無実の罪で騎士団から追放された若手最強の俺。ただの冒険者ギルド職員になるも裏で皇帝直属の隠密騎士となり、帝都に蔓延る悪を斬る!〜異世界剣客無双 今更騎士団に帰ってこいと言われても、もう遅い〜(短編版)
第0章 プロローグ 「帝都に吹く春の嵐」
「エルンスト・アイゼンベルガー! お前から騎士及び貴族の資格を剥奪する。また帝国第一騎士団より永久追放、地下牢にてお上の沙汰を待て!」
生真面目な青年が、また一人邪悪によって無実の罪に追いやられた。
しかし、彼は邪悪に決して屈しなかった。
また、天も彼を見放さなかった。
「エルンストよ。隠密騎士となり、余と共に帝国に蔓延る『悪鬼』共を斬らぬか!?」
エルンストは彼、皇帝に忠誠を誓い、隠密騎士となった。
隠密騎士。
それは皇帝【ファルケンベルク四世】の勅命の元、帝国内の人々を助け守り、時には人知れず陰ながら護る者達である。
極悪非道な敵に立ち向かい、人々の安寧を願う彼らの運命は如何に!
◆ ◇ ◆ ◇
今は華咲き乱れる春、帝都の朝は早い。
今日も朝早くから冒険者ギルドには、開店前から新しい依頼を待って冒険者パーティが集う。
「エルンストさん、おはようございます」
「ああ、おはよう」
顔なじみの冒険者から朝の挨拶をされる赤髪の青年【エルンスト】。
彼は精悍な顔に笑みを浮かべ、ギルドの扉を開いた。
「今日も下水道で大ネズミ退治をしようかな?」
「西の村で、またゴブリンかよ」
「たまにはドラゴン退治くらいしたいなぁ?」
「アンタには無理だよ。ドラゴンの餌になるのが関の山さ」
依頼書が張り出された掲示板には、沢山の冒険者が集う。
「エルンストさん、僕らに向いた依頼は何かあります?」
まだ字が読めない少年が中心のパーティ、字が読めるエルンストに依頼書を読んでと頼む。
「ふむ。君らはまだ駆け出しだよな。なら、街中での困りごとを解決した方が良いな。これなんか、どうだ? 無理しちゃ意味がない。間違っても小人数でゴブリン退治なんて受けるなよ? 最初は依頼を一つでもこなして、お金を貯め装備を充実させることだ。武器より防具重視だぞ」
「はい!」
エルンストは、少年たちの装備が皮鎧程度なのを見て、まだ無理して戦闘依頼を受けないように諭す。
少年たちも、目をキラキラさせて先輩なエルンストの助言を聞いた。
それからも、初心者冒険者たちからの相談を気軽に受けるエルンストであった。
「エルンストさん、この護衛任務はどう?」
「最近野盗が多いから、商隊護衛任務が多くあるけど腕に自信がない奴は受けるなよ。死んでからじゃ遅いからな」
「はい! そういえば、最近物価が高いのも商隊が襲われているのが影響しているのですか?」
「そうかもな。さあ、次は誰が俺に話を聞きたい?」
◆ ◇ ◆ ◇
「お疲れ様です。いつもありがとう、エルンストさん」
「いえいえ。俺なんて前科者をギルドで雇ってくれるだけでも本当にありがたい話です」
日が大分昇り任務受付がひと息ついたころ、受付嬢がエルンストを労う言葉をかける。
「そうかしら? 今のエルンストさんを見ていたら何かの間違いと思いますよ? 貴方が不正して騎士団から横領したなんて?」
まだ年若いギルド受付嬢は、生真面目なエルンストを見て微笑みかけた。
「まあ、俺が騎士団を追放され、貴族階級を失ったのは事実ですけどね? ん、まだ依頼書が残っていますね。あ!? すいません、この依頼書を俺が受けて良いですか?」
「えっと……。近所の御隠居さんの代筆ですね。はい、どうぞ」
読み書きをこなせる上に戦闘・魔術技術もあるエルンスト。
ギルドでは事務方や雑用係、戦闘指南、警備、冒険者のヘルプなどなどをこなしていた。
過去の騎士団での栄光を感じさせず、気取ったところのない好青年なエルンスト。
