THE CRUSADERS featuring NANCY WILSON『THE WAY IT GOES』(1986)
今回はジャズ系アーティストから。
フュージョン〜コンテンポラリー・ジャズの草分け的存在のグループ、クルセイダーズと、こちらもジャズ・ボーカル革命の姐さん(笑)、ナンシー・ウィルソンの共演曲、『THE WAY IT GOES』を取り上げたいと思います!
両者ともに1950年代から活動を始め、この曲が収録されているクルセイダーズのアルバム、『THE GOOD AND BAD TIMES』(1986)が発表された時点で既に大ベテラン。
ジャズの伝統に縛られず、ポップ・フィールドにも間口を広げたそのキャリアには賛否両論ありましたが、その功績はジャンルの壁が意味を為さなくなった現代でこそ、正当に評価されるでしょう。
特にクルセイダーズは、ジャズ・グループのアルバムにゲストを招いたボーカル・ナンバーを入れてこれまでにないシングル・ヒットを生み出し、ジャズ・ミュージシャンの技術とセンスで、その後のシティ・ポップなどに多大な影響を与えました。
そのサウンドの中核にいたのは、ブルースのみならず日本の演歌的な哀愁まで感じさせるメロウなキーボーディスト、ジョー・サンプルと、テキサス出身らしく無骨で力強いサックスを響かせるウィルトン・フェルダー。
2024年現在、クルセイダーズのメンバーの殆どとナンシーは、既に故人となって久しいです。
しかしながら、この曲で演奏しているドラマーのソニー・エモリーは当時まだ若手で、現在では日本のDREAMS COME TRUEのツアー・メンバーでもある親日家のベテランとして、実は私達に身近な存在になっていました。
イントロから聴こえてくるキラキラしたエレピ・サウンドは、80年代に一世を風靡したYAMAHAのシンセサイザー『DX7』。
やや時代は感じさせるものの、そのお洒落なサウンドのど真ん中に立ちはだかるナンシーのボーカルは、聴き手への媚びを一切感じさせない、粋で颯爽とした佇まい。
歌詞の内容も、「THE WAY IT GOES 」(いつもの事だけど、そんなもんだよ) というフレーズを核に、人が生きていく中で欠かせない喜びも悲しみも、大切な人の愛があってこそ………という普遍的テーマを嫌味なく浮かび上がらせる、いつの時代にも必要とされる名バラードと言えるでしょう。
ジャズをベースにしたこの手の楽曲は、実は私達日本人にとって国民的人気アニメ『ルパン三世』で刷り込まれているものであり、歳を重ねれば重ねるほど、受け入れらる音楽が無限に広がっている事を実感出来ますよ。
この曲もサブスクやYouTubeから気軽に聴く事が出来ますが、この曲をはじめとするクルセイダーズのボーカル・ナンバーを集めた『THE VOCAL ALBUM 』というCDも出ています。
80年代から90年代にかけたフュージョン〜コンテンポラリー・ジャズ系のボーカル曲は、本当に心地よくて日本人好みの美しいメロディーがあるものが多いので、多くの人に聴いて欲しいですね!