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プロローグ
コン、コン
僕の部屋に、突然ドアをノックする音が入ってきた。
今日はスクランブル対応のシフトは入っていないはず。
そんなことを思いながら早足でドアへと駆け寄り、上官だった場合を考えて服装を正す。そしてドアノブに手をかけ、大きく開けた。
————誰もいない。
視界には目の前の部屋ののっぺりとしたドアが入っているだけで、殺伐としている。
廊下を見渡しても、人の影ましてや人の気配すらない。
不思議に思いながらドアを閉める。
初夏の昼下がり、不思議なこの出来事が僕と彼女の物語の始まりだった。