城南事件帳
このモエが、羽生の頭の中の瞬時による マッチングで浮上した女だった。ホトケのカメラで 自己紹介シーンがあった。いくつもの女性が同じように始め、 椅子に座ったりなんかしちゃったりして、ホテルの一室 で自己紹介から動画が始まっているのだ。その中でも、羽生はピンと来た。「あれっ、この女性、どっか 別なので、 つい最近お世話になったあのひとじゃなかったかしらん?」と。それは同じく 彼が愛用するエロサイトのひとつ、『素人動画流出集Xシリーズ』からだった。このサイトは運営者 ドリトル 佐川 なる 変態中年がSNSをメインに募集した十代から二十代前半女性たちをモデルにくんずほぐれつの動画をアップしているものだ。もちろんただでは見られない。普通は。
しかし、世の中良くしたもので、 そういう有償サイトであっても、ネットを駆使すると案外 すぐと無料に見られたりすることがままある。 まあ、それを公務員が楽しんでいいかというのは また別の問題なのだが、 羽生 いわく、 これはあくまで パトロールの一環なのだと、勤めが終わって寮に戻って常人なら体を休めてだら~っとなにもしないにもかかわらず、仕事を プライベートに持ち込んで悪いやつがわいせつな動画を頒布していないか ネットを監視するほどオレは熱心な刑事 なのだと自分に言い聞かせるようにしてきた。これまでは。きっとこれからもこの手でいくのだろうと十二分に推測される。よって、この涙ぐましい 日常活動の成果で、Xシリーズの女と同じと出たため、 この女なら 単なる素人ではなく プロと言い切っていい 女 ゆえ、 今回のホトケに何らかの手がかりがあるのでは、と酌んだのであった。
「草柳さんって知ってる? この人」 梅宮は写真を見せる。
「 いえ、知りません」 ブラジャーとパンティが透けて見える薄い下着の商売着のまま 答える モエ。
「 そんなことないでしょ」 後から来た 羽生がタブレットで動画を見せると、
「あっ、こ・こ・こ・ここれ、どうしたんですか。プ、プ、プライベートだからって、撮らせたんですけど」
「 草柳さんに?」
「はい」
ここでいきなり 梅宮が何を言うかと思いきや、「 悪いんだけどさ、モエちゃん、 脱糞してくれない?」




