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007 潜入捜査員

よろしくお願いします。

 俺と和歌菜が交際を始めて初めての週末。


 今週は第2週のため、土曜日は4限まで授業があって給食の提供はない。小学校の時は土曜日は全休だったんだけど、中学では第1、第3週だけが学校がないんだとさ。

 で、俺と和歌菜はそれぞれのクラスメート達にニヤニヤと見送られて、二人帰路に就く。たけちゃんや枇杷島くんも気を使ってくれた(?)のか、放課後に絡んで来ることはなかった。潜入捜査(スネーク)されてる気配もあるが気にしたら負け。ムシムシ。


 和歌菜とは前日、初デートって訳じゃないんだけど、下校途中のファミレス(サイゼ)で昼を食べようって約束していた。夕べ母ちゃんに、昼飯は和歌菜と食べてくるって伝えたら、訳知り顔で微笑まれて、2千円を昼飯代って渡された。

 両親や和歌菜ん家には、俺たちが付き合い始めたことはその日のうちに伝えてある。和歌菜の親父さん達からも小学校時代から、何度も婿に来いって冗談半分に言われていたし、安田家とは家が隣同士ってこともあって家族ぐるみの付き合いをしていたから、報告にそこまでの抵抗はなかった。

 ちなみに婿に来いっていうのは、俺が次男だから。6つ歳の離れた兄ちゃんがいるけど今は関東の大学1年生をしている。東京の大学なのにキャンパスが千葉の方にあるって不貞腐れていたのが記憶に新しい。母ちゃんには「理解して受験したんでしょう!」とたしなめられていたがw 頭は良いようで地元の工業系の高校の指定校推薦を勝ち取り、良い成績で高校を卒業したんだって。和歌菜がこいつに惚れんで本当によかった。


 昼の1時少し前。店内はけっこうな混み具合で、10分ほど待って席に案内された。ウチの中学の制服もチラホラ見受けられる。

 ドリンクバーがセットになったランチメニューを選んだあと、ドリンクバーでジュースを注いで腰を落ち着けるとどちらからともなく話がはずむ。お互いのクラスのことや新しくできた友達のこと、部活をどうするかや月一で発生している藤村家安田家合同の食事会のこと。


「バド部入ることにしたよ。ゆーじんは?」

 和歌菜は小学校時代から夏奈とダブルスでペアを組んで活躍していたし、部活を続けることは予想していた。俺としても今後も活躍を応援したい。


「俺は、たけちゃんや枇杷島くんと文芸部的な活動をしようかって話してる。ウチの学校文芸部なんてないけどね。」

 前回の異世界談義が盛り上がって、じゃ小説書いてみるかってなって、それぞれ別々の物を書くにしても、一人より三人で知恵を絞ればいいんじゃねってなって、放課後に活動することにしたんだ。

 と言っても、おそらく俺は月・金は英/数の塾に通う予定。たけちゃんは小学校時代から変わらず、火・金が剣道の日。枇杷島くんの放課後スケジュールは火・金が家庭教師が来るらしく、三人で放課後に残れるのは水・木・土(隔週)の三日だ。

 てか、家庭教師を雇うとか、枇杷島くん()裕福だな。たけちゃんが突っ込んだ質問をしところ、地元大に進学したJD1のお姉さん(枇杷島くん顔合わせ済/かわいい系とのこと)に教えてもらうんだって。彼女持ちの俺は明鏡止水の心で聞き流していたが、横で「枇杷島くんうらやまけしからん」とか「妄想がはかどる」とか唸ってるたけちゃんワロタ。たけちゃんが想像するような無精者のお姉さんは漫画の中にしかいないから!


 おっと、話を戻そう。

「で、部活は来週から?朝練とかあるの?」

 朝練あったらどうしよう。俺も早起きして教室で予習/復習しているのもアリか。


「朝練はまだ分からないけど、来週から始まるよ。部活見学の時、一個上の先輩からお願いされちゃって。ウチのバド部は、そこそこの実績だからカナカナコンビ(わたしたち)に期待してるって。それに去年は県大会で終わっちゃったけど、東北大会や全国大会を目標にしていたから、やり残してきた感があるし。いいかな?」

 先輩に入部を見込まれて満更でもなさそうであるが不安気でもある。ここは彼氏として背中を押してあげよう。


「応援するよ。もし朝練あったとしても俺も早起きするから、これからも一緒に学校行こうぜ」

 どうだろう?ちょっとは彼氏らしいことを言えただろうか?


「ゆーじん、ありがとう。実は不安だったんだ。付き合い始めてすぐに部活を始めちゃうとゆーじんとの時間が減っちゃって、ゆーじんに嫌いになられちゃったらどうしようって」

 曇っていた空が晴れたかのように、和歌菜に笑顔が戻った。

 向かい合って座ったテーブルを低く滑らせるように、和歌菜の両手が俺の方へ伸びてくる。


 お、おうっ、いじらしいのう、愛いやつめ。ゆーても和歌菜、小学校時代からガッツリ(平日pm6時〜pm8時まで、土曜はam9時〜pm3時ころまで、試合がある土日は早朝〜夕方まで)ミニバド漬けだったから、俺との時間って言っても登校の時とお隣さん同士の交流くらいだったような。俺との時間が減るとか今更な感もするが・・・。

 まぁともかく彼氏彼女の関係が、お互いの足枷にならないように付き合っていけたらいいなぁ。


「安心しな。一緒の時間が減る減らないくらいで嫌いになんてならないよ」

 そう言って差し出された両の手を受け止めるように俺も両手を伸ばし、手のひらで彼女の手に触れようとした瞬間。


「お待たせいたしました。半熟卵のミラノ風ドリアのサラダセットと、ほうれん草のスパゲッティのサラダセットでございます。ご注文は以上でよろしいでしょうか」


 急な出来事で、俺たちは慌てて手を引っ込めてしまった。周りからは潜入捜査員(クラスメート)たちが、声を潜めてクスクスと笑い囁く声が耳に届き、俺は顔が熱くなる。

「あの様子だとキスはまだかな?」「初々しいねー」「ふじやん耳まで真っ赤」「はぁあたしも彼氏ほしーわー」



 おまえら空気嫁(おこ

お読みくださいましてありがとうございました。

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