1話【ABILESS】
人は生まれながらに何らかの才能を持っている。
だがしかし多くの人が自分の才能に気づかないままに生涯を終える。
それは当たり前のことで誰もが認知している事実だ。
ただ当然のことすぎて誰も気にはしない。
【アビリティ スキャン】はその当たり前だったことに疑問を持ち
社会の発展を心から願うある研究者が計画したものだ。
人の才能を見極めひとりひとりに生まれた意味を与えるもの。
新生児がこの世に出生した時、特殊な機械により才能の分析を始める。
所要時間はものの5分程度。
このアビリティ スキャンという作業により新生児が持っている才能、
つまり長所を見出すことができる。
このときから将来の職業や、専攻すべき学部が決まるのだ。
アビリティ スキャンは次第に世間の評価を得るようになって世の中に普及していった。
そしてこの世界は自分の才能に気づきそれを活かせるということが当たり前になった。
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排気ガスの臭いが充満する工業地帯を小汚い格好をした青年が走る。
咳をしながら煙の中を走る。
「あった!」
青年が立ち止まってある工場を見つめる。
【ABILESS】
そう書かれた看板は錆付いて字がかすんでいる。
「ようあんちゃん、お前も出来損ないか?」
顎鬚を生やしたタンクトップの中年男が工場から出てきた。
頭に巻いていたタオルを手にとって青年を見る。
「ああ、俺はディーン・レグト。年は17で特技は鍛冶工全般だ」
「俺はグリス。ここの工場長でこの辺りの工業地帯は俺が仕切ってる。従業員はざっと500人。もちろん全員がABILESSだ」
「へぇ。やっぱりここが出来損ないの集まりか」
「おうよ。出来損ない共がやる事も見つからずこんな所に迷い込んじまったのさ」