八章12 後日談
何とも忙しい旅行から帰ってきた生徒会一同は、無事に中間試験を潜り抜けた。
一番心配されていた金西は、九科目中四科目が上位十位に入るなど劇的な変化を見せていた。
試験最終日の放課後、いつも通り生徒会室に集まった一同は、旅行中の報告書をまとめていた。
薫たちが戦闘を繰り広げている間に百合花さんによって麗の催眠は解けたものの、念のためML本社で身体検査を受けることとなり、総一郎とともに南星市へと向かうこととなった。そうであれば薫も一緒のはずなのだが、総一郎曰く、「お前に限っては体質が勝手に無力化しているから、精密検査なんぞ必要ない。予定通り明日帰ってこい」とのこと。
影里は戦闘要員ではないため、館内で町中の魔力収集機の発見作業をしてもらっていた。彼女はすっかり裏舞台での戦闘が板についてしまった。総一郎と百合花は景悟の補助に回ってもらっていた。
では、金西は何をしていたかというと。
「ずっと勉強していたんですか!」
姿が見えないと思ったらそんなことしていたんですか……
そう、彼は暇があれば自室で勉強していたのだ。正確にはさせられていたというべきだろう。
この騒ぎの中でだ。
「会長によって結界が張られ、部屋から出られなかったのだ」
「それに監視用の魔術も仕込んであったので、常に私が見張れる状態になっています」
ずいぶんと厳重な監視だった。
「今回の騒動で金西君は裏方だろうと踏んでね。申し訳ないけれどこうさせてもらった」
そのおかげで今回は乗り切った、いや予想以上の結果を生んだので良しとしよう。と会長は占める。
「それにしても、薫君。よく無事だったよね」
「確かに」
「まさか旅行中に命を狙われることになるなんて……」
この先を考えてげんなりとする。今後の遠出には注意しなくてはならないようだ。
「ごめんなさい」
蚊のなく声で桜花が言う。
「桜花のせいじゃないよ」
もう何度も繰り返したことか。旅館に帰ってから、自宅で、何度も謝られた。自分が側にいれば回避できたのではと。
「ありがとう」
そういって細い身体を抱き寄せる。頭を優しく撫でてやると落ち着いてきたようだ。
「ん」
桜花は気持ちよさそうに目を細めた。
「はあ……ごちそうさま」
全員の気持ちを長瀬が代弁した。薫はそのまま見渡すと、全員くたーと力なくつっぷしていた。
「皆さん、どうかしたんですか?」
「いいや、なんでもない」
「本当に仲がいいですね」
「そうね」
「分かってはいたが、重傷だな」
薫は言っている意味が分からず首を捻った。
「それはそうとして、麗ちゃんはいつまでここにいるの?」
「今週末までいるそうです」
本社にで検査を受けた後、ホテルに泊まるのかと思いきや薫の家に来るというのだから驚いた。家には月菜がいるので問題はなく、薫たちが帰宅すると、二人そろって出迎えてくれた。
「じゃあ、変える前に一度挨拶しておきたいから、行くね」
「分かりました」
「ふむ、薫君。訊いておきたいことがあるのだが?」
「何でしょう?」
会長が紙と向き合いながら問う。
「最後にサンドールの供給を止めた原理が知りたくてね」
「ああ、それですか」
薫は頷くと、全員の視線が集中した。どうやらよほど気になっていたようだ。
「魔力とは本来は体内から放出するものですから気にしませんが、外から取り入れる場合は変換するために一度体内に入れる必要があるんです。で、僕はその瞬間を狙って、魔力を打ち消した。だから体内に魔力が供給されることはなく、連続的に発動していた魔術は途切れたということになります」
説明を終えた薫は満足げな表情だった。その反面、一同はぽかんと呆けていた。
「簡単に言ってくれるわね」
「ああ、今回も驚かされることになるとはね」
呆れてものも言えないといった反応だった。
「特殊な存在だからできる、と思えばいいのでしょう」
影里が締めくくり、話題は終了した。
報告書を書き終えたあとも、生徒会の仕事が残っている。全員は黙々と作業を進めたのだった。
お待たせしました! 第二部終了です。




