四章3
ここは南星学院第三学年校舎である。
今は昼休みの半ば。
教室で机をくっつけて弁当を楽しんでいる者、廊下で他クラスの友達と談笑している者などさまざまである。その中間を抜けるように、光反射装甲をまとった村沢はのうのうと歩いていた。
現在の三年生では、誰も彼を見ることはできない。レベルの差……光反射装甲を使える人間いないのである。
「あと一人」
手に持っていた写真を見て、呟く。
「……あと一人で、終わる」
悪魔のような微笑をする。そして
「何が終わるのかな?」
「なっ!」
顔を上げると、目の前にまた長瀬の姿があった。
彼女は笑顔で、村沢の持つ写真を指して問う。
「もしかしてそれ、次に復讐したい人の写真かな? そうだよね? そうだよ!」
勝手に自己完結してしまった。
な、何でここにいるんだよ。それよりなぜ俺が見える? 俺の計画では、今はまだ街を探しまわっているころだろうに。村沢は長瀬の突然の登場にあせり始める。仕方ない、ここは……逃げる!
長瀬に背を向け、走り出す。
「まて~」
無論、長瀬も追いかける。
「また長瀬が怪奇現象を始めたぞ」
三年生の目には村沢の姿は見えていないので、長瀬が一人で幽霊か何かを追いかけているようにしかとらえることができない。どう考えても不思議な光景だが、その場にいる全員がまたかと思いつつ無視している。長瀬に何を言っても無駄なことはこの一年で彼らの身に染みているからだろう。
たとえば毎年七月に行われるクラス対抗魔獣戦のとき、長瀬は戦闘中に相手の魔獣に抱きついたことがある。
たとえば後夜祭でロケット花火戦争をして、学院中パニックになったとか。
他にもあるが、今はおいておくことにしよう。
田島は校舎を抜けて校門へ全速力で走る。ここを出てしまえば見つかる危険が大幅に減るからだ。
南星学院の敷地内には、桜が何千本と植えられており、入学式に咲くよう魔術で時期をあわせているのだ。
田島は木々を利用して転々と移動する。
南星市にはもう結界が張られているため、市外に出ることはできないが、学院に残るよりは遥かにリスクが減る。後ろからは長瀬が迫ってきている。
「しばらくは……振り切れないか」
一対多の学院鬼ごっこの開始だった。
続きです。




