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注目されず誰からも見放された小説の登場人物達の墓場



ここはどこだろう。

墓標が並んでいる。墓場?


確か僕は学園の超・大魔法大会に出場していて……



「やっと気がついたかね。学園編の42話目でエターナった小説の主人公、アレス君」


「そうだ! 僕は準決勝まで進んで、仲間の結果を待っているんだった!

大会はどうなりましたか?!」



僕は目の前の老人に尋ねた。



「大会どころじゃないよ、アレス君。

君は作者に見放されて死んだのだから」


「は?」



言っている意味が分からない。

僕はこうして生きているじゃないか。



「作者がプロット無しで思いつきで書いていたせいで続きが思いつかなくなり、おまけにリアル事情が忙しくなった。

なので君の居た小説はもう更新が1年ほど止まっている」


「おっしゃっている意味が分からないのですが」


「ん? 言わなかったかね。君は想像上の人物なのだよ。

作者が生み出し、作者によって生かされている、架空の存在。

作者が見放した今、君はもう二度と日の目を見る事は出来ない」


「そんな……僕には大切な仲間が居るんです!」


「仲間か、本当にそれは仲間だったのかね?」



老人はニヤニヤ笑っている。



「どういう事です」


「君は作者によって人形のように操られていた存在だ。

その君が物語の中で得た仲間というのは、本当に君が君自身の意志で、仲間にしたと断言出来るのかね?」


「何を当たり前な事を……」


「疑問に思った事は無いかね? 仲間になる男女比がなぜか女性に偏っている。

なぜか彼女らは全員自分に好意を持っている。なぜか彼氏は居ない。

やぁ、なんて都合の良い女どもなんだ!」


「僕の仲間を侮辱するなっ!」


「侮辱したのは作者であって、私ではないよ。そこを勘違いしないでもらいたいものだね」



老人はあれを見たまえ、と指をさす。



「居た! 僕の仲間のイリス!

あ、あれ……あんな顔だったかな?」


「見捨てられた作品の特徴として、作者がキャラの設定を忘れる。

つまり、アレス君がイリスの特徴を思い出す事はもはや無い」


「ば、馬鹿な……そしてイリスの横に居る彼女は……確か、誰だっけ……」


「作者ですら忘れた者の名前を、君が思い出せるはずがなかろうに」


「そ、そんな……」


「さぁ、このまま墓場にとどまると、作者だけでなく読者にも忘れ去られるぞ?」


「イリス! そして、えっと、君! 今すぐこの墓場から逃げよう!」



僕はイリスと隣の女の袖を引っ張る。



「いやですわ。作者のリアル事情が忙しいんですの。

わたしたちが出しゃばる必要は無いですの」


「同感じゃ。そもそも、こんな作品を待つ物好きが居るかの?

読者PV数は少ないし、感想もレビューも貰えない。

話を書くだけ時間の無駄じゃ」


「何を訳のわからない事を言ってるの?!

何だか嫌な予感がするんだ!

早く逃げよう!」



僕ら3人の姿が、段々と透明になっていく。



「あぁ、とうとう世界が終わるんですの……」


「作者は逃げたようじゃな。よほど『更新しなければ』というプレッシャーがキツかったのかの?」


「僕の、僕たちの体が……消え……」




◇ ◇ ◇ ◇




やがて、3人の姿はこの世界から消えてしまった。



「作者さんが作品を消去してしまったようだな。

残っていれば、たまに物好きな読者が来訪するというのに。

非常に残念……おや、また別の来訪者か」



老人は呟き、墓場の入り口を見る。


また若い登場人物が見捨てられたようだ。


墓守である老人は、彼らに近づき、いつものように話しかける。



「こんにちは、暴食の能力を持ちながら作者の手に負えなくなってエターナった小説の主人公、カイル君」



そしていつものように、墓場に捨てられた登場人物をいじり始めた。


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― 新着の感想 ―
[一言] いずれこの墓守も忘れ去られ消え去るのか……諸行無常……
[一言] ワロタ ワロタ… 猫さんが好き過ぎて逆に他のは知らないっていう。
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