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16.魔法練習

 その日、俺はレミア、リーズと一緒に、庭の奥の草原に来ていた。

 今日はここで詠唱魔法の授業を行うらしい。

 以前リーズから聞いたのだが、レミアは結構色々なことを習っている。

 読み書きや算術だけでなく、歴史や地理、踊りやテーブルマナーに至るまで様々だ。


「学校とかはないのか?」


「貴族や大商人の子供が通う、貴族学校なら首都にあるわね。

でもあそこは成人前の十年間にコネを作りに行くのが目的のような場所だから、今のところレミアを行かせる気はないわ。」


 リーズによると、知識教養や日常で使う魔法の詠唱などは、それぞれの家庭で教えられているらしい。

 残念だなぁ、レミアが学校に行けば、一日で学園のアイドルなのになぁ。

 でも芸能界のスカウトとかも来ちゃうだろうし、そしたらレミアとの時間も減っちゃうな・・・

 いや、むしろ俺がプロデューサーになればいいのか!

 スターダストをプロモートすればいいのか!




「さて、それじゃあ早速始めたいところだけど・・・

その前にレオ、失敗してもいいから、向こうに思いっきり、無詠唱で水魔法を打ってみて。」


 そう言い、リーズは庭園とは反対側のなにもない草原を指差す。

 水魔法か、やったことないな。

 まあでも無詠唱魔法はイメージだけで打てるからな。

 火が出せたんだし、水だって出せるだろう。


「わかった。じゃあいくぞ。」


 リーズの指示した方向に右腕を伸ばし、手のひらから魔力を体の外に流しだす。

 よしよし、前よりだいぶ感覚が掴めてるな。

 リーズを助けるのに魔法を打ってから、体の中の魔力を意識できるようになっているのが自分でもわかる。

 あの時は自分の手も巻き込んでしまったから、手のひらの少し先に出す感じだ。

 後は放水機のイメージで、魔力を水に変えて発射する!


 バシャッーーー!!


 おお!出てる出てる!

 水は俺の手のひらの少し先から勢いよく出続ける。

 た、楽しい!

 これができればプールや海では一躍人気者だな!


 この水もうちょっと太くできそうだな。

 リーズも「思いっきり」と言っていたし、限界まで大きくしてみるか。

 送る魔力量を増やし、イメージする。

 すると、水は丸太ほどの太さにまで大きくなった。


「すごいすごい!レオすごい!」


 お!レミアが喜んでくれてる!

 よーし、お兄ちゃんもっとがんばっちゃうぞ!

 いや、レミアのほうが年上なんだっけ・・・

 歳のことを考えるのは止めよう。


「行けーーー!!」


 イメージとしてはダムの放水。

 魔力ももう手のひらからではなく、腕全体から出して送っている。

 かなり反動も強いが、そこはスマイルを崩さない。

 レミアの前で辛そうな顔などしないのさ!



「もういいわ。止めなさい。」


 とそこでリーズのストップが入る。

 あぁ、いいところだったのに。


「・・・レオ、ちょっと来なさい。

レミアはそこで待てって。」


「うん!」



 リーズはレミアに声が届かない場所まで移動する。

 あ、たぶんこれ怒られるやつだ。

 確かにさっきのでかなり地面もえぐられてるし。

 小規模な湖みたいのもできちゃったし。

 初めて思いっきり魔法が使える楽しさと、レミアが喜んでくれている嬉しさで、ちょっと我を忘れてしまった。

 自重しなくちゃな・・・

 でもレミアが喜んでくれるなら俺は怒られてもいい!

 むしろ幸せ!

 ・・・いや、流石にそれはやばいな。

 ちゃんと叱る時は叱る大人にならないと。

 レミアを叱るのか・・・

 うん、それはリーズにまかせよう。


「レオ、さっき魔法を使った後、めまいとか脱力感とか感じなかった?」


 リーズが小声になりながら、真剣な口調で俺に尋ねる。

 あれ、怒ってるわけじゃない?


「いや、ないぞ。」


「・・・それじゃあ、どのくらい魔力が減った感じがしたかわかる?」


 魔力がどれくらい減ったか?


「うーん、結構使ったかな?4分の1くらい?」


「やっぱりね・・・

あのねレオ、術者の技量にもよるのだけど、普通あんな大きな魔法を無詠唱で打ったら、魔力なんて一発で空になるわ。

あなたとレミアの魔力は異常なのよ。」


「え、でもレミアの魔力は、奴隷化魔法で半分になってるんだろ?」


「ええ。それでも多いの。

元々レミアの魔力が、うちの家系でも飛びぬけて多いのは、何となくわかっていたんだけど、今回のことではっきりしたわ。

ちょっと異常なくらいね。

このことはレミアに言っちゃダメよ。」


 レミアのほうを見ると、空中に浮かべた水の玉どうしをぶつけて遊んでいた。

 かわいい。

 俺にぶつけてほしい。


「どうして言っちゃいけないんだ?

