逃走
「…意外と当たってるな」
俺は狼の死体を見ながら言った。
狼の死体には10発ほどの銃傷があった。9ミリ拳銃の装弾数は9発。それが2丁でフルオートで全部撃ったので18発撃っていることになる。そのうちの10発が命中。初めてにしてはなかなかいいのではないだろうか?
「かめロンも正確に当てれてるじゃん」
「俺の場合は簡単だろ。お前を囮にして撃っただけなんだから」
「今、囮って言ったな」
俺は自分が撃った狼の死体に近づき傷口を見た。
「それに、最初の一体はヘッショじゃなかったからなー」
「初めてだったら仕方ないんじゃないのか?」
「2回目だったけどな…」
俺達が戦闘後の考察などをしていると後ろから大声がした。
「あなたたち!!」
「ファッ!!」
「うおっ!!」
俺達は身体をビクッとさせて後ろを見る。そこには血相を変えたレナがいた。
「今のはなに!何なのあれは!」
「え、えっと…」
なに!?何かしたか俺達?
答えに困っているとアンが助け舟を出してくれた。
「少し落ち着こうよ」
「アンはちょっと黙ってて!」
「詮索はご法度だよ!」
ティアもアンに加勢する。
「今はそれどころじゃないのよ!今の攻撃…特にかめロンの武器は、この前の狼との戦闘にどこからか放たれた魔法と同じやつだったわ!」
それを聞いてから2人の顔色が変わった。ミルハはずっとこちらを怖い目つきで見ている。
「…どういうことですか?かめロンさん」
アンの低いトーンが恐ろしく感じた。
普段、優しい人を怒らすと怖いっていうのは本当だったんだな…。
「どうするん?」
小声で澤田が聞いてくる。
どうすると言われても2択に1択だろ。
1:どうにか説得して納得してもらう。
2:全力で逃げる。
どちらにしても可能性は低い。1はどう説得すればいいのか見当もつかない。2は逃げ切れるかどうかが不安。
「1と2どっちがいい?」
「は?なんだそれ」
「いいから選べ」
「…じゃあ2で」
「…わかった。全力で逃げるぞ」
「ファッ!?」
俺は後ろにダッシュして、この場から立ち去る。澤田は少し遅れて追いかけてくる。もちろん4人も追いかけてくる。
「にげるんだよ~!」
そう叫びながら全速力。ただでさえ歩きにくい森の中は気を付けなければすぐに足をくじいてしまう。
木の根っこに引っかかって転んでもゲームオーバー。なんというゲームだ。
選んだのは俺じゃない。澤田だ。澤田が悪い。
だが、不思議と周りがよく見える。動体視力というものが向上しているように思えた。何かバフのようなものがついているのだろうか。
「2ってこっちかよ!」
澤田はすぐに追いついて俺の横に並ぶ。さすが毎日走っていただけの事はあるな。
「選んだのはお前だ」
「ちょっ、それはひどない!?」
全速力で走っているが徐々に差を詰められている。体力ももうない。このままでは追いつかれる。
そう思った時だった。
「いたっ!」
後ろで誰かが痛がる声が聞こえた。声からしてアンだろうか?よし、これで追ってくることはない。と思いたい。
後ろを振り返るとミルハとティアはアンの様子を見ている。レナは何かを拾って…
『第一球、大きく振りかぶって…投げた!』
と実況が入るくらいの見事なスイングをした。そしてレナからこちらに飛んでいたものは…石。
今の動体視力ならわかる。これは確実に俺の顔面直撃コース。
俺は瞬時に姿勢を落として石を躱す。セーフ。
俺達はそのまま走り去った。




