表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/61

12.騎士連合

 アニエスが首都に出発した翌日、俺はリーズに連れられ街に出ていた。

 ちなみに魔法協会に行って以来、初めての外出である。

 やはり町には若い女性と子供しかいない。

 リーズの言っていた、精霊族は魔力が0になるまで歳をとらない、という話は本当のようだ。

 でもなんで男を見かけないんだろうか。

 子供がいるってことは、いないことはないはずなんだけど。

 分かれて暮らしているとか?

 これもまたリーズに時間をとってもらって聞かなきゃな。


 それにしても周りの視線がきつい。

 通る人みなが俺を見てくる。

「あれが噂の・・・」といったヒソヒソ声も聞こえてくる。

 本当は俺のほうがジロジロ見たいんだが。

 それこそ嘗め回すように。

 いや、そんなことしたらリーズに斬られるな。

 せめて堂々と歩くか。


 


 やがて、頑丈そうなつくりの、大きな建物に到着する。


「おっ!リーズ様、待ってましたよ。」


 中で俺たちを出迎えたのは、身長180センチは軽くある、長身の女性だった。

 髪は長い黒髪で、肌は浅黒い褐色。

 整った顔をしているが、それ以上に、左目の大きな傷跡が目を引いた。

 露出の多い服の下には鍛え抜かれた肉体が見え、まさしく女戦士って感じだ。

 胸もとても凶暴そうだ。

 すばらしい。


「別にリーズでいいわ。

今、他の職員はいないんでしょ?」


「ハッハッハ、そうだな!

ところでリーズ、そいつが例の奴隷か?」


「そう、名前はレオよ。

妹のレミアの奴隷。

レオ、彼女はバルバラ、騎士連合の支部長よ。

今日はここで私が迎えに来るまで働きなさい。」


 え!ここで働く!?

 じゃあ今日はレミアと遊べないのか!

 俺の一日の癒しが!


「たしか奴隷が外で働くのって登録が必要なんじゃ・・・」


「昨日私がしたわ。」


「レミアが家で一人に・・・」


「私が家にいるから大丈夫よ。」


 くっ、ダメそうだな・・・



「じゃあ、夕方くらいに迎えに来るわね。

彼女の言う通りに、しっかり働くのよ。」


 そう言うと、リーズはいっさい振り返らず、建物を出て行ってしまった。

 しょうがない、レミアは明日いっぱい甘やかそ。


「バルバラさん、今日はよろしく。」


 おれはバルバラに向き直り挨拶する。


「バルでいいぞ。

バルバラじゃ長いからな。

じゃあ早速はじめるか!

付いて来い!」


 そう言いながら、バルバラは俺の背中をバシンッと叩いた。

 めちゃくちゃ痛い。




 騎士連合での仕事は、どれもがっつり肉体労働だった。

 倉庫の整理、食料の運搬、武器防具の整備に、雨漏りの修理までやった。

 まあ、バルバラと話しながらやってるから、退屈はしないけど。

 それにしてもすごい胸だな。

 身振りが大きいのもあって、なんというか、ブルンブルンしてる。

 支えてあげたい。下から両手で。

 バルバラのほうは気にしていないようだ。

 男らしいな。いい意味で。

 あねさんと呼びたい。



「なあバルさん、騎士連合って何をする所なんだ?」


 バルさんが永遠と話す、冒険者時代の冒険活劇も面白いが、とりあえずこの世界の情報収集をしようと話をふる。


「うーん、そうだねぇ・・・

一言で言っちまえば、あたしらの仕事は治安維持さ。」


 バルバラの話では、騎士連合は警察、裁判、徴税、戸籍管理、結界周辺の亜種討伐といった、治安維持に関することは何でもやる組織らしい。

 といっても立ち位置的には領主の業務をサポートする機関であり、基本的に領主の意向に従って仕事を行うそうだ。

 ただ、領主が国の法律に違反したり、明らかに不当な行いを要求したりした場合は、貴族議会に報告する役目もあるという。

 ちなみにリーズは騎士連合に加盟している。

 剣の腕を買われて、ということらしい。


「ここもそこそこ大きな支部だが、1対1で亜種を臆せず倒せるのはリーズぐらいだろうなぁ。」


 まあ私にはかなわんがな!とバルバラは豪快に笑う。

 へー、リーズってそんなに強いのか。

 確かに初めて会ったとき、簡単に組み伏せられたしな。




「疲れた・・・」


 仕事も終わり、休憩所のような部屋の椅子に座る。

 こういうときに魔法が使えればと思うな。

 重い荷物とかもヒョヒョイと運べたりするのだろう。

 バルさんも軽々持っていたが、あれは筋肉だな。

 そういえばリーズと一緒に詠唱魔法を試してから、一度も魔法の練習をしていない。

 これも今度リーズに頼んでみるか。

 レミアもリーズからの授業で魔法の練習をしているみたいだし、もしかしたら混ぜてもらえるかもしれない。


「おう、おつかれさま!

いい働きっぷりだったぞ!」


 そう言いバルバラは、どこから持ってきたのかビールの入ったジョッキを二つテーブルの上に勢いよく置き、俺に横に座った。

 そして並々と入ったジョッキを一気にあおる。

 おいおい、あんなでかいジョッキが半分以上減ったぞ。


「くぁー!うまいな!!

ほら、あんたも飲め!」


 バルバラはそう言い、俺の背中をバシンと叩く。

 やっぱりもう一個は俺のか。

 大丈夫なのか?

 一応俺、高校生だぞ。

 通りすがりのポリスメンに見つかったりしないだろうな。

 いや、この人が警察なのか。


「い、いただきます。」


 意を決して口をつける。

 ん?案外飲める。

 香りは思ったよりフルーティーで好みだし、そのおかげで苦味もそれほど気にならない。


「お、いいぞいいぞ!どんどん飲め!」


 そう言いバルバラは俺の肩に腕を回し、ガシガシと頭を撫でる。

 おお!顔の大きさほどもあろうかと言うおっぱいが、顔の真横で揺れてる!

 撫でられて揺れる俺の頭と一緒に揺れてる!

 でもなんか悪い先輩に絡まれて飲まされてるみたいだな。


「言葉が話せるって聞いてたから、文句でも言うようならぶっ飛ばしてやろうかと思ってたが、奴隷も案外悪いもんじゃないな!」


 バルバラが上機嫌に言う。

 一歩間違えたらぶっ飛ばされてたのか俺。

 この人にぶっ飛ばされたら怪我じゃすまなそうだな。




 そんな様子を、いつの間にか来ていたリーズがなんともいえない表情で見ていた。


「おう、リーズ!早かったな!」


 バルバラがジョッキを上げてリーズを呼ぶ。


「楽しそうなのはいいけど、ちゃんと仕事させたんでしょうね?」


「ああ、バッチリだ!

おかげで溜めてた仕事が全部終わったよ。」


「へぇ・・・サボったりしなかったのね。」


「しっかりやってたぞ。

この様子なら他の所でも大丈夫そうだな。」


「そう、協力してくれてありがとう、バル。

じゃあレオ、帰るわよ。」



 帰り際バルバラは、また来いよ!と言いながら、また俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。


 仕事はきつかったが悪い一日じゃなかったな。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