スナイプ
「どうする?」
スコープを覗きながら澤田に聞く。
「どうするってもなー。当たる?」
「さー。結構遠いからなー」
「距離何メートル?」
「さー。そこまでわからんけど、見た感じ4キロぐらい…」
双眼鏡でやっと見える距離。しかも、双眼鏡で見れたのは光があるという事実だけ。それに、今でもギリギリ見えるくらいだ。
「…それほんまなん?」
「体感な。俺の体感はあてにならんよ。で、どうする?」
「状況どん何なん?」
「うーん。襲われてるのは女の子4人組。全員10代くらいかな?」
「へー」
「全員、剣持ってる。そんで襲ってるのは…狼?…かな」
「狼?」
4人を襲っているのは狼の群れ。白い狼で結構でかい。4人と比較すると多分胸ぐらいの高さぐらいある。数は4匹。数的には同じだが…。
「どうなるかなー」
「ちょっと見せもらえへん?」
「いいで」
澤田にスマートガンを渡す。澤田は受け取るとすぐにスコープを覗く。
「あー。確かに」
「で、どうするよ?このまま見とく?」
「それでええんか?ここで助けたらラブコメ展開に…」
「どれだけ距離があると思ってる?」
「ですよねー」
「それに、ここから撃っても当たる気がしないんだよなー。まず射程がわからんし」
撃っても届かなければ意味がない。まあ、この銃だったら射程は期待できるが。それでも限度がある。あんな遠い的を射抜くなんて…。
「試しにやってみれば?」
「うーん。…やってみるか」
澤田からスマートガンを返してもらってスコープを覗く。
まだ戦闘は始まっていない。お互いに牽制状態で動かない。今なら当たるかもしれない。
照準は戦闘の狼の頭部、こめかみ。うまくできるかはわからない。初めからヘッドショットを狙うのは背伸びしすぎているかもしれないが、標的が止まっている今なら。
引き金に指をかける。すると途端に今までに感じたことのない緊張感が全身を覆った。鼓動が早くなり、体が熱くなる。そして目を閉じて大きく深呼吸をする。
目を開き
「よし…行こう…」
引き金を引いた。
ビームはまっすぐに狼の頭に向かう。しかし
「ヤベ!」
「どうした!?」
「外した!!」
「は!」
ビームは狼の頭上をかすめて地面に着弾した。そして地面に焦げ跡を残す。
引き金を引くときにほんのわずかにぶれてしまった。バイポットを使っていなかったせいか銃の反動で少し動いてしまったのだ。力で抑えようとしたが駄目だった。
スコープ越しに狼たちが慌てているのが見える。4人組も同じように慌てている。すると狙っていた戦闘の狼がこちらを見た。
「最悪だ!!!」
「なに!?」
「ばれた!!!」
「えっうそ!!」
「急いでここを離れるぞ!!」
俺達は出していたものを急いで鞄にしまい背負った。スマートガンは鞄に入らないため手で持って、駆け足で後ろの森に入った。
「そんな急がなくてもいいんじゃないのか?」
「相手は狼だ。遠吠えとかで仲間に知らされたら終わりだ。狼にかけっこで勝てると思うか?」
「無理だな」
「だったら急ぐぞ」
その後、崖を下りて一本の大きな木がある広場のようなところに着いた。その木は他の木とは違って枝が横に広がっていた。そして不思議なことに自然と安心できた。
「じぬ―」
俺は木にもたれ掛かって唸っていた。
「さすがにこれはしんどいな」
とにかく走った。ひたすらてきとうに走ったせいでここがどこかはわからないが、ひとまず助かった。
「あの4人はどうなったかねー」
澤田が息を整えながら聞いてくる。
「しらねえよー。生きていたらラッキーぐらいじゃないか?」
俺も息を整えながら答えた。
「だなー。……届いたな」
「…ああ」