冒険者ギルド内でも、彼の事を悪く言う人はまず居なかった。
しかし、彼にはどこか影を感じさせる雰囲気もあり、受付嬢などは心配をしていた。
「さて、今度の仕事は何かな?」
エルンストは、表情を厳しくさせてギルド建物を出た。
◆ ◇ ◆ ◇
夕日が照らす帝都。
代筆の依頼を片づけたエルンストは、ギルド併設の酒場からの残飯を捨てる為に裏口に向かう。
裏口側には汚物処理用のスライムが住んでいるゴミ箱があるが、そのゴミ箱の側に何か生き物が居るのをエルンストは見た。
「何か、居るのか!?」
路地裏で夕日が殆ど入らない中、比較的大きな四足歩行の獣らしいものがエルンストの前に居る。
それは夕闇の中、金色の輝く目を問いかけたエルンストに向けた。
「ぐるぅぅ。ご、ごはぁぁん」
唸り声をあげ、エルンストが持っている残飯に目を付けた獣。
それは突然、エルンストに飛び掛かってきた。
「ふん!」
しかし、エルンストはひょいと獣らしきモノの突撃を躱した。
「ん? これ、獣じゃなくて獣族の子供か?」
夕日の中に飛び出した獣、それは四足ながらヒトの姿をしていた。
汚れまくり、ボロ布になった衣服をまとった痩せた子供。
子供の頭部には髪色と同じ茶色の猫耳があり、犬歯をむき出しにしてエルンストを金色の瞳で見る。
子供の臀部から生えている茶色な尾も、大きく膨れ上がっていた。
「ご、ごはぁぁん!」
「もしかして、お腹が空いているのか?」
エルンストは、持っていた残飯を地面にそっと降ろす。
「ごはーん! あたしのぉぉ!」
すると子供は、雄たけびを上げ残飯ではなく、再びエルンストに飛び掛かった。
エルンストは、か細い子供の胴体と手を掴み、地面へ軽く投げ落とした。
頭部を打たないように引き手を掴んだまま、更にふわりと地面へ落ちるように手加減をして。
「きゅぅぅぅ」
子供は、投げられた衝撃で眼を回して気絶をした。
「ふぅ。一体何があって子供が残飯を狙ってきたのやら」
エルンストは、ひと息入れてから子供を軽く観察する。
呼吸に異常が無い事を確認し、怪我が他に無いかと軽く転がす途中で、息をしている子供の胸が微かながら膨らみつつあるのに気が付いた。
「え!? こ、これ、女の子なのか? ま、【マルジョレーヌ】さん! すいません、早く来てくださいませんか?」
エルンストは路地裏で叫び、ギルド受付嬢を呼んだ。
◆ ◇ ◆ ◇
「はむはむはむ。ごっきゅん」
ギルド併設の酒場、まだ夕食には少し早い時間で空いている。
エルンストの目の前では少女が、もの凄い勢いで食事をしている。
それを見ている受付嬢もニコニコ顔だ。
「全く俺だったからまだ良かったけど、危なすぎるぞ。いくらガキだからって女の子なんだからな」
「まあ、今は良いじゃないの。ね、【レニータ】ちゃん?」
「うん、マジョレーヌおねーさん。おかわりー!」
「はいはい。エルンストさんも、ついでに賄いを食べちゃってね」
受付嬢はニコニコ顔を崩さず、少女から食器を受け取り厨房へ足を向けた。
「なあ、一体何があったんだ? 良かったら俺に話を聞かせてくれないか? お前の食事代は俺が用立てた。話を聞くくらいの権利は俺にあるのは理解するよな? あ、すまん。子供相手に難しい事を言った」
エルンストは少女の事が気になり、身の上を聞く。
見た目は十歳になるかどうか、幼女と少女の間くらいに見えるレニータ。
「……分かるから良いよ、オジサン。一宿一飯の恩義ってやつだよね。お父ちゃんから良く聞かされたよ」
先程まではまるで野獣であったが、大分お腹が満たされたのか。
知性を感じさせる口調で少女は話し出した。
「おいおい。俺はまだオジサンって年齢じゃないぞ。二十一になったとこだが」
「アタシ、十三。十分オジサンじゃん」
……おいおい。その外見で十三歳かよ!? どう見ても十歳は越えていないぞ?
