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城南事件帳

五反田有楽街中央通り沿いの果物屋の隣に佇む 古本屋「五反田書店」に入っていく二人。


「 大臣の秘書は元々、五反田や 戸越銀座 など城南地域だけをシマに持つ 直径2Km圏内のきょういき暴力団戸越銀次郎一家の舎弟だったんだよ」


 そう、内情を暴露する古本屋のあるじだった。


「おやじさん、きょういき、って、なに?」


「 おいおい梅さんよぉ~、ホンモノの刑事なのに、そんなのも知らねえのかよ、呆れたねえ。きょういきはきょういきだよ。狭い域って書くんだよ」


「なんだ、洒落か・・」


「洒落じゃねえよ。れっきとした、広域に対することばだ」


「まあ、なんでもいいよ。とにかく、そういうことか」


「そうさ。それとなあいつは昔、昔の、その昔、風俗店の店員から五反田に首を突っ込んで、いつの間にやら、あれよあれよという間にヤクザの世界にずるずると引引きずり込まれたんだ。そいつがこの前、五反田のドンっていわれる金永一の経営する不動産屋に金と二人で談笑している姿が、ガラス張りの窓の外から見えたんだよ」


「てことは、おやじさんは、大臣の秘書が未だに 五反田の闇社会 と つながっていると見ているのかい?」


「 秘書がじゃないよ。その上の大臣が、だよ。 秘書はあくまで 触媒に過ぎない。 何らかの利権が民自党の 幹部と五反田の暗黒街とで 出来上がっているとみるのが普通じゃないかね」


「 なぜそこまで 断言できる?  例のおやじさんの裏稼業のスジからか」


「まあね。私も表向きは古本屋の看板を掲げているが、とてもとても一冊五十円、百円じゃ、この世知辛い東京で生きていくのは・・」


「だから口入れ屋か。それにしても、凄い商売だな」


「いいじゃないか、 五反田 らしくて。 好き者相手の商売したってさ」

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