プロローグ 幼女な妹は久しぶりに会っても幼女かわいい
「久しぶりだね、お兄ちゃんっ!」
幼いころの記憶とまったく同じ笑顔を浮かべるのは、俺、逢羽京の実の妹である逢羽うい。
天真爛漫な性格は6年経って小学5年生になっても健在らしく、嬉しそうにぴょんと俺の胸に飛び込んでくる。
おさげの柔らかそうな黒髪と白いワンピースの裾がふわりと揺れ、ミルクのような匂いが鼻孔をつつく。
妹の感触と匂いをしっかり味わうと、やはり俺の妹こそ至高であるとの当たり前の結論に至った。
「あ、ご、ごめんなさいお兄ちゃん。会えて嬉しかったから抱きついちゃった」
申し訳なさそうに離れ、上目づかいにこちらをうかがうういに、俺は兄としてにっこりと笑いかける。
「俺も会えて嬉しかったから気にする必要はないぞ。ずっと離れててごめんな」
「えへへ……ありがとうお兄ちゃん!」
小さい頭に手を乗せると、再び妹の天使のような笑顔が舞い戻る。
生命とはこんなにも輝けるものだったのか、と妹という存在の尊さをかみしめながら俺は口を動かした。
「ういも疲れただろ。お兄ちゃんの家――今日からういの家にもなるところに行こうか」
「うんっ!」
ういのほうから差し出された手を取る。
その手は柔らかくて、温かくて、一生守り抜こうと覚悟を決められるほど小さい手だった。




