いつか鳥になる日
病室というのは嫌なものだ。真っ白くて、閉鎖的で。
病人という立場も嫌だ。偽りの笑顔と優しさを甘受せねばならない。
俺は教室の窓から飛び降りた。
その結果、運良く助かったらしく、こうして閉じ込められているのだ。
飛び降りたことに特別な意味など無かった。
そこに空があったから。
ただそれだけのこと。自殺願望があったわけではない。イジメの被害にあっていたわけでもない。
繰り返される毎日の虚無感と、居場所が見つからない教室の中で、窓から見える青はひたすらに眩しかったんだ。
窓を開けると、ふんわりとした風が鼻腔をくすぐって。その時、不意に教室のざわめきがスッと聞こえなくなった。
誰かに呼ばれているような、何かが待ちうけているような、そんな感じがした。
何も考えず、窓枠を蹴っていた。
両手を広げて、深い青を目指して。
しかし、俺に翼はない。空に届かず、堅い地へと堕ちた。
ふと、扉がノックされる。そういえば、今日から「面会謝絶」という札が外されているのだったか。
そろりそろりと入ってきたのは唯一の友だった。彼は青白い真顔で、起き上がる俺を凝視した。
そして、早足で近づくと、何も言わずに俺を殴りつけた。
「ばか!」
たった一言ぶつけられた罵声と、頬に感じる痺れ。目の前で慟哭し始めた親友。それらが、じわりと胸に染みた。
俺は生きてる。生きているんだ。
当たり前のことを再認識して、己の鼓動を嬉しく思った。
きっと、もう空に呼ばれたりはしないだろう。俺はここにいる。……ここに、いたいから。




