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52.即席パーティー結成

 魔女と別れた俺は、夜のうちに宿に戻った。

 気配を消してこっそりと部屋に入り、自分のベッドに潜り込んだ。



「アロン君、昨晩どこかへ行っていませんでしたか?」

「え、えーと……ちょっと夜の散歩に……」

「散歩ですか。いいですけど、あまり危ない真似はしないでくださいね」


 翌朝。やはりマヨネラには部屋を出たのがバレていたようで、注意されてしまった。

 魔女と一緒に倉庫街へ忍び込みに行った、なんて言ったら怒られるだろうな。黙っとこう。


 宿屋の一階にある食堂にて、皆で朝食をとっていると。

 いきなり入り口の扉がバーン、と開き、黒装束の一団が乗り込んできた。

 先頭に立つのは、長い黒髪を後ろでまとめ、口元を布で隠した女、王国警備隊特殊部隊隊長のカエデだ。

 カエデは俺の姿を認めるなり、真っ直ぐテーブルに近付いてくる。


「見付けたぞ、小僧! 逃げも隠れもせずに、のんきに朝食をとっているとは、いい度胸だな! 貴様を国家反逆罪の罪で拘束する! 武器を捨てて大人しく投降しろ!」

「……」


 朝一で俺を捕まえに来たのか。仕事熱心だな。

 悪いが、俺にはまだやる事がある。ここで捕まるわけにはいかない。

 さり気なく剣を取り、椅子から腰を浮かせて逃げる準備をしていると、マヨネラがカエデに告げた。


「なんですの、騒がしい。この子達に御用があるのでしたら、保護監督者の私がうかがいますわ」

「騎士団の人間は引っ込んでいろ。その小僧の身柄は警備隊が預かる」

「……なんですって?」


 マヨネラの気配が変わり、殺気の混じった鋭い眼差しでカエデを射貫く。

 一般人なら腰を抜かしてしまいそうなマヨネラの視線を受けても、カエデは微動だにしなかった。


「あまり騎士団を甘く見ない方がよろしいですわよ? この私に引っ込んでいろなどと暴言を吐いて、無事に済んだ人間など存在しないのですから」

「ならば私が最初の一人になろう。大人しく小僧を渡せ。そうすれば貴様は恥をかかずに済むぞ」

「面白い事をおっしゃいますのね。もしや、寝ぼけておられるのでは?」

「貴様こそ、寝言は寝て言え。邪魔をするというのなら貴様も逮捕するぞ」


 二人が殺気を高め、息が詰まりそうになる。

 メルティは青い顔をしながらサラダを食べているし、アーシェはパンを頬張りながらオロオロして、マヨネラに加勢をするべきか迷っているようだ。

 ……やれやれ。仲間割れはやめてほしいな。原因は俺にあるわけだけど。


「カエデさん、昨夜は失礼しました。ですが、あれは盗まれた物を取り戻すために、ああするしかなかったんです。どうか、ご理解ください」

「そんな理屈が通るか! あの魔女は国王をさらおうとした大罪人なのだぞ! 個人の都合であんなヤツと手を組んでいいはずがあるまい! この裏切り者め!」

「裏切ったつもりはないですよ。もしも本当に裏切っていたのなら、昨晩、カエデさんの命を奪っていましたから」

「き、貴様、私を殺さずに生かしておいてやったとでも言うのか?」

「はい、そうですけど。あれだけ手加減してあげたのに、気付いていなかったんですか?」

「……っ!」


 なにか身に覚えがあるのか、カエデは悔しそうに歯噛みしていた。

 確かに彼女は強いし、今の俺では勝てるかどうか分からないレベルではある。

 それはそれとして、昨晩の対決の際、俺が思い切り手を抜いていたのは事実だ。

 間違ってもカエデを傷付けたり、殺したりしないように。

 そうする事で、俺が裏切ったわけではない事をアピールしたんだが……少しは伝わっていたのかな?


