TURLEY RICHARDS『YOU MIGHT NEED SOMEBODY (邦題:届かぬ想い) 』(1979)
今回はその音像も秋にピッタリ!
知る人ぞ知るアメリカのシンガー・ソングライター、ターリー・リチャーズの代表的名曲、『YOU MIGHT NEED SOMEBODY (邦題:届かぬ想い) 』を取り上げたいと思います!
この楽曲は80年代にランディ・クロフォード、90年代にはショーラ・アーマという、ともにR & B系の女性シンガーにカバーされてヒットを記録していますが、オリジナルのターリー・リチャーズ・バージョンとはまるで違います。
聴きやすくていい曲ではあるのですが、オリジナルにあった胸を打つ哀愁の様なものは感じられないため、今回ここでオリジナルを激推ししますよ!
ターリー・リチャーズは1941年生まれで、キャリアの初期には通好みのフォーク・シンガーとして活動。
しかしながら彼は、4歳と29歳の時に起こった不慮の事故により、片方ずつ視力を失うという悲劇に見舞われてしまいました。
結果として盲目になったしまったターリーでしたが、70年代の後半にアメリカで大ブレイクしたイギリスのバンド、『FLEETWOOD MAC』のメンバーがターリーのファンだった事から、彼等のバックアップを受けてアルバム『THERFU (邦題:錆びた夜) 』(1979)を発表します。
そのアルバムのオープニングを飾るのがこの曲。
お前はひとりじゃない、お前には誰かが必要だ、だから心を開け、想いがあるなら燃やし続けろ。
後天的に視力を失ったターリーが今、異国の仲間に支えられて放つこのメッセージは、まさに静かに燃え続ける炎でした。
冷たい空気を切り裂く様な、バラードらしからぬパワフルなドラム・サウンド。
翳りを隠せない繊細なハスキー・ボイス。
極めてシンプルな楽曲でありながら、何度聴いても飽きる事がありません。
それはきっとこの曲が、私達のまわりにもこれから訪れるかも知れない悲劇と向き合う、そんな力をくれるからなんだと思います。
残念ながらこの曲もヒットに結びつかなかったターリーは、アーティストとしての第一線を引退。
ケンタッキー州に移住して、ボーカル講師を本業としながらマイペースなライブ活動とアルバム制作を行いました。
それでも21世紀に入ってから、ボーカル講師である彼の教え子が複数、アメリカのオーディション番組で優勝するなど、まるでドラマのラスボスの様なしぶとい人生を送り続けているターリー。
82歳の現在でも特に体調不良を聞かない彼だけに、神様が視力を奪った罪滅ぼしをしてくれているのかも知れませんね。
この曲が収録されているアルバム『THERFU (邦題:錆びた夜) 』は近年日本でも紙ジャケットCDとして復刻され、サブスクにもこの曲はあるみたいなので、多くの音楽ファンにオリジナル・バージョンの魅力が伝わる事を願っています。