スキル
「まあ、そんなことは置いておこう」
「いいんか!そんなんでいいんか!」
少しネタっぽく澤田が言った。
「だからってどうするんだよ」
「俺、財布に2千円ほど入れてたんだよ」
「俺は5千円程」
「…」
「…」
しばらくの間無言が続いた。
「とりあえず、今はスキルについて調べよう」
「どうやって?」
「知らん」
ゲームみたくボタン設定やアイコンがあるわけではないのだ。ましてや説明すらない。これがゲームなら『クソゲー・オブ・ザ・イヤー』決定だな。
「小説だったら念じたらオッケイみたいになってるけどな」
「そうなの?」
「ああ。つるっぴは小説読まないからわからないのか」
「まったく読まないからなー」
俺は本を読むのが嫌いだ。夏休みの読書感想文は地獄だった。毎年同じ本しか書いていなかった。ましてやゲームのシナリオを読むのも嫌いな俺が小説なんて読めるはずもないんだ。
「もっと読んだ方がいいぞー」
「面倒臭いんだよ」
「そんなんだと国語の点数悪くなるぞー」
「元から悪いよ。それにこの状況でテストはないと思うぞ。それにどうやって小説読むんだよ」
「スマホで」
「使えると思うか?」
「いけるんじゃね?」
そう言って澤田は携帯を開いた。そしてすぐに携帯から目を離した。
「だろ?」
「わかってた。わかってたさ」
やはり繋がっていなかったらしい。そりゃそうだ。こんな一面森の中じゃなー。
「それよりもスキルだな。どうやって使うか」
「念じてみれば?」
「どうやって?」
「知らん」
「お前な―」
念じるにしてもどうやるのかがさっぱりだ。超能力じゃあるまいし。
「イメージするとか?」
「やってみたら?」
「おう」
イメージ…スキルを使おうとイメージする。だが、何も起こらない。
「無理だな」
「諦めんなよ!もっと熱くなれよ!」
「修三は帰れ」
「で、他に何かあるか?」
「さー」
2人でいろいろ考える。「VRみたいに手を動かしてみる」「言葉を言ってみる」などなど…。だがどれもできなかった。
「さっぱりだなー。てか今何時?」
「えーっと」
澤田は携帯で時間を確認する。
「…9時だな」
「1時間経ってるじゃん」
「だなー。さすがに疲れてきたわ」
「かと言って休めないしなー」
「とりあえずスキルを使えるようにしないと…」
「まず、これはリアルなのか?」
「今更だな…」
澤田が今更これが現実かどうかを疑い始めた。
「残念ながら現実だよ」
「根拠は?」
「尻が痛い」
「なるほど」
さっきから地面に直で座っているから尻が痛くなってきた。
「さっさと解明しないとなー」
「だなー」
緩い感じでスキルの使い方を探していく。
結局、イメージで思い浮かべるというのが一番線が濃いという事になった。
「さっきのはイメージが足りないと?」
「それしか考えられなくね?」
「…そうだな」
俺は目を閉じてイメージする。さっきよりも深くイメージする。『ロマンの探求』を手でつかみ取るような。そんな感じのイメージをする。すると
「うわ!」
「なんか出たな…」
目の前にスクリーンが現れた。
「成功か…?」
「みたいだな」
「ふー」
深くため息をつく。何とかできた。全く面倒臭いことだ。
「どうやったんだ?」
「なんか、スキルの名前を想像してそれを手で掴む感じを想像したんだ」
「ほーう。俺もやってみるよ」
しばらく澤田は目を閉じて眉間のしわを寄せていた。そして
「お!」
澤田の前にもスクリーンが現れた。
「で、これどうやって操作するんだ?」
「知らん」