いいことなんだろ?」


「無詠唱で色々できるってわかっちゃうと、詠唱魔法の練習しなくなっちゃうでしょ。

詠唱魔法は効率よく魔法を打つお手本のようなものだし、貴族の教養でもあるから、幼いうちは詠唱魔法をなるべく使わせたほうがいいのよ。

無詠唱魔法じゃイメージの難しい魔法もあるしね。」


 確かにさっきの俺の魔法も、とりあえず魔力をドバッと出して水に変える感じだったしな。

 もっと魔力操作やイメージを上手くやれば、威力や消費魔力も変わるのだろう。


 それにしても、レミアは奴隷化魔法で半分になった今でも、魔力は多いほうなのか。

 ということは、人並み以上には長生きできるということか?

 よかった、本当に・・・

 でも魔力が多いってことは、それだけ多く、俺はレミアから寿命を奪ってしまっているんだ。

 それは自覚しなくては。




 リーズが、レミアに詠唱魔法、俺に無詠唱魔法の指導を行う。

 始めは俺も詠唱魔法の練習に参加していたが、あまりにも理解できないので、あなたはもう無詠唱魔法だけでいいわ、ということになった。

 悲しい。


「たぶんだけど、魔法文字が入ってるからかもね。」


 リーズによると、詠唱魔法や魔方陣魔法には、普通の読み書きに使われる精霊文字とは違う、魔法文字というものが使われているらしい。

 魔法文字は一文字で何重にも意味を持つ文字で、詠唱魔法には何箇所かこの魔法文字が使われており、魔法陣魔法にいたっては全て魔法文字で描かれているとのこと。

 魔法発明の賞金の話を聞いてから、魔法を編み出して億万長者計画!なんてちょっぴり考えていたけど、やっぱり無理そうだな・・・



「そういえばリーズは剣で戦ってるけど、魔法を使ったりはしないのか?」


 盗賊と戦ってたときも剣だったしな。


「ちゃんと使ってるわよ。

主に相手の魔法を打ち落とすのにだけどね。」


 避けれる魔法は避けて、当たりそうな魔法だけギリギリまで引き付けから、同等の威力の無詠唱魔法で打ち消すのだと言う。


「・・・それメチャクチャ難しくないか?」


 ギリギリまで引き付けるって、飛んでくるのは炎の塊とかだぞ。

 怖すぎるだろ。


「そんなことないわ。

魔法を打ち出すのと違って、相手の魔法の軌道上に魔法を発生させるだけだから、そこまで魔力も使わないしね。」


 簡単に言うなぁ。

 まあでも騎士連合のバルさんも、「レミアはかなり強い」みたいなことを言ってたし、今言ってることも実践できちゃうんだろうな。


「へー・・・

あ、でもそれだと自分の近くに魔法を出されたら、対応できないんじゃないか?」


 顔を水で覆われるとか、足元から炎を出されるとか。

 できるかは知らないけど。


「相手が近くにいるなら剣の方が早いから大丈夫よ。」


 おお、なんかかっこいい。

 俺も言ってみたいな。

 止めておけ、この距離なら銃よりナイフの方が早い、とか。


「それに、遠くから相手の近くに魔法を出すことは、あまりないわ。

魔法っていうのは、発生させる位置が自分から離れれば離れるほど制御するのが難しくなるの。

魔法を出したい位置に魔力を送らないといけないから、無詠唱魔法だと相当魔力の感覚が優れていて、かつ魔力量のある人じゃないと無理。

詠唱魔法ならできないことはないけど、魔力を送る工程がある分、詠唱がかなり長くなっちゃうし、詠唱してる間に相手も移動しちゃうから、あまり実用性はないわね。

だから実戦で遠距離に魔法を出そうとすると、魔法陣魔法しかないのだけど・・・

それも大規模な亜種討伐の時くらいね。」


 へー、それほど魔法も万能ってわけじゃないんだな。

 試しに少し離れた場所に魔力を送ってみる。

 確かに離れれば離れるほど、自分の送った魔力がどこにあるのか、ぼんやりとしかわからなくなった。

 自分の手足のように魔力を扱えないといけない、と言うことか。

 まあそうそう魔法で戦うなんてこともないだろうし、気長に練習しますか。

 でもレミアたちを守れるくらいには使えるようになりたいな。


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