スナイプ2
私達はギルドの依頼でこの広い森に来ていた。この森は「広暗の森」と呼ばれている。
出てくる魔物はそれほど強くない。ただ、日中でも森は暗く、木で見通しが悪いこともあって突然の魔物に襲われたりすることもある。低ランクの冒険者なら突然の魔物に対処できずにすぐに全滅するだろう。
私達のパーティーはCランク。ランクはEからSまである。
そして、ランクには個人ランクとパーティーランクがある。個人ランクは個人の強さ、パーティーランクは個人の強さ+連携などを合わせた強さ。個人ランクが低くてもパーティーランク高いなんてパーティーは多い。その逆ももちろんある。個人ランクが高くても連携が取れなければパーティーランクは落とされるのだ。
私達は全員がDランクの個人ランクを持っている。しかし、連携がよく取れていると評価されたためパーティーランクはCになっている。
もう、周りは真っ暗だ。この森にいると今が昼なのか夜なのかがわからなくなりそうになる。
「今日はこの辺で野宿しましょう」
「そうね」
パーティーのリーダーであるタンクのレナが野宿の提案をした。レナは自分の背くらいある大剣を軽々と振り回すほどの力を持っている。このパーティーの中で一番の力持ちだ。ちなみに私は戦士だ。
私はその提案に賛成する。
「了解です」
「はーい」
私と同じ戦士のティアとヒーラーのアンも賛成する。
「ミルハはテントを張って」
「わかったわ」
レナに言われて私はテントを張る。他の3人もそれぞれの仕事をきっちりとこなしている。
こういった風にそれぞれが自分の仕事を見つけてきっちりこなすことが連携に繋がったりする。
「それにしても…やっぱり気味が悪いわね。この森は」
「そうだねー」
私達は遅めの夕食を食べながら話をしていた。
「アン。目的地まではあとどれくらい?」
「えっと、もう少しです。明日の朝に出発すれば昼までには着くと思います」
アンはボロボロの地図を見ながらレナの質問に答える。
「そう。なら、明後日にはこの森を出られそうね」
「早く出たいなー」
「そうは言ってもこれは依頼なんだから。受けた以上はきっちりとこなさないと」
ティアは「ブー」と言いって不満そうだ。
私達の依頼はこの森の中央付近にある高木樹と呼ばれる木の近くに生えているという薬草の採取に来ている。その薬草は難病と呼ばれる病気の薬に多く使用されているため需要が高い。
「ティアちゃんは相変わらずだねー」
アンがクスクスと笑いながら言った。
「だって―」
ティアは暗いのが嫌いだ。「冒険者なら暗いのくらい耐えろ」と言いたいがこの森なら仕方がない。この森は他の森と違って気味が悪すぎる。
食事をしながら雑談をしてかたずけをしていた時だった。
「グルル~」
茂みから4体の白銀の狼が出てきた。
「シルバーウルフ!?」
レナは慌てて大剣を構えた。私達もレナに続いて剣を抜く。
「どうして…」
シルバーウルフはCランクの魔物だ。それが群れるとBランクまで上がる。
本来はこんなところにはいない。シルバーウルフの生息地は高木樹を超えた地域のはずだ。
「逸れ…でしょうか?」
「違うと思う…」
アンの推測をティアが否定する。ティアは頭は悪いが勘が鋭い。ティアの本能が違うと言っている。そんな雰囲気を漂わせていた。
「考えるのは後!」
レナの声に全員が気を引き締める。
しばらくの間は膠着状態が続いた。そして
バシュッ!
地面に何かが高速で当たった。着弾点には黒い焦げ跡が残っている。
「なに!?」
レナが慌てて周りを警戒する。シルバーウルフも私たちと同じように驚いているようだ。
そして、私たちに一番近かったシルバーウルフはゆっくりと崖の方を見た。私も同じ方角を見た。しかし、見えるのは崖の上にある森だけだった。
「…何が…」
そして、シルバーウルフたちは森へ帰っていった。
「なんだったのかしら…」
「…」
その日は寝ることができなかった。また、シルバーウルフが現れるかわからないからだ。
そして、日が昇ると同時に目的地へと向かった。