三章1 放火魔出現
薫、月菜の二人はめずらしく学校の終わる時間が同じだったので、中学の校門で待ち合わせをして帰宅することになった。
今日は桜花の体調が悪く休むとのことだったので、久しぶりの二人での帰宅だった。
そして家が目前に迫っているところで、思いもよらないことが起きた。
空から複数の炎塊が、八城家に落下してきたのだ。
当たった場所からたちまち家が燃え始める。幸いにも火種となりうるものがなかったために、それほど大きな被害に繋がっていない。
「「はぁっ?」」
二人は目を見開いて驚くが、薫はすぐに原因の方向へと視線を向けた。
「たぶん炎弾だな。 ……月菜、桜花と協力して火を消して! それと、これを桜花に渡してほしい」
先週会長からもらったカードを月菜に渡す。もらってからずっと渡しそびれていたものだ。その後、炎弾が降ってきた方へ走り出す。塀を伝いながら軽々と他家の屋根へと飛び移り、犯人を追う。その間ズボンポケットからデバイスを引き剥いて桜花の番号をコールした。
『……もしもし薫。なんか、家の外燃えている気がするのだけど』
「うん、夢とかじゃなくて本当に燃えているよ! で、桜花。〝ウォレスト〟使っていいから回りに移る前に火を止めて。僕は放火犯を追いかけるから。後よろしく」
自宅は両親とおじさんが建設会社と共同設計したものでそんじょそこらの攻撃では傷付かない仕様のため無事だろうが、周りはそうはいかない。燃え移る前にどうにかしてもらう必要がある。
『う、うん。分かったわ』
携帯をポケットにしまい、右手を前に突き出して叫んだ。
『我が契約し龍よ、闇よりその姿を現せ!』
呪文を唱えた瞬間、右手の先から魔法陣が浮かぶ。突如、魔方陣を突き破るように赤き龍〝ダウゼス〟が光臨した。
薫は即座に龍の背にまたがると思いっきり背中をたたいて叫んだ。
「硝煙の臭いを追え!」
龍は一度咆哮し、夕焼けの空に龍が羽ばたいた。
*
一方、桜花は家の外で青龍〝ウォレスト〟を召喚し消火活動を行っていた。
ウォレストの能力は水素を操り変化させること。よって、大量の水素を大気中の酸素と合成して水に変え、家に降り注いだ。点き始めの火はものの三分ほどで消え去った。
桜花は安堵の息をつき、額の汗を拭う。彼女の周りはゲリラ豪雨の後のような有様だった。だが、こうもしなければ鎮火することもできなかったに違いない。周りに燃え移ってはいい迷惑だ。
「お疲れ、お姉ちゃん。家が全焼しなくて良かったー」
「うん。でも結界があるから慌てなくても大丈夫よ」
彼らの家はこうした犯罪にも対応できるよう、防御結界が仕組まれており余程どこのことがなければ家が燃えることはない。しかし、ご近所様はどうか分からないため、早急に対処しておくに越したことはない。
「じゃあ、中に入ってお兄ちゃんのこと待とうか?」
「……取り合えず、お父様に連絡はしておく」
桜花は首肯して、若干焼けている家に入った。目の前で家が焼かれそうだったのに、彼女たちの会話はあまりにものんびりとしたもので不適切だった。
その後魔警の消防隊が駆け付けたが、桜花が鎮火したおかげでお役御免となった。
三章開始です。




