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06.魔法協会

 お屋敷での話し合いが終わると、三姉妹はすぐに出かける準備を始める。

 俺はこれから魔法協会なる場所に連れていかれるらしい。


 お屋敷から出て少し歩くと、すぐに賑やかな街に着いた。

 ちなみに手を縛っていた魔法は、家を出る前にリーズが解いてくれている。

 ローズ家の姉妹と並んで歩きながら街を見渡す。

 白塗りの壁に赤朱色の屋根。

 見た目は古い西洋の街並みの様で、人通りもそこそこあり露天も賑わっている。

 活気があるいい町だな。

 町を歩く人の顔も、なんだか皆イキイキいているように見える。


 しかし気になることがある。

 行き交う人の頭に変な獣耳がついていたり、尻尾があったり、鱗っぽい肌だったりするのもかなり気になる点ではあるのだが、それはなんとなく予想できていたのでまあよしとする。

 だがなぜか女性しかいない。

 それも20歳前後の若い女性ばかりだ。

 今のところ男は一人もいない。

 目の保養には大変よろしいのだが、違和感がぬぐえない。



「おはようございますアニエス様。」

「これはアニエス様!

ぜひ見ていってください!」

「アニエス様・・・

握手してもらっていいですか・・・?」


 競うように声をかけてくる町の人たちに、アニエスは微笑んで答える。

 そう言えばアニエスは自分のことを領主だとか言っていたっけ?

 それにしてもすごい人気だな。

 これだけ見ても、アニエスが領民に慕われるようないい領主なのがわかるな。


 そして挨拶を終えた人たちは、次に後ろを歩く俺を見る。

 そりゃもうジロジロ見る。

 穴があくほど見る。

 いやー、人気者はつらいな!


 ・・・自分で悲しくなる嘘はやめるか。

 俺は亜種で奴隷らしいので、おそらくそれが物珍しいのだろう。

 リーズには手の甲の紋章が見えるように歩けと家を出るときに言われた。

 それも俺が奴隷だとわかるようにということだ。

 レミアはそんな視線に気が付いていないのか、俺の右手と手を繋ぎご機嫌そうに歩いている。

 



 やがて周りより一回り大きい建物に到着し中に入る。

 入口正面にはカウンターがあり、小柄な女性が立っていた。

 彼女以外中には誰もいない。

 受付の女性は暇なのかぼんやりとしていたが、入ってきたアニエスを見るとパッと姿勢を正した。


「あ、アニエス様!?

おはようございます!

ほ、本日はお日柄もよく」


「ふふふっ、そうね、とてもいい天気ね。」


 えらいテンパッてるな。


「今日は奴隷の登録を行いたいのだけど、よろしいかしら?」


「え、あ、はい、もちろんです!

ちなみに、術者はどなたですか?」


「レミアだよ!」


 受付の女性の言葉に、レミアが俺と繋いでいるのとは逆の手を元気よく上げる。


「え、お家の方自身の奴隷ですか・・・。

あ、失礼しました!

でも確かに落ち着いた賢そうな奴隷ですしね。

ローズ家の奴隷ならば、すばらしい奴隷になるでしょう!」


 すばらしい奴隷って褒めてるんだよな?

 優秀な奴隷ってキャリアにならないだろうか。

 「おお!君は五年間海外で奴隷をしていたのか、すばらしい経歴だな!採用だ!」とか。

 ないか。


「ここで行うのもなんですので、奥の部屋にご案内します。

皆さんこちらへどうぞ。」


 そう言い受付の女性はカウンターから出て俺たちを奥へと案内する。



「・・・なあ、魔法協会って言ったっけ、ここは何をする場所なんだ?」


 受付嬢の後ろを付いていきながら俺はリーズに小声で尋ねた。

 リーズはちょっと面倒くさそうな顔をするが、淡々と答えてくれる。


「魔法協会は主に二大魔法、奴隷化魔法と亜種結界魔法の管理をしているわ。

奴隷化魔法で亜種を奴隷化したら届出が必要だから、今日はそれで来たのよ。

他には新しい魔法の普及とか、魔法の研究、管理もしてるけど・・・

それは研究員の揃ってる中央の魔法協会だけね。」


 へー、やっぱり魔法のある世界にはそういう組織があるんだな。

 それにしてもまた知らない単語が出てきたな。

 亜種結界魔法?

 屋敷でリーズが言ってた結界がこれのことかな?

