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10.魔道士ギルド

 放課後、学院を出た俺は、町外れにある魔道士ギルドに寄ってみた。

 魔道士ギルドは、魔道士のみで構成された組合みたいなものだ。

 所属する魔道士(魔法使い)に仕事を斡旋したり、魔法関連の情報を共有したりしている。

 本来なら、剣士である俺には縁のない場所なんだが、情報源の一つとして、たまに利用させてもらっている。


 俺が魔女の呪いで子供にされた事については、なるべく広めたくないので、信頼のできるごく少数の人間にしか教えてない。

 魔道士ギルドのギルドマスターもその一人だ。俺が魔女の呪いで子供にされたと告げたら、涙を流しながら爆笑してくれたが……笑い疲れた後は真剣に話を聞いてくれた。

 ギルマスの爺さんは不在の時が多いので、なにか用がある時は、受付にいる爺さんの孫娘に用件を告げるよう言われている。


「こんちは。爺さんいるかい?」

「あら、アロン君、こんにちは! マスターは留守だけど、なにか御用?」


 孫娘のライザは明るい笑顔がトレードマークの美人で、ギルドの顔でもある。

 年齢は、二十代半ばぐらいだったかな? 前に訊いた時は永遠の一七歳だとか言っていたが。

 ライザは俺の事情を知らない。爺さんの知人の子供という事にして、俺がなにか訊いてきたら情報を提供するようにと爺さんから言われているんだ。


「魔女の情報はないかと思って。揉めてるって噂を聞いたんだけど」

「あー、うん、魔女ね……確かに、不穏な動きを見せている魔女もいるみたいね……」


 さすがは魔道士ギルド、魔女に関する情報も入ってきているらしいな。

 魔女連中も広い意味では魔道士で魔法使いだからな。もっとも、連中はかなり特殊な存在で、普通の魔道士とはあまり絡まないらしいが。


「『呪詛の魔女』の手下が、魔剣帝を仕留めると息まいているらしいわ。魔女の仇討ちをするつもりなんでしょうね」

「へ、へー、そうなんだ……」


 魔女の手下か。魔女本人ほど手強くはないだろうが……今の俺だと手下が相手でもキツいな。


「魔女連中も、自分こそがナンバーワンだと主張する者が何人かいるみたいね。魔剣帝を倒した者こそが、新たな魔女のトップに君臨できるとかなんとか……」


 おいおい、他の魔女まで俺の首を狙ってるのかよ。モテモテだな、俺って。全然うれしくないが。

 しかし、マズイぞ。もしも万が一、魔女連中に俺が、魔剣帝が子供の姿にされたと知られたら……間違いなく総攻撃を仕掛けてくるだろうな。

 そして俺は確実に殺されてしまう。今の俺に魔女連中と戦うだけの力はない。

 今のところ、バレてはいないみたいだが。もしもバレていたら、俺のところに魔女の刺客が来ているはずだからな。


「アロン君も気を付けた方がいいよ。魔剣帝の関係者なんでしょ? 魔女に狙われるかも」

「は、ははは、まさか。俺みたいな子供を襲うはずが……」

「普通の人間ならね。でも、魔女って大体、普通じゃない人達だから。魔剣帝の関係者はとりあえず皆殺しにしとこう、とか考えるのが出てくるかも」

「こ、怖い事を言わないでほしいなあ……」


 一部の魔女が異常なのをよく知っているだけに、シャレにならない。

 『呪詛の魔女』は人の皮を被ったモンスターだったしな。ヤツによく似た思考形態の魔女がいるとしたら……大量無差別殺戮ぐらいやるかもしれない。


「魔女の人達って、他の魔道士やギルドと絡もうとしない人が多いから、扱いが難しいのよね。世間的には魔道士の仲間だと思われているから、問題を起こせば魔道士の評判が落ちちゃうし」


 そういうものなのか。魔道士ギルドも魔女の存在には頭を痛めているみたいだな。



 ライザに礼を言い、魔道士ギルドを後にする。

 どうも予想していた以上にマズイ状況に陥っているようだな。

 魔女連中が勝手に潰し合いでもしてくれている分にはいいんだが、やつらが『魔剣帝』の首を狙っているのだとすると、非常にマズイ。

 今現在、世界のどこにも『魔剣帝』はいないのだから、捜しても無駄だとも言えるが……。

 だが、魔女の誰かが、魔剣帝が子供にされた事をつかむかもしれない。そうなると、俺の命が危険だ。


 うーん、のんきに学院なんかに通っている場合じゃないんじゃないか。

 ほとぼりが冷めるまで、山奥にでもこもっていた方がいいのかも……。


 ギルドからの帰り道、町外れの、人気のない道を一人で歩いていると。

 不意に、妙な気配を感じた。

 道の先に、何者かが立っている。背が高くてやたらと細い、黒ずくめの人物。性別は分からない。

 黒いとんがり帽子に、黒いマントを羽織っている。

 見たところ、魔法使いみたいだが……妙なヤツだな。生きている気配が感じられないぞ。


「……小僧。貴様、魔剣帝の関係者か?」

「!?」


 おいおいおい……まさか、いきなりなのか?

 しかしなぜ、俺が魔剣帝の関係者だと……鎌をかけているのかもしれないし、とぼけておくか。


「魔剣帝? なんの事かな?」

「とぼけるな。魔道士ギルドで、受付の女と話をしているのを聞いたぞ」


 うわ、マジか。一応、周囲に人がいないのを確認して話していたんだが。

 さては魔法かなにかで会話を盗み聞きしてやがったな? 変態野郎め。


「魔剣帝の情報を得るため、魔道士ギルドに網を張っていたのだが……こんなに早く網にかかるとはな。それで、貴様は何者だ? 魔剣帝の身内か、知人か……」

「い、いや、俺はその……」

「もしや、ヤツの息子か?」

「違う! んなわけねーだろ!」


 いやまあ、年齢的にはもっとでかいガキがいてもおかしくないんだけどな。

 なにせ俺はずっと独り身なので、子供なんかいるわけねえっての。


「だが、顔見知りなのは間違いあるまい? ならば……」

「!?」

「ヤツの居場所を教えてもらおうか。言わなければ死んでもらう事になるぞ」


 謎の人物に脅され、俺は冷や汗をかいたのだった。

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