四章2
規則委員は一旦生徒会室へ戻り、これからどう動いていくか会議をし始めていた。
「これまでの流れから推測すると、春先の二件で狙われたのが現三年生の第四位と五位の自宅。第一位である副会長には手を出さず……いえ、手を出せないのでしょう。ひとつ違うとは言え、二人の力量差は歴然としていますから。
あからさまに自分より下を狙っているのが見て取れますね。そして、被害者全員が三年生であることから、次の狙いも三年である可能性は非常に高いかと」
通信役である影里がそう報告した。
「となると、危険なのは六、七位あたりか」
会長の呟きに影里はコクリと頷く。
「遅くなりました!」
現場検証をして遅れてきた二人も無事到着したところで、会話を再開する。
「現段階ではその可能性が大きいと思われます。
私は皆さんが帰って来るまでに、これからどう行動していけばいいのかを検討していました。現段階ではシンプルな作戦ですが、分かれた班はそのままにして、会長、副会長、薫君と桜花さんも学校全体……いえ、主に三学年校舎を中心にそれぞれ配置するように展開し、村沢さんが現れたところで一気に囲み、拘束するというのは……どうでしょう? 幸い、学院は広いですからすぐに逃げられることもないでしょうし」
彼女の提案に対し、会長は質問する。
「また転移魔法を使われる心配は?」
「それはないと考えていいです」
きっぱりと否定してきた。
「なぜかね?」
「転移魔法は確かに便利で強力なものですが、魔力消費が魔獣召喚分に等しいことをM・Lが正式に発表しています。連続での発動は控えると思います」
一通り説明し終えた影里は一息つく。
すると、全員が僕に視線を向けてきた。
どうやら答えなくてはならないらしい。
「うん。採用していいんじゃないかな。他に考えている時間はあまりないからね」
そう言って全員を見渡すと、頷いてくれた。
「まだ昼休み中だから、生徒に気を配りながら移動してくれ。では解散!」
全員、外に向かって走り出した。しかし、足音はたてなかった
「副会長! ちょっといいですか」
それに続いて、外に出ようとした長瀬を影里は呼び止めた。さらに、僕を手招きする。
「なに?」
「もしかしたら、村沢は光反射装甲(魔力をベール状にまで引き伸ばし、身体全体を包み込んで光を反射させ、姿を隠す魔術である)を使用しているかもしれません。あとこれ使えるのって、学院内だと副会長と桜花さんだけみたいです。もしかしたら、村沢さんは案外早く見つかるかもしれません」
それはありがたい情報だった。
「そっか。彼は私たちのデータ持っていないから、知らずに歩いているかもってことだよね」
思い出すように副会長は頷いた。そもそも、規則委員会は今年度初めて創設された委員会であり、進級前に退学になった村沢は知る由もない。いや、一度相対しているから知ってはいるか。
「ええ。ですから、よろしくお願いします。桜花さんは別のところで待機させようとしていますから、うまく誘導してくださいね。彼を見つけたら一度、私に連絡してください」
「分かったわ」
長瀬は所定の場所へと向かうため走り出した。
長瀬が出て行ったことで、生徒会室は影里一人となった。静けさを取り戻した生徒会室に一人、取り残されたような感じがする。彼女は自分の席に着くと瞼を閉じ、ふう、とため息をついて、自分を落ち着かせる。目の前には、ノート型のPCが三台置かれている。
この作戦において、影里は情報統括という実は一番重要な役割を担っているのである。行動している委員たちから様々な情報を収集していき、それを次の行動のためのデータにする。おそらく、これから彼女には膨大なデータの欠片が流れ込んでくることだろう。そう思うと気が滅入ってしまいそうになる。
「がんばらなきゃ」
そう言い聞かせ、三台のPCを再起動させた。
続きです。




