025 祝日と妄想
よろしくお願いします。
4月の第4木曜は祝日ということもあって、俺・たけちゃん・おーじの3人は、朝飯を食った午前中から秘密基地(祖父母が暮らしていた平屋)に集合している。
「そんじゃ、先に宿題やっちまうか?」
たけちゃんが音頭をとった。4回目の異世界考察。でもその前に、ゴールデンウィーク期間に退治しなくちゃいけない課題から俺たちは手をつけていく。
ウチの中学は前期・後期の2期制で、6月の前半、9月の前半、11月の前半、年が変わって2月の前半に定期テストがあるんだ。でも定期テストとは別に、に英数のミニテストを毎週のように受ける。GW期間中は、ミニテストが無い代わりに、この一カ月に学んだことのおさらい的な宿題が出された。GW明けには、この宿題の範囲から出題されるテストが待ってるんで、おざなりに課題を消化するわけにはいかない。
ちなみにGWといっても、世のサラリーマンとは違い学生である俺たちは、暦通りに授業もあり、明日金曜は授業がある。
ちな、今日は『昭和の日』。俺たちが生まれる前までは『みどりの日』って呼ばれてたんだと(※1)。で、その前は『(昭和)天皇誕生日』だった。令和の現在、『(平成)天皇誕生日』だったクリスマスの前々日は平日に戻っている。令和になって『天皇誕生日』が12月から2月に移ったんだけど、祝日が減ってるように感じ、なんかモヤっとする。呼称を変えて『平成の日』にすればいいのに。もっと祝日を!
昨夜、そんな疑問を感じてググってみたんだけど、実は日本はタイや中国に次いて祝日が多い国だった。意外。逆にヨーロッパのが、アジア地域に比べて祝日が少なかった。
そもそも日本だと、販売サービス業は土日祝日も営業している。むしろ書き入れ時だ。
でもヨーロッパだと、土日も営業している企業やお店はごく一部なんだって。周りが休む時は俺も休むぞってのが西洋人マインドなんだろうね。
で、能々調べてみると、これには宗教的な側面が大きいんだって。『アブラハムの宗教』って言われているユダヤ教・キリスト教・イスラム教が大いに関係しているんだわ。モーセ(モーゼ)の十戒って言葉、誰だって聞いたことがあると思うし、モーセが迫害されていたユダヤの民を引き連れてエジプトを脱出するときに海を割る逸話は有名じゃん? そんでモーセが西アジア・シナイ半島にあるシナイ山で、神から十戒が記された2枚の石板を賜るんだけど、その中の一つの戒めに『安息日をまもりなさい』ってあるんだって。この逸話?神話?が『旧約聖書』の『出エジプト記』ってのに乗ってるんだって。
そもそも、一週間が七日間ってのも『旧約聖書』の『創世記』に、神が天地創造の7日目に休息を取ったってのからきてるからね。
ここで興味深いのが、各宗教ごとに安息日の解釈が異なるってこと。ユダヤ教だと、安息日を金曜日の日没から土曜日の日没までとしているのに対し、キリスト教だと、イエス復活の日の日曜を週の初めの日とし安息日にしているんだ。で、信者の増加でキリスト教が国教となった後のローマ帝国において、4世紀前半には安息日を取り消して礼拝日に変えたんだけど、これが日曜礼拝の始まりなんだって。あ、イスラム教だと、ムハンマドがメッカを脱出した金曜日が安息日で合同礼拝なんかが行われているんだけど、世界的には暦の上では平日だね。
それはともかく、週末の土曜日と週初めの日曜日が休日なのは、旧約聖書を元にした『アブラハムの宗教』から来ていて、ヨーロッパで土日に働かない人が多いのも、『アブラハムの宗教』の信者が多いからなんだってことを知った。
ちなみに古代エジプトで用いられてきた太陽暦(※2)が、紀元前1世紀に共和制ローマで採用されて(ユリウス暦)、その後キリスト教においても宗教歴として採用されたんだけど、キリスト教が暦や休日にこだわるのって、各種行事や記念日のためってのが大きいんだよ。復活祭とか誕生祭とかね。
