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【完結】乙女ゲームに転生した侯爵様(攻略対象)は偽装婚約した転生モブ令嬢を溺愛して離さない  作者: イトカワジンカイ


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15/22

ダンテ・クレルモン

夜会の翌日。

ルシアンはギルシース王国王子ナルサス・ギルシースの対応に頭を悩ませていた。


あの後、ダートと数名の部下が黒髪に金の瞳の男を探したのだが、見つけられなかったのだ。


このままナルサスを見つけられず、何らかの事件に巻き込まれでもしたらヴァンドールとギルシースの間で国際問題になりかねない。

一刻も早く見つけ出す必要がある。


「ルシアン様、ご指示いただいたリストになります」

「ありがとう」

「ですが、ナルサス殿下の名前はありませんでした」


ルシアンはダートから資料を受け取って中身を確認した。


この資料はここ2週間以内にギルシースから入国した人間のリストである。


当たり前ではあるが、貴族だけではなく商人や旅の一座、あるいは旅行客など、多くの人間の入国があり、リストの資料は20枚はくだらない。


(やはり数が多いな)


この中でどう絞り込むか。

まず、リディの証言からもナルサスは昨日の夜会に参加していたことは確実だ。


それに夜会に参加できるということは主催者のロッテンハイム侯爵に招待されているということで、貴族に限定されるだろう。


そう考えてルシアンはざっと資料を流し読みしてみた。

その時、資料の中に見知った名前があって目を留めた。


(ダンテ・クレルモン? ……あのダンテか?)


昨日出会ったリディの幼馴染だという男だ。

まさかダンテがギルシースからやって来たとは思わなかった。


(クレルモンと言えば、確か伯爵家だったな)


ふと、先ほどの可能性が頭をよぎった。

ギルシースから2週間以内に入国した、貴族の人間。


もしかしてナルサスが従者としてダンテと入国していて、さらに夜会に招かれているとしたら。

そうすれば入国者リストに名前が載ることはない。

そして何らかの手引きをしてナルサスを夜会へと潜入させたとしたら……。


(まぁ、そんな偶然あるわけはないか)


だが、もしダンテではなくても、その方法で夜会へと参加したという可能性は捨てきれない。


「この中で貴族だけをピックアップしてくれ。そして、ロッテンハイム侯爵に依頼して、昨日の夜会の招待客のリストを入手して欲しい」

「承知しました」


そうダートに指示をすると、彼は一礼して執務室を出て行った。


それを見送ったルシアンはもう一度資料へ目を移して、ダンテの名前を見るとため息をついた。


仕事中だというのに、どうしてもリディのことを考えてしまう。

もし彼であれば契約に縛られて告白できないルシアンとは違い、堂々とリディに求婚できるのだろうか?


(いや、今の婚約者は俺だ。リディを渡すことは絶対にしない)


可能であればダンテとはもう二度と関わりたくないし、リディにも近づいて欲しくはない。

勝手な独占欲であることは百も承知ではあるが、それが本音だ。


ルシアンは手にしていた資料を投げ捨てるように机に置いた。

無性にリディの顔が見たくなった。

ルシアンは最後の仕事を片付けると、早々に帰ることにした。



だが屋敷に帰り、そのドアを開けるとエントランスにいたのはエリスだった。

何やら手紙を読んでいるようで、ルシアンがエントランスへと入ると手紙から視線を移してルシアンを迎えた。


「お兄様、お帰りなさいませ」

「あぁ。ただいま。手紙か?」

「ええ。今日はお夕食はご友人とお食べになるのですって」

「友人?」

「たぶんそうだと思いますわ。今日、昔のご友人とお茶に誘われたと言って慌てて出ていかれたから」


普通ならば気にならない「昔の友人」という言葉が、妙に引っ掛かった。

当たり前だがリディにもルシアンが知らない友人など沢山いるのだ。


それに友人と会うのに、いちいちルシアンが干渉することもできない。

だが、エリスは少しだけ戸惑った表情を浮かべていることに気づき、ルシアンは尋ねた。


「どうかしたのか?」


「えっ? いえ……お姉さまがお出かけになるときお手紙を貰って、ものすごく急いだ様子で出ていかれたのよ。よっぽど会いたいご友人だと思っていたのですけど、相手が男性の方だったからちょっと意外で」


エリスの言葉に、ルシアンの脳裏に一人の男の顔が浮かんだ。


(もしかして、ダンテか?)


幼馴染であるダンテであれば「昔からの友人」の括りに入るだろう。

慌ててエリスの持っていた手紙をひったくるように奪い、中身を確認した。


『リディをディナーに招待させていただきました。

帰りは責任をもって送るのでご安心ください。 ダンテ・クレルモン』


その手紙を読んだルシアンは思わず手紙を握りつぶしていた。


リディはダンテのことは異性として見ていないと言っていたが、ダンテはそう思っていないはずだ。ルシアンに噛みついてきた様子からも分かる。


リディがダンテの元にいると想像するだけでルシアンの心中は穏やかではなかった。


もし、ダンテがリディに告白したら。

勢い余って抱きしめたら。キスをしていたら。


(……そうなったら殺す。俺に権利がないとか言ってられない。リディは俺の婚約者だぞ)


好きな女に手を出されて我慢できるわけがない。


それにリディは対面的にはルシアンの婚約者なのだ。

リディに指一本でも触れたら、切り殺すことも厭わないし、その権利はある。


静かに怒りの空気を醸し出した兄に驚きながらエリスは宥めようとした。


「その……きっと久しぶりに会うから昔話に花が咲いてしまったのよ。リディお姉様に限って変なことにはならないはずですわ」

「……当たり前だ」


ルシアンはリディを信じている。


あの律義な性格のリディが、ルシアンという婚約者がいるのに浮気をするような人間ではないことは百も承知だ。


だが、頭では分かっていても、気持ちは別である。

とはいうものの、妹の前で取り乱すこともできず、ルシアンは冷静を装った。


その後ルシアンは、余計な雑念を振り切るようにディナーかき込むように食べたので、それを見たレイモンもカテリーヌはも驚きつつも呆れ顔だった。


「ルシアン、いくらリディさんがいなくて不機嫌な気持ちは分かるけど、そんな鬼の形相でディナーは食べる物じゃないわよ」


「何をそんなに落ち着かないんだい? リディさんが夜に外出してしまっているのは心配かもしれないけど、友人と食事をしているだけなんだ。心配することもないだろう。それに束縛する男は嫌われるよ?」


レイモンの最後の言葉が心に突き刺さりつつも、やはり焦燥感は消えず、ルシアンは席を立つと自室に戻ることにした。


「無作法で申し訳ありません。仕事があるので自室に戻ります」


そう言って、ルシアンは自室に戻ったものの、そわそわと落ち着かず、気づけば部屋の中をうろうろと歩いていた。

時計を見れば時間は8時になろうというところだった。


ディナーならばもうとうに終わってもいい時間だ。


(なんで帰ってこないんだ?)


まさかダンテに押し倒されているなんてことはないだろうか?

告白して両想いになった……なんてことはないだろうか?


悶々とその姿を想像してしまう。


(もう駄目だ! 我慢できない! 迎えに行こう!)


ルシアンは耐えかねてダンテの滞在しているクレルモン邸へと向かうことにした。



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