第0話:魂を削った本編より、15分で書き殴った愚痴がバズる。――これが「資本主義の残酷な真実」だ。泣かれても困るんだよ、創造主!
「……おい。そこで膝を抱えて泣いている創造主。邪魔だ」
アステルの魔王城、私の執務室の隅で、ひとりの人間がうずくまっている。
私の物語を紡いでいる作者、KOTOHAだ。
彼女は、濡れた瞳でタブレットの画面を指さし、震える声で訴えてきた。
『だ、だってぇ……酷いよぉ……』
「何がだ」
『晶ちゃんの「本編」……毎日あんなに頭を捻って、伏線を張って、何時間もかけて書いてるのに……』
「うむ。ご苦労」
『なんで……晶ちゃんが「15分で適当に書き殴ったエッセイ」の方が、PV回ってるのよぉおおおお!!』
絶叫と共に、床でのたうち回る作者。
私はやれやれと肩をすくめ、淹れたてのコーヒーを啜った。
事の顛末はこうだ。
先日、私が息抜きに投稿したエッセイが、あろうことか本編『理系作家』を遥かに凌ぐ勢いでバズってしまったのだ。
「認めろ。それが市場原理だ」
『認めたくない! 読者は重厚なストーリーより、安直な罵倒が好きなの!?』
「悲しいかな、人間とは『栄養満点のフルコース』より、『刺激の強いジャンクフード』を好む生き物だ。……っていうか、お前の書いているストーリーのどこが重厚なんだ、ただの日常系じゃないか!?」
そこへ、空中にホログラムウィンドウが展開する。
表示されたのは、編集部からの冷酷なメッセージだ。
『【業務連絡】エッセイが好評につき、連載枠を確保しました。KOTOHA先生は泣いてないで、さっさと晶様に続きを書かせてください。今後は「本編1:エッセイ9」の割合でもいいくらいです』
『お前らは鬼かぁーーッ!!』
再び泣き崩れる作者。
……まったく。不憫なやつだ。
自分が生み出したキャラクターの「おまけ」に、本体が食われるとはな。
だが、需要がある以上、供給を絶やすわけにはいかない。
私の知名度が上がれば、巡り巡って本編の宣伝にもなる……かもしれない。
なったらいいな……作者。
「おい、泣き止んだらペンを持て。連載のタイトルが決まったぞ」
『……うぅ、なに?』
「『「男に媚びるバカな女しかいない」と嘆く男たちへ。採点基準がガバガバなチョロい試験官相手に、本気で勉強するわけないだろ?』だ。……ほら、さっさと書け。お前が少しでも楽ができるよう、私が世の中の不合理を片っ端からロジックで切り刻んでやる」
『タイトルなっが!? まんまじゃん!!』
これは、不本意ながらバズってしまった「副産物」と、それに振り回される哀れな作者KOTOHA、そして――、
そんな茶番をニヤニヤしながら眺めている、画面の前の「君たち」へ贈る、劇薬の小瓶だ。
さあ、講義を始めようか。
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さぁ、遠慮することなく、私の承認欲求を満たすが良い!




