THE JETS『MAKE IT REAL』(1988)
今回は80年代後半に一世を風靡した、トンガ系アメリカ人のファミリー・グループ、ザ・ジェッツ。
彼等のセカンド・アルバム『MAGIC』(1988) から、全米チャート第4位を記録した名曲『MAKE IT REAL』を取り上げたいと思います!
ミネアポリス出身の方トンガ系アメリカン・ファミリー、ウルフグラム家の6兄妹に、養子の年長組2名を加えたザ・ジェッツは、古くはマイケル・ジャクソンを擁するジャクソン5などに代表される、いわゆるキッズ・グループ。
年長組の男性陣がファンキーなダンス・ナンバーで魅せれば、年少組の女性陣がしっとりとしたバラードで聴かせるというバランス感覚で、同世代のティーンエイジャーよりも大人のファンが多い印象でした。
典型的なアングロ・サクソン系の白人ではなく、またアフリカ系の黒人でもない彼等は、嫌味のないルックスと唱法を持っていた事もプラスとなり、音楽ビジネスが巨大化した80年代と万人受けのタイミングが一致した……そう考えられますね。
楽曲としては派手な盛り上がりもなく、どちらかと言えば地味な印象の『MAKE IT REAL』。
この曲の最大の魅力はその切ない歌詞と、当時15歳だった事が信じられない、次女エリザベスの歌唱力でした。
愛を誓ったはずの彼氏の気持ちが離れてしまい、あの時の彼氏の愛の言葉を実現するためのチャンスを、もう一回私に下さい……。
この内容の歌詞を歌うエリザベスは、小手先の技術に頼らない真っ直ぐなひたむきさこそ15歳の少女ですが、その声質は25歳と言われてもまだ足りない程の包容力に満ちています。
抑制を効かせたアレンジの中で飛び出すギター・ソロも、そのトーンを意識してエリザベスの声質に合わせており、私も年甲斐なく感情移入して泣きそうになってしまいますね(笑)。
エリザベスによると、この曲はレコーディング終了間際に飛び込んで来た追加曲で、スタッフの熱意に押されて歌ったとの事。
スタッフとしても、この曲が一過性のヒット・ナンバーで終わらず、未来に残るポテンシャルを秘めているとの確信があったのでしょう。
80年代は絶好調だったザ・ジェッツでしたが、そこは10代後半から20代前半という年頃のファミリー。
音楽以外のキャリアを志すメンバーもおり、まだまだ人気のあった1991年、ベスト・アルバムを発表してあっさりと解散します。
現在の彼等は定期的に再結成をしながら、ライブツアーと各々の仕事や家庭との両立を実現。
この理想的なキャリアの構築は、子ども達を金儲けの道具として使わず、楽しくなければいつでもやめろと言い続けていた、ウルフグラム家の両親の存在も大きかったのでしょうね。
ザ・ジェッツも十分にメジャーなグループですので、サブスクやYouTubeでの視聴には困りません。
如何にもキッズ・グループらしい可愛いMVもほっこりしますが、まずは音だけで聴いて欲しい所です。
『MAKE IT REAL』以外にも、転調の多い難曲を当時13歳(!)のエリザベスが渋く歌いこなす『YOU GOT IT ALL』(1986) も、バラードの名曲として激推ししますよ!