四章9 後日談
薫は教室の席で次の時間の準備していたとき、ふと昨日の生徒会でのことを思い出していた。
生徒会室ではいつも通りのメンバーが業務を淡々とこなしていた。
すると、ふと手を止めた会長は、
「先週の事件は虐めが原因だったようだ」
と、切り出した。その一声に全員が手を止めた。村沢は長瀬とほぼ並んで魔力に長けていた人物だそうだ。ただ、彼は唯我独尊の思考の持ち主であったことは批判を呼んだ。
七月の魔獣戦で一年生にして優勝。同級生はもちろん、上級生までもが彼に嫉妬をするようなった。 それからというもの、少しずつ嫌がらせが始まったと言う。
そして、二年に上がってから長瀬という超人が登場した。彼女の奇怪な言動を見ている生徒から、なぜか村沢も変わり者として見られるようになったという。
確かに、魔術は想像や妄想といった思考が鍵となってくる。しかし、上位者全員が特質したものであるかは分からないのだが。
「勝手に決め付けてしまった……と言ったところでしょうか」
それが今まで続いて、フラストレーションが溜まってしまったのだろうとのこと
先月、ついにそれが爆発した。
「しかし気になるのは、彼はそこまで追い詰められていたのかというところだろう」
ふと金西が言う。
「確かに。話を聞いた限り、いじめをした本人に当たるくらいのことはしそうですが……放火までいく とは考えにくいですね」
「君たちの疑問はもっともだよ。彼は当時、そこまで切羽詰っていなかったようだが、それをそそのかした集団がいたようなのだよ」
一息ついて進める。
「手段は分からないが彼のPCにメールが届いていてね。内容は魔警でも解読ができないそうだが、催眠系の魔術がかけられていたそうだ。行動の引き金はこれだろうとのことだ」
催眠……闇属性に分類される魔術で主に相手の行動に干渉し、操る能力のこと。
「で、送られてきたメールの最後にSKと書かれていたそうだ」
「SK――」
桜花が眉をひそめた。
「反魔術集団のひとつね」
「僕も聞いたことあります。反魔術とは言いつつも、魔術を使ってくる矛盾した組織だと」
「そうなのだよ。なぜ、一生徒に干渉してきたのかは不明だが、彼らが干渉してきたのは事実だそうだよ」
薫はSKよりもいじめのことについて考えていた。
なぜ、人はすぐ見た目などで判断してしまうのだろうか。
他人につけられたレッテルをはがすのは難しい。
なぜ決め付けてしまうのだろうか。確かに副会長は変人だがとてもいい人であることは会長が知っているし、僕らも同じだ。しかし、価値観の違いからどうしてもそれは生じてしまう。
それがなければ、こんな事件は起こらなかったにちがいないと僕は思う。
ついでに、我が家を襲撃したのは学校の上級生でした。
依頼したのは、桜花の父親である神奈崎総一朗だと言うのだ。
普通、自分の娘の居候先を攻撃させませんよ。
勿論、桜花は怒っていらっしゃった。
真相を聞いたとたんに、学院から研究所までガウゼスを使って飛んで行き、施設の一部を破壊して帰ってきたのには僕自身驚きを隠せていない。
そのときの桜花の顔はとてもさわやかだった。そして僕ら(おそらく叔父さんも)が、今後彼女には逆らわないようにしようと誓った瞬間でもあった。
急激に動いたため、身体に疲労が残っているが、学校は待ってはくれないのが世のすえだ。
あれ以来目立った事件もなく、委員会は休暇状態。しかし、放課後は生徒会があるわけで……現状のように業務をこなす毎日が続いている。
長瀬先輩はつまんない~、と僕に戯れついてくるほどだから、学院内は平和なのだろう。
最近は毎朝、桜花と月菜の一悶着に付き合わされてから、朝食を取って学校へ行くというサイクルが成り立ちつつある。
仲睦ましいのはいいことである。
桜花は、だんだん生徒会メンバーに慣れてきたようで、一つ返事ではあるものの、会話ができるほどには打ち解けてきていた。いい傾向だと思う。もう少しすれば普通に会話が出来るようになるだろう。
窓の外を眺めると、先日までここで戦闘があったなんて思えないくらい設備が元通りになっている。
これは魔法があってこそ為せる業である。
地面に空いた穴や、炎弾で溶けた校舎、焼けた花なども一瞬にして復元してしまう。
外ではまだ春を感じさせる暖かな風が、復元された花々を静かに揺らしていた。
ふう。ようやく第一部が終了となります。




