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無魔力剣士と召喚士  作者: 夜空 切
第二幕
32/97

五章6

お待たせいたしました。

 各々、入浴を楽しんだ後、昼ご飯を終えると百合花さんのもとへと赴いた。

 泊まらせてもらう条件として手伝いをするためだ。


「では、桜花はいつもどおりにお願いね。薫君と金西さん、御川さんはお風呂掃除をお願いします。もう少ししたら清掃の放送をかけますのでお風呂場の前で待っていてください。浴場横に用具入れがありますから、必要なものはそこから出してください。長瀬さんと影里さんには着替えを用意させますので、このまま従業員室に残っていてくださいな」

 

 百合花さんの指示に従って生徒会メンバーは行動を開始した。



                      ***

 


 さて、場所は変わって浴場前 

 男性陣は常務員室からそのまま風呂場へと向かったのだが、


「放送が入るまで何もできませんね」


 用具入れにあった清掃マニュアルを一通り読み終えて、薫たちは暇をもてあましていた。

 入り口にかかっている暖簾の下に移動用のスリッパがいくつも置かれている。

 つまり、まだ一般客が使用しているのである。

 もしかしたらスリッパを履かずに出て行ってしまったなんてこともありうるのだが、むやみに中を覗くことができない以上、この場で待機するしかない。


「そうだな。しかし……ここを掃除するとなるとかなりの時間を要するぞ」


 彼らは入浴したときに浴場を目の前にしてその広さに圧倒されていたのだ。その倍を掃除するのだから労働量もその面積に比例するわけで。


「確かに」

「人手不足なのでは?」

「ふむ……ならば、我々の専売特許を使おうじゃないか」


 会長はニヤつきなら言う。


「魔術ですか」

「そうだとも」

「なるほど。しかし、俺は属性系に関してそう得意ではないのだが」

「僕は使えもしませんけど?」 

「もちろん分かっているとも。中に入ったら説明しようか」

「うむ」

「了解しました」

 

 それぞれ相槌をつくと同時に退出時間を知らせる放送が入った。

 数分して、一般客がぞろぞろと出始めてくる。

 薫はそれを横目に見ていると、


「……そう言えば、ここは混浴があるそうだね」

「ぶっ」


 何の前ぶりもなかったので思わず噴出してしまった。


「か、会長。いきなりどうしたんですか?」

「いや、先ほど小耳に挟んだものだからね。君たちは気にならないのかい?」


 とんでも発言を勃発させた本人の顔はいたって真面目だった。しかし、どこか薄笑いを潜めているようにも感じる。

 薫は入ったことはないが、混浴が存在しているのは知っていた。

 

「珍しいですね。会長がそういう系に反応するのは」

 

 薫は苦笑した。

 あの顔は……真面目そうに見せて明らかに僕らの反応を楽しんでいるな。

 

「なんだい薫君。まるで私がこの手のものに興味がないような言い方じゃないか」

 

 その顔は少しむくれていた。いつもは笑って過ごしていそうなところなのに。会長はこんな顔もできるのか、とまじまじと見てしまった。


「……薫君。今、失礼なことを考えなかったかね?」

 

 すかさず会長が見透かしたかのように問うてくる。

 

「とんでもない……ですが、会長も年頃の男子であることが分かったのは大きな収穫ですよ」

 

 はぁ、と会長はため息を一つ。そして何事もなかったかのように会話を再開させた。

 

「いつもの私は堅物とでも思われているのかね?」

「まぁ、それに近しいとは思っている」

 

 金西は体格に見合わずうぶな一面を持っていたらしく、先の爆弾発言で思考が一旦停止していたようだが、たった今復活したようだ。

 

「それは生徒会長という先入観を差し引いてもかね?」

 

 その問いに対し、金西はかぶりをふった。

 

「残念ながら、あなたと我々はまだ付き合いが短いため、判断材料がないに等しい。よって、その返答は副会長あたりに聞くのが妥当だろう。ついでに言うならば、生徒会長であることと思春期発言はイコールではないが」

「とりあえず、返答は保留と言うことで」


 薫からすると、御川は人をからかって遊ぶ子供らしさはあるものの高校生にしては大人びており、しっかりしているお兄さんという印象が強い。こうも年相応の会話をしていると、印象うんぬんというより、距離が縮まった感じがある。この旅行が親睦会を兼ねているということから、彼のほうから歩み寄ってきてもらっている形だ。


「あくまで、君達から見て私はどう見えるのか気になっただけなのだが。……まあいいか。お客さんもいなくなったことだし、仕事を始めようか」

 

 薫は、中を見ていないのに浴場内の様子が分かるのか疑問だったが、改めて会長を見ると納得した。彼の身体は、ほのかに光を帯びていたのだ。つまり、なにかしらの魔術を使ったのだろう。

 

「気になるかい?」

 

 薫の視線に気付いた御川は薫の表情に満足したのか気を取り直し、また笑みを浮かべていた。

 

「いいえ。どうせ聞いても使えませんので」

「そうかね。ならば」

「はじめますか」

「ふむ。出陣だな」

 

 三人は暖簾をくぐり、戦場(浴場)へ足を踏み入れたのだった。

 


次の投稿は二月頭になります。

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