四章6
一方、村沢と長瀬の鬼ごっこは続いていた。お互いに体力が続くのは高レベルの魔術師候補だからだろう。
だが、この広い南星学院ではいくら体力があっても休憩を挟まずには進めない。
幸いなことにこの季節は学院の隅々まで桜が咲き誇っている。身を隠すには絶好の時期といっても良いだろう。小学生がかくれんぼをするならばぜひともお勧めしたい。
村沢は身を隠し、休息をとる。
長瀬は村沢を見失い立ち止まった。
きょろきょろと見渡すが、人影を見つけられずどうしたものかと考える。が、何も浮かんでこなかった。
そして視線を腰元に向けると、そこにある携帯端末を手に取った。
「もしもーし。あ、静華ちゃん。私だよ。えっと、村沢さん見つけたんだけれど、逃がしちゃった」
『……先輩、人の話を聞いていましたか?』
半場呆れ気味な返答が返ってくる。
「うん。もちろん聞いていたよ」
自慢げに頷いてみせる。
『……はぁ』
なぜかため息が返ってきた。
『分かりました。さきほど、あなたを見た方から連絡を受けていましたので、八城さんたちには伝えてありますが……逃がした場所を教えてください。もう一度こちらで範囲をしぼってみますから』
と言われ、逃がした場所を教えるや通信を一方的に切られてしまった。
どうやら冗談交じりに返答をしていたのがいけなかったようだ。
「……相手にしてくれなかったわね」
これが影里でなく薫であれば確実に突っ込みが入っていたことだろう。
彼女とはまだ会ってそう日も経っていないので、イマイチ距離感をつかめていない。きっと情報も与えてはもらえないだろう。
長瀬は仕方なく自分の感覚をたよりに歩き出したのだった。
続きです。