これらのことを踏まえると、宗教行事のために暦は存在し、祝日が存在し、休日(安息日)が存在しているんだってことが分かるね。勉学や勤労の休養日として土曜や日曜日が存在していた訳じゃないんだ。
例外は、アブラハムの宗教が根付いていない日本などの国で、日本に関しては、明治前期(1876年)にグレゴリオ暦を採用したんね。当時は日本だけ太陰太陽暦や一六制(一六日)を使っていて、西洋列強とお付き合いするには都合がよろしくなかったんだってさ。
でさ、話題はファンタジーに飛ぶんだけどね。これまでの俺の一方的な推察(笑)を踏まえるとさ、ほぼすべての異世界物語で時間の概念が存在するってことは、少なくとも日時計で正午を知り、長年の測量において一年の周期を知り、夏至と冬至を知り、一日の時間を分割(1刻とか3つ目の鐘とか)できるだけの文明があったってことじゃね? むしろ天文学とかが発展してないと可笑しい。 でね、国境を越えてもその基準が統一されているってことは、地球の歴史と同様に、強大な国家とともに成長した宗教が背景にあったんじゃんって思うのね。よくファンタジーなんかだと、待ち合わせの手段として時を知らせる鐘が用いられたりするけど、きっと教会のような宗教施設の上方に備え付けられた大きな鐘をイメージできるんじゃないかな? 時間を管理することで、間接的に人々を支配下に置いているっていうのは、果たして俺の考え過ぎだろうか?
ふぅ。昨日は妄想が捗ったわ。取り留めのない話だったけどね。
スマホの時計を確認したところそろそろ昼時で、お腹もかなり空いてきた。今日はおーじのお母さんが昼飯を買って出てくれるんで期待も大きい。時折解らないところを質問し合いながら、二時間半も課題に集中していたら時間があっという間に過ぎていった。ああ、なるほど。時間が分かるってことは、始まりや終わりが分かるってことなんだな。時間に縛られ管理されることが良いか悪いかはこの際置いといて、ゴール(お昼休憩)が分かるから、頑張れるし集中もできる。昼飯の時間までに、今日の目標まで課題を進めようと力を注いでいる。そもそも提出期限がある課題だから、今も俺たちは必死になって勉強しているんだし。逆に時間や期限に縛られなかったら、ダラけてしまいそうだ。きっと『時間に縛られない生き方』ができるヤツは、他人任せじゃなく自分でスケジュールを引っ張れて、それを実行できる強い意志を持っているはずだ、なんて当て推量な回答にたどり着いた。
(※1)昭和天皇の崩御後、『(昭和)天皇誕生日』であった4月29日が1989年より『みどりの日』に名称がかわりました。2007年に4月29日の祝日は『昭和の日』に名称が変更され、『みどりの日』の祝日は5月4日に移動しました。(※2006年まで5月4日は暫定祝日でした)
当初、元号が平成に移ったことで、4月29日の国民の休日はなくなる予定でしたが、ゴールデンウィークの連休に影響するため、あたらな祝日として『みどりの日』が制定されました。
ちなみに、なぜ『みどり』かというと、昭和天皇が植物への造詣が深かったことから来ています。
(※2)暦法
『太陽暦』は一年を365.25日と定め1年に1回閏年を設けています。1000年で約7.8日の時差が生じます。
「ブルータスおまえもか」で有名なユリウス・カエサルが共和制ローマで布告したことでユリウス暦とも呼ばれます。
それ以前のローマでは、一月を29日~30日、そして3年に一度1年を13カ月とする『太陰太陽暦(ローマ暦)』が用いられていました。
1582年、ローマ教皇グレゴリウス13世によって太陽暦の見直しがなされ、400年に97回閏年(366日)を定めた『グレゴリオ暦』が用いられるようになりました。
日本では明治5年まで『太陰太陽暦』が用いられ、以降は『グレゴリオ暦』が用いられています。