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10.忠誠

「次は魔力の説明かしらね。

結論から言うと、精霊族にとって魔力はイコール寿命よ。」


「・・・どういうことだ?」


「あなたたち魔力を持たない亜種が百年足らずで死ぬのに対して、精霊族は体内の魔力が0になるまでは生き続けることができるの。

短くても数百年、長命の種だと千年以上は生きるわ。

まあ、事故死とか餓死とかは普通にするけどね。」


 マジで!夢の不老不死がここに!

 いや不老不死ではないのか。

 あれ?でもちょっと待て。


「じゃあ魔法を使ったりしたら寿命が縮むってことか?」


「いいえ、魔法で使った魔力は一晩も寝れば元に戻るわ。

大切なのは魔力の最大値。

魔力の最大値は生まれた瞬間から少しずつ減っていって、戻ることは無いの。

そうして魔力の最大値が0になったら、成人した見た目からどんどん老いていって、だいたい五十年くらいで死ぬわ。

精霊族は魔力の衰えで老いを感じるのよ。」


 なるほど、それで街にいる人が皆若かったのか。

 でも何かが引っかかる。

 何だこの違和感は?


「まあ、そういうわけだから、魔力を空にするくらい魔法を使うのは危険だって言われてるわ。

魔力の最大値が減るとか、魔法が下手になるとか。

迷信みたいなものだけどね。

魔力に関してはこれくらいかしら。

他には何かある?」




「うーん、じゃあ二大魔法って言うのはどんなものなんだ?」


 たしか魔法協会に行ったときに言ってたよな。

 俺のかけられた奴隷化魔法もその一つらしいし。


「それも話さないとね。

二大魔法って言うのは、亜種結界魔法と奴隷化魔法の二つのこと。

どちらも7000年前、大魔導師アーサーが生み出した魔法よ。」


 大魔導師か。なんかかっこいいな。

 ちなみにアーサーの従えた亜種の名前がレオで、俺の名前はそこからつけたらしい。

 この前レミアと屋敷の図書室で絵本のようなものを読んだときに教えてもらった。

 なんかライオンみたいな獣だったな。

 欠片も俺と似てなかった。


「亜種結界魔法によって、亜種の侵入できない生活圏っていう身体的な安定を、奴隷化魔法によって、亜種を支配できるっていう精神的な安定を手に入れて、精霊族はここまで発展することができた、という話らしいわ。」


 おお、確かにそう言われれば納得だな。

 地味とか言ってごめんなさい。



「亜種結界魔法は魔方陣魔法で、文字通り結界内への亜種の侵入を防ぐ魔法よ。

亜種が結界に触れると衝撃で吹き飛ばされて、大抵は一撃で死ぬわ。

結界内に入れるのは奴隷になった亜種だけよ。

魔方陣は町の中心に設置されていて、魔法協会が管理してるの。

魔方陣への一年に一回の魔力補給も協会の仕事ね。」


 なぜかあなたは入れたみたいだけど、とリーズが付け足す。

 なるほど、道理で俺以外の亜種を見かけないはずだ。

 ・・・いや、屋敷に引きこもってるから関係ないか。



「次は奴隷化魔法ね。

奴隷化魔法は亜種の行動を制約で縛り、使役する魔法よ。」


 へー・・・あれ?

 行動を縛る?

 でも俺、手の紋章以外ここに来る前とあんまり変わらないぞ?

 そういえば魔法協会に行ったときも制約がなんちゃらとか言ってたな。

 まだされていないだけで、魔力を込めて命令されたら逆らえないとかだろうか。

 「自害しろ」とか言われたらしちゃうんだろうか。


「でもこの魔法には二つ欠陥があるの。

一つは奴隷の感情までは制御できない点。

感情の高ぶった奴隷が、我を忘れて術者を襲うことが時々あるの。

だから奴隷にしたからといって、完全に安心できるわけではないのよ。」



 そこでリーズはいったん言葉を切る。


 そして視線を外し、一呼吸入れてからまた話し始める。


「もう一つが最大のデメリットで、奴隷化魔法を使うと、術者の魔力が奴隷に渡されて、魔力の最大値が半分になるの。」


 魔力が半分になる?


 は?


「ちょっと待て、たしか魔力は寿命と同じなんだよな?」


「そうよ。」


「え、まっ、待ってくれ!じゃあ何だ!?

ということは俺に奴隷化魔法をかけたせいで、レミアの寿命は半分になったのか!?」


「そういうことよ。

まあ今更言っても仕方がないけどね。」


「それに奴隷に魔力を与えるって、まさか俺の寿命も・・・」


「そう、レミアと同じ長さになったわ。

まあ奴隷は酷使されるから、たいていは術者より早く死ぬけど。」


「・・・どうすれば元に戻るんだ?」


「戻ることは無いわ。

あなたが死んでもね。」




「まだなにか聞きたいことはある?」


 立ち尽くす俺にリーズが声をかける。


「いや・・・今日はもういいよ・・・。

ありがとう、おやすみリーズ・・・」


「どういたしまして。」





 朝、寝不足の体を起こし、いつものように紅茶の準備をする。

 レミアは今日も元気に俺に抱きつき、おはよう!と声をかける。

 だけど俺は目を合わせられない。

 レミアにどんな顔を向ければいいかわからない。

 結局、朝食が終わってもレミアの顔をまともに見られなかった。


 ・・・何逃げてんだ、俺。

 今更どんなに悩んでも、レミアが文字通り自分の人生の半分を使って俺を助けてくれたことは事実なんだ。

 これだけはきちんと言わなくては。


「レミア!」


 俺は食堂出て行こうとするレミアを呼び止める。


「なあに、レオ?」


「・・・俺を奴隷にしてくれて、ありがとう。」


 レミアの目を真っ直ぐに見つめ言う。


「?、・・・うん!!」


 レミアはうれしそうに笑った。


 

 その日から俺は、元の世界に帰ることを考えなくなった。




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