「実に不愉快な小僧だ。貴様は本当に、我々を裏切ったわけではないのか?」

「もちろんです。でなきゃ、今ここにこうして座っていませんよ。魔女とどこかでお茶でも飲んでいるでしょう」

「……」


 少しは俺の言い分を理解してくれたのか、カエデはいくらか落ち着いた様子だった。


「ならば、どうする。今後もあの魔女と行動を共にするのか?」

「そのつもりです。盗まれた剣を取り戻したら、そこで魔女との同盟は終わり。逮捕するというのなら止めませんよ」

「子供とは思えない、割り切りようだな……貴様の将来を想像すると恐ろしいぞ」


 とりあえず、カエデは納得してくれたみたいだった。

 マヨネラと殺し合いを始めるような事にならなくてよかったぜ。


 カエデ達が引き上げていった後、俺は皆に告げた。


「俺は魔女と一緒に、盗品の行方を追うよ。大事な魔剣を取り戻さないとな」

「危なくないかしら? 誰か付いていった方が……」


 マヨネラが呟き、アーシェとメルティが顔を見合わせ、俺に目を向けてくる。


「私が付き添うわ! アロン君一人じゃ心配だし」

「いいえ、ここは私が……アロンが大人の色気ムンムンの魔女にたぶらかされないように見張っていないと……」


 正直言って、どちらにも付いてきてほしくないのだが……どんな危険にさらされるのか分かったものではないし。

 しかし、二人とも付いていきたくて仕方ないといった顔だな。俺が心配というより、盗品の捜査に興味があるのかもしれない。


「じゃあ、メルティ、付いてきてくれ」

「ふっ、いいわ。任せて」


 メルティが得意そうに胸を張り、アーシェがガックリと肩を落とす。


「ううっ、そんなあ。アロン君は私よりメルティさんの方がいいんだ……?」

「いや、そんなんじゃないから。魔女の監視には魔法使いのメルティが適任じゃないかと思っただけだよ」


 それに、メルティは俺の正体を知っているからな。隠す必要がない分、メルティの方が都合がいいんだ。


「それならいいけど……あんまり危ない真似はしちゃ駄目よ?」

「ああ、分かってる」


 心配なのか、アーシェは俺をギュッと抱き締めてきた。

 うれしいけど、あんまりこういうのは……メルティがニヤニヤしてるし。


 マヨネラとアーシェを宿屋に残し、俺とメルティは街中に出てみた。

 さて、まずは昨晩の倉庫にでも行ってみるかと思い、歩いていくと……いつの間にか、隣に並んでいる人間がいた。


「待っていたぞ、小僧。では、行くか」

「げっ、泥棒魔女! 俺が出てくるのを待ってたのか」

「泥棒言うな。せめて略奪者と言え」


 もっさりとしたローブを着込んで現れたのは、略奪の魔女、ベルリエルだった。

 そのうち会えるだろうとは思っていたが、早かったな。


「しかし、意外だな。あんたなら俺抜きでも盗品を取り返しに行きそうなもんなのに」

「一時的にではあるが、貴様とは手を組んだからな。相棒を置いていくわけにもいくまい」


 へえ。コイツがこんな事を言うとは……実に意外だ。そんなに悪党というわけではないのか?


「……貴様は、王国警備隊の女に付かずに、我の味方をしたからな……」

「えっ? なにか言ったか?」

「なんでもない。ところで、今日は同行者がいるようだが」


 ベルリエルがジロッとにらむと、メルティは息を呑んでいた。

 俺は苦笑し、魔女に軽い口調で告げた。


「俺の仲間で、付き添いだよ。優秀な魔法使いなんで、役に立つと思ってさ」

「まだ子供ではないか。魔法の腕は確かに大したものではあったが……小娘、危ないから帰った方がよいぞ」

「……私はアロンの保護者なので。魔女に騙されないよう、見張っていないと」

「ふん、我の監視役というわけか? 別に構わんが、足手まといにはなるなよ」


 一〇歳の剣士に、一三歳の魔法使い、そして妙齢の魔女か。

 また妙なパーティーを組む事になってしまったな。

 能力的には問題ないと思うが、このメンバーでまともな活動なんかできるのだろうか?

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