 これとレミアの使った奴隷化魔法が二大魔法か。

 二大と言うわりに地味な気がする。

 もっとこう、大爆発したり超絶パワーアップする感じのを期待しちゃうんだけど。

 ていうかこの世界では俺も魔法が使えるんだろうか?

 ファイヤ!

 出ないな。




 受付嬢の案内で、高そうなソファと机の並んだVIPルームみたいな部屋に通される。

 お茶とお菓子も出てきた。

 えらい良い待遇だな。

 まあアニエスはここの領主様だし丁寧にもなるのかな?


「おまたせしました。

それでは奴隷登録を行いますので、こちらの書類に術者名、奴隷名等の必要事項をご記入ください。」


 いったん部屋を出ていた受付嬢が帰ってくる。


「これはあなたが書いてくれる、レミア?」


「うん!」


 アニエスの言葉にレミアは元気よく答える。

 ちなみに今はレミアと、それをはさむように姉二人がソファに座り、俺はリーズに言われ後ろに立ってる。

 まあ奴隷だからということだろう。


 やることもないので上からレミアの書く書類を覗き込む。

 読めないな。

 言葉は理解できるが、読み書きはできるようになっていないらしい。

 リーズは横でレミアに書類の書き方を教え、アニエスは受付嬢となにか話をしている。

 リーズは教えるときは案外優しいんだな。

 こう見るとすごく良いお姉ちゃんだ。


「それにしてもこんな亜種はじめてみました。

なんて種族なんですか?」


「それがわからないのよねぇ。」


 アニエスと受付嬢の話に意識を向ける。


「その、ちょっと触ってみていいですか?」


「いいかしら、レミア?」


「うん、いいよ!」


「あなたもいい、レオ?」


「別にかまわないけど・・・」


 やっぱりまずレミアに聞くんだな。

 いや奴隷なら当然なのか。

 いい加減慣れなくては。


「しゃべった!?」


 受付嬢が驚く。


「そうなの!

レオはしゃべれるの!

かっこいいでしょ!」


 いいからレミアは早くそれ書いちゃいなさい。

 さっきから全然進んでないぞ。

 でもそういえば、リーズも俺がしゃべることに驚いていたよな?

 普通奴隷は言葉を話せないものなのか。

 でもそれなら亜種って本当にどういうやつらなんだ?


「おー、やっぱり亜種は私たちと比べてごつごつしてますね。」


 受付嬢が俺の腕を触りながら言う。

 いやそんなに鍛えてはいないぞ。

 そりゃ女の子よりはごつごつしてるだろうけど。



「書き終わったよ!」


 レミアが声を上げる。

 受付嬢は俺の腕をぺたぺたしていた手を止め、レミアの書いた書類を確認する。


「はい、確認しました。

それでは後は必須制約の確認ですが・・・」


 そう言い、なぜかレミアの方を見る。

 アニエスも少し困ったような顔でレミアを見た。

 レミアは「なになに?」といった風に二人を見返す。

 わかっていなさそうだ。

 どうしたんだ?


「・・・まあ一応、家で軽く確認はしてあるけど。」


 リーズも何か察したのか少し口をはさむ。

 なんの話をしているかわかっているようだ。

 受付嬢は俺の顔を何か見極めるようにじっと見た後、


「まあいいですかね、術者の確認だけで。

見るからに従順そうですし。」


といい悪戯そうに笑う。


「ごめんなさいね、助かるわ。」


 アニエスが微笑む。

 どうやら解決したようだ。


「それではレミア様、術者の確認を行いますので奴隷の体にある奴隷紋に、少しでいいので魔力を流してもらえますか?」


「わかった!」


 レミアはピョンッとソファーから降りると、俺の左手を取り手をかざす。

 すると左手のバラの紋章がぼんやりと赤く光った。


「きれー!」


 レミアが光る俺の手を撫でたりつついたりしている


「はい、確認しました。

それではこれで奴隷登録は完了です。

奴隷をどちらかで労働させる場合は、魔法協会への事前の登録が必要ですが、そういったご予定はおありですか?」


 受付嬢がアニエスに尋ねる。


「いえ、今のところはないわ。

そのときはまたよろしくお願いね。」


「はい、これが登録料よ。

確認してもらえる。」


 リーズが硬貨を何枚か渡す。


「はい、大丈夫です。

またよろしくお願いします!」


 こうして奴隷登録とやらは終わった。


 うーん、思った以上に何をしているのかわからなかったな。

 このままじゃいつ地雷を踏むかわからない。

 早いところこの世界のことを

 知らなくちゃいけないな。


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