三章4
でもって翌朝。
薫と桜花は生徒会室で座っていた。
時刻は午前六時。いつもであれば、ちょうど朝食をとっている時間だ。
生徒会室には昨日知り合った金西や影里もいる。
一般生徒の登校は八時半の予冷までに教室にいればいいのだが、生徒会役員はなんと六時登校と、少し変わっていたりする。いや、かなりといっても差支えがないだろう。
しかし、生徒会始動初日にして現時点でいなくてはならないはずの会長と副会長が不在なのである。今日から仕事をし始める四人は何をすればいいのかわからずただ待つのみとなっていた。
「……誰か会長の連絡先、ご存知ありません?」
不意に読書をしていた影里が問う。その問いに対し全員が首を横に振った。
「そうですか」
とだけ返事をし、また本へ視線を向ける。
それから二十分くらいして、廊下からドタドタと足音が響いてくる。
そして、ドアが盛大に開け放たれた。まず先に見えたのはすらりとした生足だった。どうやらドアは蹴破られたらしい。
「……遅くなって申し訳ない。これをつれてくるのに手間取ってしまった」
「ごめんね~」
初日から遅めのご登場だった。ただ、二人の遅刻云々より気になるものがあった。会長が右腕でやや黄色い物体を引きずっているのだ。よく見るとそれは猫の形をした着ぐるみで、御川がぐるりと正面を向けるとそこには木逆先生の顔が収まっていた。
先生が生徒に引きずられるってどうなのだろうか。
「あらためて……少々遅くなってしまったが、今年初の生徒会定例会議を始めるとしようか。」
会長の一言によって場の空気は一変し、先ほどとは別の静けさを放つ生徒会室。
読書をしていた影里もいつの間にか本をしまっていた。
「今回の議題は皆が知っていると思うが村沢の件だ。君たちの初仕事としては内容が重くて申し訳ないが、承知して欲しい。 ……彼は三月に起こした襲撃放火事件以来、何の動きも見せていない。そのため足取りをつかめていないが――まあ心配することもないだろう。魔警が市全体に出入り不可の結界を張った。本来は他市からの侵入を受けないようにするためのものだ。これを壊してまで突破できるとはやつも思わないだろう」
魔術が発展したことで魔獣などの脅威的な存在から守るためにと作られた防衛魔術で、町全体を半ドーム状に覆う結界のようなものだ。これが発動している間は町の行き来ができないようになっている。例外として駅や隣町の境界地点に転移用のスポットがあり、魔警の方々が許可した人たちが出入りできるようになっている。
「しかし、転移魔術が使えるのであれば無意味では?」
すかさず影里が質問する。
「それこそ心配ない。結界は触れればどんな魔術でも無力化する。転移能力は自身の魔力を身体に纏わり付かせて、高速に移動する魔術だ。通り抜けられるとは思えないよ」
さらに会長は続けて、
「もし奴が結界の近くに居るのであれば、こちらから手を出せる。だが、我々には先にやるべきことがある」
「やるべき事とは?」
金西が質問した。
「人員確保だよ」
会長の答えに対し、僕と副会長は頷いた。
「人集め……ですか」
「そう、人集めだよ。影里君」
まだ理解し切れていない影里に、薫は説明を付け足した。
「南星市全土を捜索するのに、人手が足りないってことです。ここは広いですから」
「そのとおりだ。……では、この件は私ではなく薫君が指揮を執ってくれたまえ。ここからは規則委員の仕事だ」
「……条件ですからね」
苦笑しながら薫が言う横で、会長は頷いてみせる。
「先に言っておきますが、生徒会役員は副職で規則委員もすることになっています。現状六人。村沢を捜索するに当たっては最低でも二十人は欲しいところですね」
「あと……十四人」
ポツリと桜花が言う。
「あくまで最低だけどね……よって、規則委員会初活動は人員確保。もちろん多いほうがいいので上限は今のところはなしです。そして今回の事件のみの参加でも歓迎します。今日から開始してください。以上」
そう締めくくり、会長に視線を向けた。
「私の見込んだとおり、いい働きをしてくれるじゃないか。君に任せてよかったよ」
会長はこちらにグッジョブと親指を立ててきた。
「あなたはそんなキャラじゃないで――」
ツッコム途中で七時を告げるチャイムが鳴ってしまった。
先ほども述べたがこの学院は八時半に予冷が鳴るのだが、朝六時から一時間ごとにチャイムが鳴る仕組みとなっている。
学院自体は六時前から開いているため、生徒は自由に出入りができる。
「む、ずいぶん時間がたつのが速いな。始めたのが遅いから仕方ないか……。ここで一旦中断して、後の話は放課後にするとしよう。今日から授業が開始されるのでしっかり取り組むように。優等生になれとは言わないが、生徒会は生徒の代表であり、生徒をまとめていく役割だ。それなりに優秀でなくてはならないからな。では解散」
各々は教室へとむかった。
一瞬会長は目線を金西に向けたがすぐに扉をくぐった。
会長の言葉と視線に金西が冷や汗を搔いていたことは会長以外誰も知らない。
続きです。




