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城南事件帳

「えっ、脱糞? なんで脱糞なんて・・ わぁああ~」泣き出してしまった。「そんなことまでやらされなきゃいけないなんて。だったら、秋葉原でリフレのバイトなんてしなかったのに~~」


 これには、さすがに梅宮も困ってしまった。ベテランの刑事としては早まったな、と。手柄を急ぐといいことないな、と。そりゃそうだよなあ、いきなり出合い頭で、刑事から「脱糞しろ」なんて言われたら、リフレ嬢じゃなくたって泣き出したくなるよなあ。そりゃそうだ。悪いことした。だいたい、いくら現場がくさいからって、その原因がトイレの便器のなかにあったからって、そこからDNAを採取しないよな、そりゃ。ふつうは皮膚とか髪の毛だよな。しまった、しまった。反省、反省。気を取り直して、


「わかったわかった。じゃ、髪の毛一本もらえるかな」


 するとどうしたことだろう。あれだけ、盛大に泣きじゃくっていたはずなのに、もう泣き止んだと思ったら、急に真顔になって、


「はい、どうぞ」モエはケロッとした顔で頭の毛をむしって渡す。


「なんだ、ウソ泣きか・・」




  梅宮と羽生が大崎署に戻り、 科捜研の担当に頭髪を一本渡し、 しばらくすると、担当の、黒フレームをかけた神経質そうな四十手前くらいの男性職員が、眉間に皺を刻みつつ、さも深刻な事態であるかのように刑事たちにこう告げた。


「違いますね。千倉モエでは ありません。 あのくそは」


 へえ、大学院まで出ているだろうエリート職員でさえ、こういう口の利き方するんだ、とヘンに勉強した羽生は、せっかくだから、エリートのひそみに倣って、


「 なんだあのくそ 違うんですかあ~、残念!」と言い放ち、それなら、と、「じゃあ、 振り出しかぁ~。 いい線いってると思ったのに・・」毎晩のように目を皿のようにして無料風俗動画を凝視しつづけた末の、オレのクラウド・勘ピューターも今回ばかりは当てが外れたかあ~と心で嘆いた。


「いや、 まだ諦めるのは早いよ、 羽生君」


「えう?」


「 もう一度、 エロ動画を 詳しく チェックしてみよう」

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