三章5
一年戦術科一組三限目
担当の河内先生が黒板に生活魔術と書き、白チョークで文字を指した。
「というわけで今日は生活魔術についてだが……今どういうわけだと心の中で呟いた奴、今すぐ出て来い。もしくは挙手しろ。目の前で俺の美声を聞かせてやるぞ」
「先生、だれも聞きたくないと思います」
教室の奥側に座っている生徒が手を上げ発言する。
「おっ、さっそくお出ましか。さぁ早く前に来て、俺の声を堪能するといい」
「人の話は無視か!」
あくまで、先生はマイペースを貫くようだ。
「ああ、そんなにうれしいか。そうだろう。何せこれは罰ゲームだからな」
「なん……だと」
全く話がかみ合っていない。
「話はここらで終わりにして、授業に戻るぞ」
「勝手に終わらせた――‼」
「魔力が発展しても科学が衰退したわけじゃあない。魔術の存在は科学をより発展させる存在となった。そのなかでも貢献したのが生活魔術と呼ばれる分野だ。ではそうだな、金西。貢献した魔術をひとつ答えてみろ」
「……何が現れたんですか?」
「金西……質問しているのは私だぞ?」
「では、わからないと返答しよう」
その一言で周りの空気は凍りついた。
河内先生はずり落ちたメガネをあげ、「そうか」と答える。
「仕方ない。代わりに吉井、答えろ」
金西の右隣に位置する吉井行又を指した。同じ男としては小柄で女子と間違えられても仕方ない容姿の良さ。肩辺りで切り揃えられている黒髪は首を動かすたびに流れているように動いていた。
「無属性魔術ですかね」
「正解だ。では次にいくぞ」
おふざけから入った先生だったが、淡々と授業を進めていった。
授業内容は魔術の基礎ということもあり、金西はなめてかかっている部分があった。しかし、現実は厳しく、知識不足が初日に露呈してしまった。
朝の会長の言葉を思い出し、背中に嫌な汗が流れた。
「金西君。そんなに汗かいてどうしたの?」
吉井が心配そうに聞いてくる。春だというのに背中は汗でびっしょりと濡れているのはおかしい。
金西の脳内では会長の言葉が反響していたのだった。
「い、いやなんでもない」
実は金西。この学院の入試をぎりぎりで合格したため、他の生徒との学力レベルの差が激しいのである。それに加えて会長の朝の一言は金西にとって、大きなプレッシャーとなっていた。
早く終わってくれと、金西は授業中祈り続けた。
続きです。 区切ったらやけに短くなってしまった……




