013 稲作チートへの道③
よろしくお願いします。
「一周したな。多分ここまでは容易にできるチートじゃん。他にも思いつく稲作チートがあれば、どんどん言ってって」
俺は二人に促す。
「稲作がメインって訳じゃねーけど、剣先スコップってどうだ?日本の歴史だと、田畑を深く耕たり、粘土室の土を掘る時って、踏鋤ってのを使ってたんだってよ。で、その発展系?派生系?がスコップなんだってサ。踏鋤に比べると鉄の量は多いけど、武器にだってなるし、最強の農具じゃね?」
それ、知ってる。攻撃力が122上がるんだw by P4G
まぁ、冗談は置いといて、今回のテーマは俺が言い出しっぺだから、当時使われていた農具は調べてきてある。メモによると、踏鋤は粘質土や土壌水分の多い湿地なんかの深耕用に使用されていたもので、どちらかというと湿田向けの農具なんだって。
かたやスコップはオールマイティ。たけちゃんの言った通り、穴を掘る・掘った土砂を掬う意外に、近接武器としての性能も併せ持つらしい。極めれば無双して波動砲だってぶっ放せる。あ、違うこれフィクション、ニコ漫だった。
ちな、西の方だとスコップをシャベルって言うらしい。俺の中の勝手なイメージだと、シャベルって園芸用のちっちゃな移植ゴテを思い浮かべちゃうわ。まぁ、地域や国が変われば呼び方なんて変わるし。
「稲作も含めた農具ってことで問題はないんじゃない?僕からもいいかな?正条植えとセットの農具なんだけど、水田用の回転式除草機っていう草を取る機械なんだ。本体を田んぼに滑らせると、爪がたくさんついたローラーが回って、草をからめとりながら、泥も攪拌してくれる便利な除草機なんだよ。正条植えの条間に合わせて設計されていて、腰を屈まずに草取りができるから、田んぼの管理が格段に良くなるんだ」
ん?ローラーに鉄の爪を生やすイメージだと、溶接的な技術が必要になるんじゃないのかな、知らんけど。戦国時代前後の日本ってそういう技術があったんか?あと、鉄って当時貴重なん?
「ねぇ、おーじ。回転式除草機ってスコップと比べて鉄の使用量が多そうだし、鉄を継ぎ合わせないとだけど、技術的にどうなの?」
疑問に思ったんで聞いてみた。
「日本国内だけの消費量でいったら、鉄製の農機具が一般に普及するくらいには製鉄されていたみたいだよ。たたら製鉄っていうふいごを使った製鉄法の興隆とともに鉄加工技術も発展していたんだって。だから多少複雑でも作り方さえわかれば、野鍛治や農鍛治の職人さんでも対応可能だと思うよ」
なるほどね。たけちゃん案のスコップもおーじ案の除草機も、普及するかは置いておいて戦国時代で作れないってことはないみたい。備中鍬とか千石通しとか。あ、俺がさっき断念した足踏式脱穀機もベアリングを使わなければできるかも。でもやっぱ精密な加工技術や研磨技術やプレス技術などが必要なベアリングは、どう調べても当時の日本の技術では作ることはできなさそう。馬車やリアカーを使った兵站改革の道は遠い。
さて、こっからは俺のターンと行きますか?
「戦国時代になかった、もしくは普及していない便利な農具で、動力を使わない物は実現可能度Aってことでいいんじゃない?
俺が提案したいのは、平野部における田んぼの乾田化ね。稲作の歴史の説明でも言ったけど、湿田の過酷な労働が軽減されるし効率もいいんだ。でも、これって言うは易しでぶっちゃけ実現可能度でいうとCなんだわ。測量して灌漑用の水路をつくって、田んぼを四角く区画整理して、水捌けの悪い田んぼには暗渠っていう排水設備を埋めて・・・って気が遠くなるような作業が必要なんよ」
「あー、お百姓転生ならゼッテー無理なヤツだ」
「そう。数国を治める大大名になって、権力を握ってからじゃないと無理なんね。で、まず治水なんだけど、当時って守護大名や守護代にのし上がった戦国大名がいて、その下に多くの国人領主や武勲により土地を賜った武将たちが治めているから、国を挙げての測量や用水路の建設なんて、技術的なことを抜きにしてもハードルが高いんだわ」
しかも下流や上流が、別の敵対している国である場合が多いから、それも面倒い。
「なるほどね。そういえば昔は農業に使う水で、村同士や農民同士の争いが絶えなかったって言うよね?」
おーじが尋ねる。
「そう。米も畑の作物も水がないと育たないし枯れちゃうじゃん?で、そもそも稲作って畑作以上に圧倒的に水を使うから、田んぼは川の近くに作られていたんだよ。だから膝や腰までつかるような、水捌けの悪い湿田が多かったんだけどね。で、干ばつに見舞われちゃうと、川から離れたところのお百姓さんは、自分の田んぼに水を引っ張って来るために争って、時には殺傷沙汰になる訳よ」
俺は話を続ける。
「上流で用水路を通しちゃうと、下流に行き渡る水が減ってこれも争いの種になる可能性があるから、灌漑用の溜め池とかを調整もしなきゃだしね。かと言って干ばつ対策だけにかまけていると大雨で川が氾濫なんてこともあるから川を浚わなきゃだし。乾田化は治水と灌漑をトータルで考えた上で結果を出しつつ、その土地に住む人の理解も得られなきゃ反乱起きちゃうのよ」
まだまだ続ける。
「で、一番のネックが何かって労働力ね。人が足りないんだわ。田植えや収穫で忙しい農繁期はお百姓さんから労働力を引っ張ってくるのは無理だし、農閑期には一定数の男手が戦で持ってかれちゃうこともあるから、賦役を実施してもきっと進捗は良くないはず」
そもそも賦役≒タダ働き。
「だから戦国転生作家さんたちは、現物支給や税(年貢)の減額を主とした[期間工]としての賦役を実施することで、労働意欲低下を抑制したり人足を維持できたんだと思う」
ただし年貢が減ったり対価を支払うと、公共事業に使える資金が減る。そうならないために主人公たちはチートで産業を起こすんだよ。酒とか椎茸とか石鹸とか。
「まぁ、とりあえず自領の主要な平野部をメインってことで。期間は長いスパンで考えないとだろうな」
例として、江戸時代初期に利根川の流れを東京湾から太平洋側に変えた[利根川東遷事業]は主要河川だけで30年以上の月日がかかっている。明治時代(1909年)に米どころ新潟で通された[大河津分水]は完成までに20年以上の期間を要し、のべ1000万人が働いたんだって。パナイ。ちなみに明治当時の人口が5000万人。戦国時代なんて、1000万人前後しか人口がいなくて、自領からしか求人できないから事業規模は小さくなって工期は延びるの必至。
主人公寿命で死んでまうわw
お読みくださいましてありがとうございます。




