1話
「あぁぁぁぁぁぁ……」
激痛に悶え苦しんでいると辺りにパッと明るくなった。
「ハァ…ハァ…いったいなにがおきたんだよ」
痛みが引いてきたことにより、頭が冷静になり自分が置かれている状況を確認するために周りを見渡した。そしたら、わかったことが二つあった。
一つ目は、どういうわけ先程までいた通い慣れた道ではなく、どこかの建物の中にいるらしい。
二つ目は、この場にいるのは俺だけではなく、部屋の隅にフード付きのローブを羽織った集団がいた。
「おい!?ここはどこだよ。 お前たちは何者なんだよ!」
俺は訳がわからない状況にイライラし強い口調で詰め寄った。そしたらローブの集団がざわつきはじめたと思ったら、一人の男が前に出てきて口を開いた。
だがその口から出てきた言葉は聞き慣れた日本語ではなく、俺は驚いてフードの中を覗き込むとそこにあるのは日本人とは程遠く欧米人のような彫りが深い顔だった。
男は会話が通じていないにもかかわらずお構い無しに喋りつづけた。話が終わったと思ったら今度は付いてくるように手招きをしてきた。
言葉が通じない以上ここにいても埒が明かないので、しかたなく男の後に付いていくことにした。
部屋からでると長い廊下が続いており、5分ほど黙々と歩いていると、大きな扉に突き当たった。
扉の前には鎧を纏い剣を手にした二人の男が立っておりここまで案内をしていた、ローブの男が二人に何かを伝えると、武装していた二人はさっと扉の前からどき道を譲った。
ローブの男は大きな扉のつかみに手を置き力を込めて押すと、扉はゴォーと音をたてながらゆっくりと開き始めた。
「うあースゲー!」
扉の先の光景を見た瞬間思わず声がでてしまった。目にしたものを簡単に説明すると、ヨーロッパなどの城にあるような豪華な装飾が施された巨大な広間があったのだ。こういう事に詳しい訳ではないが、素人目に見ても素晴らしいもので目をうばわれるものだった。
立ち止まって、広間の装飾を眺めているとローブの男が俺の肩を叩き10人ほどの人たがりを指差した。
「わかったよ、今行くって」
俺はその意味を察して人だかりに向かって歩き出した。人だかりのそばに来てわかった事だかこの集団は実に統一感がなかったのだ。人種も言葉もまるでバラバラで、共通していることは、皆不安そんな顔をしていることだけだった。
そんななかに、日本人らしき黒髪のポニーテールの女性がいることに気が付き、俺は女性のほうに向かって歩いていった。
「なぁ、ちょっといいか」
俺が声をかけると女性はこちらに顔を向け、不審そうな表情を浮かべた。
俺は女性の顔を見た瞬間驚いてしまった。別に不審そうな表情を浮かべていたからではなく、思っていたより女性が若かったことと、化粧をしていている訳でもないのに、見惚れるような綺麗な顔立ちをしていたからだ。
俺の行動を見てさらに不審に思ったようで、彼女は冷たい声で返事を返した。
「なにか、ようがあるの?」
あまりにも、敵意がこもった声に怯みそうになるが、そのまま会話を続けた。
「俺は気が付いたらここに連れてこられて、訳がわからないだよ。いったいここはどこなんだ?」
俺が質問すると彼女は間髪を入れずに口を開いた。
「そんなこと、私だってわからないわよ。ほんの10分ぐらい前まで家で勉強してたのよ。それなのに急に辺りが真っ暗になって気がついたらここにいたのよ」
どうやら、彼女も俺と同じ状況にいるようだった。彼女ともっと詳しく話をしようと思っていたら、広間全体が急に静かになった。周りを見渡すと一ヵ所に集められた俺達以外が、同じ方向を向いてを敬礼をしていた。
周りの視線を辿るとそこには、玉座に座る上等そうなドレスを身に付けた少女がいた。少女はゆっくりと立ち上がり周りを見渡した後、演説をし始めた。少女が演説をしている間は誰一人、音をたてる者はいなかったが、演説の最後に俺達の方を向いて何かを伝えたとたん広間中に歓声が鳴り響いた。
この場雰囲気からして歓迎はされているようだった。だが俺はそんなことよりも気になることがあった。演説を終え玉座に戻ろうとした少女の顔が一瞬とても悲しそうに見えたのだ。
しばらくして広間全体が落ち着きをとり戻すと、若い男が俺の前まで来て一礼をした後、付いて来るよに手招きをした。
「今度は、どこ行くだよ」
半ば独り言のように呟きながら付いていくとベットが置かれた部屋に案内をされた。若い男は俺が部屋に入るのを見届けたら再び一礼して部屋から去っていった。
「今日はここで寝るしかないか」
俺は不安を抱きつつもベットの上で横になり目を閉じた。