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44.盗賊ギルド

 ギルマスに条件を提示された俺は、特に悩む事もなく、即答した。


「この三人を置いていけば、魔女の情報を教えてくれるんだな? じゃあ、置いていくよ!」


 するとマヨネラ達三人は顔色を変え、皆を代表するようにしてアーシェが抗議してきた。


「ちょ、ちょっとアロン君! 情報と引き換えに私達を売る気なの!? ひどすぎるわ!」

「落ち着けって。情報さえ得られればこっちのもんだろ? 条件なんか無視して帰ればいいんだよ。グダグダ言うようなら斬っちまえばいいし」

「ええっ!? そんなのありなの?」

「……なしに決まってるだろ」


 ギルマスにもしっかり聞こえていたらしく、眉をピクピクさせて、ツッコミを入れてきた。


「いや、今のは冗談で……三人は置いていくので、先に情報を教えてくれ」

「ふざけるな! 教えるわけないだろうが!」


 やれやれ、ダメか。なるべく平和的に解決したかったのにな。

 ため息をつき、俺はギルマスに告げた。


「というか、あんた、最初から情報なんて教える気ないだろ?」

「さあ、どうかな」

「いや、態度で大体分かるんだよ。こちらが呑むわけがない条件を出したりしてさ。ああ、こりゃ何も教える気ないんだな、ってな」

「ほう。だとしたら、どうする?」

「魔女の情報が得られないんなら、こんな所に用はないな。さっさと帰る事にするよ」


 するとギルマスは、ニヤリと笑って呟いた。


「待ちな。このまま帰れると思っているのか?」

「?」


 武器を手にした盗賊達が集まってきて、俺達を取り囲む。


「ここは盗賊ギルドだぜ? 有り金全部ぐらいは置いていってもらわねえとな」

「やめといた方がいい。怪我するぜ、兄ちゃん」

「どこまでもナメたガキだぜ。なるべく穏便に済ませてやろうとしてるってのによ……やれ」


 ギルマスが合図をすると同時に、短刀や斧、棍棒などの武器を持った数人が一度に襲い掛かってきた。

 どいつもこいつもそこそこ使えそうな動きをしているが……俺の敵じゃないな。

 短い方の長剣を一閃、盗賊達の武器をすべて斬り落とす。

 剣先を突き付けて威嚇すると、盗賊達は慌てて後退した。


 マヨネラ達にも数人の盗賊が飛びかかっていたが、剣を抜いたマヨネラに弾き飛ばされ、近付けないでいた。


「野蛮な人達ですわね。女だと思って甘く見ているとあの世に送って差し上げますわよ」

「な、なんだこの姉ちゃん、つええ……!」

「こっちのガキもだ。こいつら、只者じゃねえ……」


 ようやく自分達との技量の差に気付いたのか、盗賊達は困惑した様子だった。

 ガキや女の集まりなんざ、余裕で取り押さえられると思っていたんだろうな。

 悪いが、ナメてもらっちゃ困る。俺一人でもここにいる連中全員を倒すぐらいわけもないんだから。


「とんでもねえ連中だぜ。てっきり世間知らずの坊ちゃん嬢ちゃんだと思ったのによ。何者なんだ、お前ら」

「お尋ね者の魔女を探している、正義の味方さ。詳しい素性は訊かない方がいいぜ」

「……ふん、なるほどな。国が関わっているってところか……」


 ギルマスの男は満更馬鹿ではないらしく、俺達が何者なのか、大体の察しがついたみたいだった。


「道を開けろ。邪魔するヤツは斬る。これは脅しじゃねえぜ」


 盗賊達を後退させ、出口までの道を作る。

 マヨネラ達を促して、引き上げようとしていると、ギルドマスターが声を掛けてきた。


「待てよ。魔女の情報がほしいんだろ?」

「もういい。ここを当てにした俺が馬鹿だった。先代のギルマスならいい情報が得られたはずなのに、ガッカリだぜ」

「まあ、そう言うなって。よそ者には厳しく当たるっていうのがこの街の掟みたいなもんなんだ。勘弁してくれよ」

「……」


 俺が立ち止まって話を聞く姿勢を取ると、ギルマスの男は軽い口調で告げた。


「うちのギルドは魔女とは取引していないが、この街にはもう一つ盗賊ギルドがある。闇ギルドって呼ばれているがな」

「闇ギルド?」

「盗みはやっても殺しはやらない、悪党からしか盗まない、っていうのがうちの方針だが、闇ギルドの連中はなんでもありだ。善悪関係なく標的にして、殺しも平気でやるようなやつらだ。この盗賊都市でも恐れられている、危ない連中さ」

「それで? その闇ギルドとやらは魔女と繋がりがあるのか」

「あくまでも噂だが、かなり腕の立つ魔女が闇ギルドにいるって聞いた覚えがある。そいつがあんたらの捜している魔女かどうかは分からないが、可能性は高いんじゃねえかな」


 ギルマスの話を聞き、俺はうなった。

 ふむ。その闇ギルドとやらを当たってみた方がよさそうだな。


「なぜ、急に教える気になった? なにか狙いでもあるのか?」

「狙いってわけじゃねえけどよ。ぶっちゃけ、闇ギルドの存在は邪魔なんだよな。あいつらは盗賊の仁義もクソもねえ、外道だしよ。国が動いて潰してくれるんならありがたいと思ってよ」


 盗賊には盗賊の、事情があるってわけか。

 俺の知った事じゃないが、一応覚えておこう。


「闇ギルドの場所は?」

「それは知らねえ。いや、本当だって。連中は決まった場所に集まったりはしないんだ。普段はバラバラに行動し、集まる時は少人数で散らばって、顔がバレないようにしている。所属している連中がどれだけいるのか、正確な数は分からないんだ」


 街のどこにどれだけいるのかも分からないのかよ。徹底してるな。

 とりあえず、わずかだが情報はつかめたか。空振りで終わらずに済んでよかった。


「一応、礼を言っとく。親父さんによろしくな。アロンが来た、って言っといてくれ」

「ああ、分かった。しかし、あんた、子供にしか見えないのに不思議なヤツだな」

「よく言われるよ。じゃあな」


 ギルマスに背中を向けて軽く手を振り、盗賊ギルドを後にする。

 先代の爺さんに会えなかったのが残念だが、収穫はあったし、よしとしておくか。


「なにがよしですの! あんな危ない真似をして!」

「まったくだわ! 怖い人達に捕まって売り飛ばされちゃうのかと思ったじゃないの!」

「自分が子供なのを忘れてない? 見ていてヒヤヒヤしたわ」


 ギルドを出たところで、マヨネラ達に詰め寄られ、めちゃくちゃ怒られてしまった。

 だから一人で来たかったんだ……俺は悪くないよな?

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