城南事件帳
すでに刑事課ではパソコンで動画見過ぎのための グロッキー 寸前の 刑事 二人。
「 目がチカチカしますよ。 いくら 俺が 独身で、ネット上の無料エロ動画サイトのヘビーユーザー だからって、鈴鹿レースじゃないんだからさすがに八時間も ぶっ通して股ぐらを凝視したことは初めてですよ」
「 おい、 誰が、 勤務時間中に女の股ぐら 凝視しろって言った? お面だよ、お面。股ぐらじゃないよ。はき違えないで。仕事だよ」
「すいません・・あぅ、これ、ひょっとして」
「 ひょっとしてなんだ。 何か見つかったか」
「ええ。ホトケじゃないですか。『素人動画流出Xシリーズ』主宰者・ドリトル佐川もいますよ」
「これが、さっき言ってたドリトル佐川か? ボテ腹だね」
「こういうサイトのやつって、大概そうですよ。普通ならみっともなくって、自分の体なんか人前に晒せないはずなんですけどね~、どういうわけか、こういうサイトはこういうボテ腹ばっかりが映り込んでいるんですよ、動画に。ただ、さすがに、スケベどももわかってるんでしょうね。見る側が求めてないってことを」
「というと?」
「つまり、見切れてるんですよ。大概が。いや、見切れてないかな。堂々と出てるケースも結構あるかも」
「どっちだよ」
「どっちでもいいんですけど」
「じゃあ、いちいち取り上げなくたっていいだろ」
「いや、せっかくですから、終いまでお付き合いください。たしかに、ボテ腹は見ていてむかつくんですよ、こっちも。こんなデブなくせして可愛い娘とイイ事ばっか、しやがってってね。だけど、いっぽうで、滑稽にも見えるんですよ。こんなみっともない身体して、それでも、こういうことを若い、すらっとした、人生花盛りの娘とヤリたいのねって」
「羽生君、話聞いていると、とても、二十代の若者の話とは思えないよ。甲羅を経たおっさんの物言いだよ、まるで。ネットの無料エロ動画サイトというものは、そこまで人を老成させるものなのか」
「老成ってことはないですけど、ある意味、成長するいうところはあるでしょうね。おませさんになるという点で」
「おませさん、ね。うまい事言うねえ。って、感心してる場合じゃないんだよ」
ポリポリとわざとらしく頭を掻いた羽生は、続けて「この映像に出てるマンションの、最上階だかなんだか知りませんけど見晴らしのいいベランダで彼方に山も見渡せて、しかも木製の仕切りがあって、近くのビルからは覗かれない作りの所で、男女二名ずつでくんずほぐれつしているうちの、もういっぽうの痩せぎすフニャチン男がホトケですよ」
「フニャチンは余計だぞ、羽生君。モザイクかかってんだから。どれどれ・・あっ、そうだ! この顔、ホトケだよ。生前の健康体の時の」
「健康体って呼んでいんだろうか」
「相手の女二人のうち、モエもいますよ。髪型はショートですけど。もう一人の女は顔にモザイクかかってますね」
「じゃやっぱり、つながりあったんだな。秋葉原のリフレ嬢千倉モエと『やりたがりマン』こと草柳と、ドリトル佐川と。いったい、どこにいるんだ、 ドリトル 佐川 ってやつは? どうやってコンタクトをとるかだ」
すると、羽生が急にしたり顔で、「『 郷に入っては郷に従え』でいいんじゃないですか?」
「というと?」
「やつの主戦場であるSNS上にそれらしい文書、アップしてみましょうよ」




