城南事件帳
刑事課に戻った梅宮は羽生に、
「大臣のところ、 臭いね。国有地が手に入らず口利きが出来なかったんだから、学校建設予定だった理事長からも金が出なかったはずだし。 その金で 2ヶ月後の国政選挙をうまく乗り切ろう って 腹もあったろうしね」
「 てことは、それが 草柳になりえますね、 梅宮さん」
「ああ。十分になりえるよ」
するとどこで聞いていたのか、恵係長が、「 ちょっと待った。女 落語家の線はどうだ?
実は、 飯盛娘も五反田のドンと繋がってるらしいぞ」
「えっ!?」
「財務省のチェーンリアクションの件で」
「ブロックチェーンですよ、 係長」
「そうだ! 飯盛娘と草柳のツーショット写真、引き伸ばしてみると花輪が飾ってあったのがわかる。そこに『センミツ屋不動産金永一』と名が記されていたんだからな」
早速 2人は 戸越銀座の飯盛娘のマンションに行って問い詰めると、「何度かお座敷に 呼んでいただいたことはありますよ。 それだけです。お客様のお一人にすぎません」
「そうでしょうか? 先日のあなたの真打披露公演、浅草の席亭に確認したところ、しっかり表玄関の、一番入り口に近い良い場所に金永一社長の花輪が大きく飾られていたそうじゃないですか。上野の鈴本も新宿の末広亭も池袋も横浜の相鉄演芸場も」
「・・」
「真打披露興行って当然 お金かかるんですよね」
「 もちろん、かかりますよ。 田舎出だったら、故郷に頼んで農協からお金借りるとか、袴をこさえるとか。お金だけではなく、 お客の数集めとか、 それを3ヶ月くらいでやらなきゃならない」
「あなた、 乗り換えたんじゃないですか、 男を」
「何をやぶから棒に」
「 草柳さん, 毎週のように, 戸越銀座にあるコンビニに 姿を見せていた意味が やっと分かりましたよ。 そこから歩いてものの一分ほどのマンションに住むあなたと逢引きするためだ」
「 逢引きって」
「 学生時代、 大学は違うが 落研ってことで、 大学間の交流があったんでしょう。 彼は東大法学部で異色だったはずだ。当然のように 卒業したら 霞ヶ関の官僚になってしまった。 その後、 疎遠になったが、十年後、 あなたの落語をラジオで聞いた彼から連絡が入った。ブロックチェーンの司会をやってくれないか、と。焼けぼっくいに火がついたんだ。しかし、その半年後、 今度は、あなた自身の本当の転機が訪れた 。真打ち昇進だ。 ちょうどその頃、 ブロックチェーンの司会 会場で近づいてきた 五反田のドン金永一の甘い囁きに あなたは夢中になった。『 必要なら、いくらでも資金援助してあげるよ』 そんな提案を持ちかけられたんじゃありませんか?」
飯盛娘は梅宮の核心を突いた詰問に対し、ただ、 口を閉じて、笑いを浮かべただけで、一切、返答しなかった。




