相変わらずですか」

「うるせえ。ほっとけ」


 落下してきたムラマサをキャッチし、鞘に納める。

 やれやれだ。どうにか片付いたな。


「おい、コイツをどうする」

「?」


 空から降りてきたのは、ベルリエルだった。

 ベルリエルは筋肉ムキムキの、悪魔の上半身を捕獲してきていた。

 ああ、そう言えば、こいつがいたっけ。すっかり忘れていたぜ。


「また暴れ出したら面倒だし、封印を施して、砂漠にでも埋めてしまうか?」

「ひいい……!」


 悪魔化した盗賊ギルドのギルドマスターは、かなり弱っていたが、しっかり生きていた。

 泣きそうな顔で情けない声を上げている悪魔を見やり、俺はボリボリと頭をかいた。

 正直、面倒くせえが、コイツがこうなっちまったのは、俺にも責任があるみたいだしな……。


「元の身体に戻せるんなら戻してやってくれ。そいつも魔女に騙されたみたいだし、さすがに反省しているだろ」

「我は別に構わないが、こういう輩はまた似たような事をやらかすぞ。生かしておいてもロクな事にならないと思うが」

「今回だけ、大目に見てやってくれ。そいつは一応、古い知り合いの息子だからさ」


 ベルリエルは不満そうだったが、俺の頼みを聞き入れてくれた。

 そこらに落ちていた悪魔の下半身に上半身をくっつけ、悪魔の胸部に右手を突き刺すと、悪魔の魂が宿っていたアイテムを引っこ抜いた。


「ぐああああああ!」


 悪魔は絶叫を上げ、その巨体が急激にしぼんでいき、やがて元のギルマスの姿に戻った。

 ギルマスの男はぐったりして、ボソボソと呟いた。


「結局、俺は、魔女に利用されていただけか……情けなさすぎて涙も出ねえな……」

「しっかりしろよ、ギルマス。盗賊王になるんだろ?」

「そのつもりだったが……俺なんかになれるのかな……」

「なれない事もないさ。魔女や悪魔の力に頼らず、腕を磨けよ。実力で魔剣帝にリベンジしてみろよ」

「そうだな……そうするか……」


 なにかが吹っ切れたのか、ギルマスはぼんやりした顔でうなずいていた。


 気が付けば、日が沈みかけていた。

 街の一角を瓦礫の山に変えて、事件は一応の解決を見たのだった。

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