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005 矛盾

よろしくお願いします。

 さて、今回告白に至ったのも、教室で騒がれたのも、俺と琵琶島くんの仲を勘ぐって和歌菜にタレ込んだ夏奈のせい。"おかげ"とだけは絶対に思いたくない。なんとか一泡ふかせてやりたいが思いつかんし、何倍にもなってやり返されそう。あの女のことは考えるだけで気疲れするんで、一旦棚上げだ。


 昨日の放課後にたけちゃんも交えて琵琶島君と話したんだけど、彼が興味深いことを言っていた。琵琶島君はウェブ小説を執筆しているんだけど、ファンタジーの中のリアルを追求するのが骨折りらしい。


 俺としては、そんなに深く考えなくても、あらすじか前書きか後書きに『あくまで筆者が考えた世界観、魔法観です』とでも書き加えておけばいいんじゃん、て思うんだけどアリ?ナシ?


 ちなみに一例を尋ねたところ琵琶島君曰く、

「例えば、地球だと紀元前に発明されている技術が、異世界モノだと地球の中世くらいの文明にもかかわらず発明されていないことに違和感を感じるんだ。そういった時代的・歴史的に矛盾がないように書き進めていこうとすると全く筆がのらなくってね。あと、それを読む読者の人たちに、勉強不足だと思われて批判さるかもって思うと怖くて」

 とのこと。琵琶島君いろいろと考えすぎ。タダ見せのウェブ小説なんだから、妄想垂れ流しでガンガン書けばいいのに。まぁ、批判はなるべく貰いたくないのは分かる。


 俺はご都合主義であっても、苦もなく楽しくウェブ小説を読ませてもらってるし、むしろそれが異世界系作品の醍醐味だあると考えている。あまり理論武装しちゃうと、異世界モノ”ならでは”の持ち味を無くしちゃわない?


 俺はアドバイスとして、”魔法が在る世界のため科学技術が発展していない”という使い古された言葉を琵琶島君に贈ったが、彼は少し考えてから、

「特権階級みたいな一部の人だけが魔法を使える世界ならば、魔法が使えない大多数の人たちは、魔法に頼らない(すべ)を模索すると思うんだよね。次に、一般階級まで魔法が浸透している世界という前提の場合でも、科学技術が発展しなかったと言いきれはしないよ。そういう世界でも、産業があって様々な仕事があって従事する職人がいる訳でしょ?それならきっと切磋琢磨して科学技術ならぬ魔法技術を発展させて産業革命を起こしたり大量生産できたりしないのかなって」


 そこまで深掘りしないと小説って書けないの?ほら、人って矛盾を抱えて生きているじゃん?多目にみてよ。え?小説ではストーリーに矛盾は許されない?なんかミ◯フスキー粒子のような説得力のある理由づけがないと・・・、つまりアウフヘーベンだ!はい、知っているカッコいいドイツ語を言ってみたかっただけです。


「じゃ、こういうのは?人類を脅かす魔物や魔王様的なヤツがいたから、魔法イコール戦闘用って考え方が主流で攻撃やバフや回復系がメインで、軍事以外の仕事に魔法応用するって考えに至らなかった、的な?」

 はぁ、俺はいったい誰をフォローしているんだ。この論調も使い古された感はある。あと、魔王様という人類の敵がいるおかげでヒト属の文明は停滞するが、種族間は争うことなく共存している、まである。


 ここでたけちゃんも話に加わってきた。

「地球の歴史だと、軍事技術が基になった物って多いよな。ナビのGPSとか。缶詰ももとは軍事物資なんだってさ。技術は戦争によって発展する、みたいなことをテレビで聞いたことがあるぜ。そう考えると、魔王軍と戦っているからこそ魔法技術が発展したり、一部の攻撃魔法が民生転用されてもおかしくないな。だからふじやんの言う、異世界人が魔法を民生利用するに至らなかったっていうのは無理があるんじゃね?」


 ぐぬぬ。別に論破したい訳じゃないけど言い返せない。もう極論だ。

「異世界にアルキメデスはいなかった。そもそも魔法は物理をねじ曲げているから、物理学を考える人がいないんだよ、説を提唱する!だから算数・数学なんかの学問レベルも総じて低くて、結果的に科学技術は重要視されてないんだ。学の低さは魔法の使用用途にも影響が出て、既存魔法をより発展させることに思考停止が起きてるって考えはどう?中学・高校程度の知能の主人公が、異世界の学園生活で家庭教師を雇っているお貴族様を相手に、勉強無双できることの理由づけにもなるよ?」

 多少異世界をdisっている感はあるが、実際には存在しないので何ら問題ないはず?完全に話の鋒を曲げてしまったが、強引にコジツケることが出来ただろうか?あと、作者がナンチャッテ定理の証明とかホニャララ数列とかオリジナル問題を作っても底が知れちゃうし。小説をシンプルにするなら主人公アゲではなく周りサゲのほうが解りやすくて楽だ。


「なるほどね。ふじやんの考え方はかなりの力技だけど、筋が通らないものじゃないと思うよ。・・・これは僕の個人的な考えだけど、推理物でもファンタジー物でも恋愛物でも、小説でも漫画でもアニメでも、物語って読者や視聴者が見ていて納得できるかどうかだと思うんだよ。つまり説得力だね。異世界という存在しない幻想を題材にするんだから、その幻想世界をいかに矛盾なく自然に見せるのか、もしくは矛盾を覆い隠すほどの面白いストーリーを作ることが重要だと思っているんだ。」


「マジか。俺、そこまで深く考えて読んだことなかったわ。ふじやんは?」

「うん、俺も。きっと矛盾のある内容のヤツもあったんだろうけど、気にもならなかった」

 たけちゃんと俺は琵琶島君の考えに呻いた。


「僕には他の作家さん達みたいに、矛盾を上回るほどの面白い話や、矛盾を伏線に昇華させるような技術もないから、せめて納得してもらえる物語を心がけたいと思っているんだ。だから相談にのってもらったら助かるよ」


「なるほどな。俺たちも力になるぜ。なぁふじやん?」

「ああ、今回みたいなことならいつでも相談にのるよ。ちなみにもう投稿はじめてるの?どんな内容?」


「ちょっと恥ずかしいけど、二人には今回沢山聞いてもらったし教えるよ。まだ投稿はしていないんだけど、10話まくらいまで書き進めていて、えっと・・・」

 内容を聞いたところ、予想していた俺TUEEE系ではなかった。どちらかというと異世界サバイバルで、転移特典に機能テンコ盛りタブレットPCを強請った主人公の話だった。しかしタブレットに破壊不能機能を要求し忘れ、転移先の大森林で転生1日目にして手から滑らせて画面が割れてゴミにしてしまうアホ主人公。毎話苦難に見舞われ涙をながしながらも、いつかこの大森林を抜け出すことを夢見る。そんな感じの話だって。



 異世界サバイバル、アツいじゃん!

お読み下さいましてありがとうございました。

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