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7.

 (※スーザン視点)


 ジェフを尾行して、わかったことがある。

 彼は、浮気なんてしていなかった。

 何か私に隠し事をしていると疑ったのがきっかけで、彼を尾行した。


 順当なところとして浮気を疑っていたけど、浮気はしていなかった。

 というか、彼は何もしていなかった。

 何もしていなかったというと、いい意味にも悪い意味にもとれるが、この場合は主に悪い意味だ。


 浮気をしていなかったのは、本当に喜ばしいことだ。

 私は彼が誰にも会っていないことを確認すると、彼の尾行を中断しようと思った。

 しかし、そこで気付いてしまったのだ。

 

 どうしてジェフは、事務所へ行っていないの?

 

 彼を一日中ずっと尾行していたが、ほとんど人気のない公園にいるだけだった。

 お昼ごろになると、私が作った弁当を食べるだけで、あとはぼうっとしているだけ。

 彼が事務所で働いているというのは、嘘だったのだろうか。

 しかし、たった一日だけで判断するのは早い。


 私は翌日も彼を尾行することにした。

 しかし、彼はやはり何もしていない。

 もちろん浮気もしていないが、仕事もしていない。

 その翌日も、さらにその翌日も彼を尾行したが、彼はいつも公園でぼうっとしているだけだった。

 そして、一週間尾行を続けた結果、私はある結論に至った。


 ジェフは、仕事をしていない。


 彼が隠していた秘密は、このことだったのだ。

 どうして、黙っていたの?

 私に知られるのが恥ずかしかった?

 でも、こんな大事なことを隠しているなんて、信じられない。

 私は、帰ってきた彼に問い詰めた。


「本当に、すまなかった……」


 それが、私が怒りに任せて問い質したあとの、彼の言葉だった。

 彼は、心から反省しているようだった。

 仕事をしていないことを隠していたことを、心の底から謝ってくれた。

 だから、私はそれで彼を許した。

 もちろん、働くことも彼は約束した。


 それから、二週間が過ぎた。

 ジェフは、給料は少ないが、仕事を見つけることができた。

 二人で働き始めて、何とか生活できるくらいにはなった。

 たとえお金持ちになれなくても、私には心から愛しているジェフがいる。

 それだけで、充分だった。


 そう思っていた。

 しかし、彼の隠し事は、仕事をしていないことではなかった。

 私は、そのことを後に知ることになる。


 あれだけ完璧だと思っていた彼は、全然完璧などではなかった。

 愛しているがゆえに目が曇っていて、彼を完璧だと思ってしまっていた。

 現実の彼は、全然そんなことはないのに。


 そして、私は彼の秘密を、最悪のタイミングで知ることになるのだった……。

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