表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒王国物語 第1回目  作者: 朝倉あつき
第5章 戦いの始まり
26/27

第5章 戦いの始まり(4)

 ツツジの集落付近。

 そこには、カイの部下である湊が率いる警察部隊が軍を引き連れていた。

 遠方から、気配を感じる。

 恐らく、敵襲だ――湊は、一斉に弓兵に攻撃するように命じる。

「行け!」

 弓兵は弓を引き、遠方からやって来る敵襲に攻撃を始めた。

「今すぐ、カイ様達にご報告を――」

 湊はそう言い、部下に命じた。

 恐らく、長期戦となるだろう。湊はそう予測したのだ。






「玲様、アニタ様、敵襲です」

 湊から連絡が来た。

 カイは玲達の住まいを囲み、厳重体制で屋敷を護っている。

「真理奈姫、貴方様は逃げて下さい。ここはこの俺が、護ります」

「いえ、カイ様。私も一緒に兄様を護らせて下さい」

 もう、再び、ツツジの里を火の海にはしたくない。

 もう、悲しい思いなどしたくない――真理奈の切なる願い。その願いに、カイは胸を打たれる。

「貴方様は必ずや、この俺が必ずや守ります。真理奈姫、無理はなさらないように」

 カイはそう言い、拳を上げ、やって来る兵達を迎え撃ったのだった。






「玲様、勢力は五分五分と言うところです」

「そうか。アニタ、ありがとう。必ずや援軍が来るまで持ちこたえるぞ……」

 ソレイユ兵、グローヴァー兵が来るまでの辛抱だ。

 そう玲は兵達を鼓舞する。アニタも玲と共に鼓舞する。

「玲様、覚えてますか。17年前の反乱――第二分家の者達が起こした反乱を。あの時、貴方様は守って下さいました」

「ああ。それがどうしたのだ?」

「今度は私が貴方を守る番です。それが貴方様の后である私の役目……」

「何を言う、アニタ。男である私を守るなど幼い時と変わらぬな」

 そう玲が真面目に返すと、アニタはくすりと笑って見せる。

「腹の子が言っているのです。父である貴方を守ってくれと……それが私の使命なのですから」

「アニタ、いい加減、頭領である私にお前を守らせてくれ。お前と、私達の子を……」

「いいえ。私の替わりはいても、貴方様のようなツツジの頭領はいない――必ずや、貴方様を守る覚悟です」

 そう言い、アニタはメイスを構える。そして、やって来た敵兵を押しのけてみせる。

 その様は、玲には一本触れさせはしないという様である。

「貴方、玲様を安全な場所へ――、ここは私が引き受けます」

「アニタ様、その体の状態で……」

「いいから、とっとと、行きなさい!」

 そうアニタが言った瞬間だった。

 アニタの腹を剣が刺す――アニタは、その攻撃を受ける。

「アニタ!」

「玲様……、お願いです。行って下さい……貴方の刃は全て私が受けます」

 そして、また一突き、攻撃を受ける。

「アニタ、くそうっ……!」

 玲への攻撃は全て死守したアニタは、その場で倒れた。

 玲は側へ駆け込もうとしたが、部下達に阻まれる――アニタ、アニタと何度も、玲は叫んだ。

「ごめんなさい、玲様……」

 自分を呼ぶ最愛の人の声が、だんだんと遠くなっていく。

 そうして、アニタは絶命した。玲という最愛の者を守って死んでいったのである。






「まだですか、援軍は……」

「真理奈姫、もうすぐ、もうすぐの辛抱です」

 そう言い、真理奈を守りながらカイは敵兵を一人、一人、殺していく。

 その時、二つの知らせを、カイは部下から聞いた。

 援軍がもうすぐ来るという事。

 幼馴染みのアニタが殺されたと言うこと。

 その事実は、すぐさま真理奈に伝えられた。

 アニタと仲が良かった真理奈は、その事実に悲観せずにはいられない。

 だが、真理奈は涙を見せなかった。

 もっと辛いのはきっと、夫である兄の方だ。

「カイ様、必ずや、アニタの敵を討ちましょう」

「ああ。真理奈姫、必ずやアニタの敵を討ちますよ……絶対に!」

 二人はツツジの里の窮地に駆け込む援軍を見ながら、呟いた。






 形成は逆転された。

 セシルは部下からの報告を聞き、内心焦りを感じていた。

「囲まれたか……」

 ソレイユ兵、グローヴァー兵が次々と味方を倒していく。

 このままでは、自分も――そっと、首に提げているブローチの写真を見た。

 その写真にはアリスが笑顔で写っている――最愛の人の笑顔に、セシルは鼓舞された気分になった。

 このまま負けるわけにはいかない。

「全軍に告ぐ。今すぐ防壁を突破し、火を放て!」

 セシルはそう言い、味方に命じた。

 すぐさま、味方の軍は、屋敷に火を放つ――まるでそれは、17年前のツツジの里の反乱の様だった。

 あの反乱のせいで、ツツジの里の覇権はシュヴァルツ王国に奪われたのだ。






 リーフィ村、エレン達が住まう家。

 そこに来客がやって来た。

「エレン姫様、お初にお目にかかります。香月七瀬という者や」

「ツツジの里の者が、一体何の用ですか」

 取り次いだのはウィルだった。

 来客――七瀬は、神妙な面持ちで、告ぐ。

「シュヴァルツ王国軍は負けるで。あんさん達、早く、マクスウェル家領地に亡命しい」

「何を言ってるのです。貴方はツツジの者です。容易く、信用など……」

 ウィルがそう告ぐと、七瀬は書簡を手渡した。マクスウェル家領主――ダニエルが書いた手紙だ。

 その書簡にはこう書かれていた。姫を受け入れると。

「ええ? このままやと、エレン姫が危ないで。マクスウェル家の領地にいれば、あんさん達を守ってあげれるで」

「この書簡を信じて良いようですね」

 ダニエルとウィルは繋がっている――疑う理由などない。

「今すぐ、亡命の準備をしましょう」

 部下達に、エレン姫を呼んでくるよう、ウィルは命じた。






 一匹の鳥が弧を描き、空を飛ぶ。

 その様を、エレンは不思議に見ていた。

「エレン、兄上から、逃げる準備をせよと……」

「あの鳥さん、なんだか羽が片方真っ黒だね。変わった鳥さんだね」

「エレン姫……」

「フーくん、分かってる、分かってる! 行こ!」

 黒は白に染まる。白は黒に染まる。

 未だ、それは序章に過ぎない――革命の時はやがてやって来る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