七章6
「薫君が倒れたんだって!」
桜花の呼び出しに応じ、すぐさま帰還してきた御川はフロントで待っていた真里亜に駆け寄った。
「うん。誰かが魔術をかけて眠らせたみたい。怪我はしていないんだけど……紅い紋様が浮かんでいたわ。間違いなく呪術系のものなのだけれど……見たことのないものだった」
学院暫定一位の真里亜でさえ分からない魔術か。魔術自体に型は存在しない……ならば考えられるのは現存する呪術を捻ったもの、もしくはまったく新しい魔術とも考えられるな。これは我々では確定させることさえ満足にできないではないか。幸いにも、MLの社長にマニアの間では有名なサムさんがいる。そちらは任せてもいいだろう。とはいえ、我らも動けないものだろうか。
と思案していると、あるおかしい点が浮かび上がってきた
「うむ……しかし、変だな」
「え? なにが?」
「気付かないかね? 薫君はこの世界には珍しい無魔力者だ。そして彼は魔術を扱えないというディスアドを持ちながら、その反面に魔術の一切を無効化する対魔術能力の持ち主でもある。
ならばだ。薫君が魔術を受けること事態が不自然と考えることができる」
「そうなのよ。わたしもそれは真っ先に考えたわ。でも事実、魔術は発動している」
彼女ははっ、と顔色を変える。
それはつまり、薫が魔術者に対して無敵ではないことを示されたのではないかと。
御川は黙って頷く。
「つまり、薫君のような子に対抗する手段を持つものたちが敵ってことになるわよね」
「ああ。厄介極まりないね」
二人の間に沈黙が訪れる。
「で、薫君は寝たきりなのだね?」
「うん。壁に穴が空いたままだから百合花さんが特別に部屋を用意してくれて、神奈崎社長とサムさんが駆けつけてからは二人がいろいろと指示を出してくれてるわ」
「復旧魔術では直せないのかね?」
「このメンバーで誰が使えるの?」
「それもそうだ」
いくら魔術が使えるからと言っても、得意不得意は存在するわけで。生徒会の中で、この手の魔術を得意としているのが金西なのだが、彼は今荷物を倉庫に置きに行ってもらっている。このような事態とはいえ食べ物を粗末にはできない。
「さっき、大人三人の会話をチラッと聞いたのだけれど、今回の裏にはSKがかかわっているみたいよ」
それを聞いた御川は渋い顔をした。
「また、かね」
「ほんと、狙ってるんじゃないかっておもえてくるわ」
長瀬は自分の冗談に苦笑いをしたのだった。