レニータが、意外と年嵩であるのに驚くエルンスト。
「オジサンには恩義があるから話すよ。アタシがこうなったのは、二年前のお父ちゃんの死が関係しているんだ」
それから、レニータは訥々と話し出した。
彼女の父親はトレジャーハンター団の団長をしており、各地の古代遺跡からの遺物回収を仕事にしていた。
母を早く亡くしたレニータは、父親と一緒に各地を冒険し幸せな時間を過ごしていた。
「そんな時に、団員の中でお父ちゃんの方針を嫌うやつが出たんだ」
レニータの父親は、遺跡探索中に事故死した。
ただ、状況からして殺されたのでは無いかとレニータは言う。
「アタシは、方針が変わった団から抜ける仲間に盗賊ギルドを紹介してもらい、夜のお店で下働きをしていたの。でも店内では女同士のいじめが酷かったし、十三になったからお客を取るなんて怖い事言ってきたから、お店から逃げ出したんだ」
後は、路上生活を数カ月したレニータ。
とうとう空腹に負けて残飯狙いでゴミ漁りをして、エルンストに捕まったのが今日。
「……そうか。『あの』団長の娘がお前だったとはな。世間は狭いな」
「オジサン、アタシのお父ちゃんの事を知っているの?」
「俺はオジサンじゃないって。あ、名乗っていなかったな。俺は冒険者ギルドで『何でも屋』をしているエルンスト。レニータちゃんだったけな。ああ、噂には聞いてたよ。トレジャーハンター団が急に宗旨替えして商人専属の私兵、自警団になったって話だったな」
エルンストは、受付嬢によって身綺麗にしてもらった少女をじっと見る。
そして問いかけた。
「レニータちゃん。もし、お父さんの仇を討てるとしたらやるかい?」
◆ ◇ ◆ ◇
「ははは! お前らのおかげでワシの懐も賑やかになったぞ」
「いえいえ。野盗になる前に貴方様に雇って頂き、こちらこそ感謝です。アイツは真面目過ぎて面白みのないヤツでしたから」
夜の帝都、商業街奥にある豪華な商館。
そこでは、賑やかに多くの者達が大広間に集い宴会をしていた。
エルフか半エルフらしき耳の長い吟遊詩人がポロンポロンとリュートを奏でる中。
屋敷の主たる豪商と彼の私兵、盗賊団の団長となった元トレジャーハンター団の副官が笑いあう。
「しかし、旦那様はお人が悪いですね。俺達を各地の商隊に潜り込ませては待機部隊と連携、後は皆殺し。荷を奪って、さらに流通を制限して値上げした物を売るとは」
「人聞きが悪いぞ、お前? ワシは商売敵を消しているだけ。更に、手に入った富を『あの御方』に献金しておるだけだ。あの御方のおかげでワシには全く捕り方も近づかん。ははは! 金は全てを解決するのだよ」
高笑いをする豪商。
周囲で酒を飲みかわす者達も、イヤらしい笑みを浮かべていた。
「笑止! この外道共が!」
そんな時、屋敷内に男性の声が高らかに響いた。
「何奴? どこだ、何処にいる?」
バーンと大広間の扉が吹き飛ぶ。
そこには逆光に照らされた男が立っていた。
「お前らの所業、とくと聞かせてもらった。最近、多くの商隊が行方不明になる事件が多発。物流が制限され、物価上昇を意図的に起こして私欲を肥やしていたのはお前たちか!?」
目元以外を隠し、赤を基調にした軽装鎧とマフラー、マントを身にまとう騎士。
彼は、高らかに罪状を豪商らに告げた。
「な、何の事やら。お前こそ、勝手に我が屋敷に武装して入るとは何事だ? 証拠も無しに何を言う!?」
「証拠なら、ここにあるぜ! アニキ、裏帳簿は見つけておいたよ」
騎士の背後から少年、いや小人族の青年が顔を出す。
彼の手には、分厚い書き物がなされた冊子があった。
「お、お前は新入りのガキ!?」
「潜入任務ご苦労。さあ、悪党退治の時間だ」
「あいよ!」
盗賊団の頭は驚くが、騎士は盗賊団に潜入していた小人族の青年を労う。
そして騎士は、腰から片手半剣を抜いた。
小人族の青年斥候も、腰から二本の鉈を抜く。
「お、お前ら、何者だ!?」
豪商が問いかける。
それに対して騎士は、高らかに答えた。
「隠密騎士、【エルンスト・フォン・アイゼンベルガー】!」
エルンストは、名乗り上げをしながら皇帝の紋章が彫られた証を周囲に見せつけた。
◆ ◇ ◆ ◇
「そ、その紋章は皇帝陛下のもの!? では、まさか! 噂に聞く皇帝直属の隠密か?」
「お前らの悪事は全て露見した。全員、大人しく自首すれば、この場にて命までは取らぬ。さあ、どうする?」
エルンストは、殺気溢れる眼で豪商らを見る。
「ふ、ふん。たった二人のお前らに何ができる。ここで斬り殺せば問題はない。出会え、出会え! こやつら賊を殺してしまえ!」
酒を飲んでいた者達は、武器を持ち出す。
豪商も、懐から単筒を取り出した。
「そうか、残念だ……。しかし、甘いな。誰が二人だけと言った?」
「ですよねぇ。さあ、ここからは『闘いの詩』を演奏しましょう」
盗賊達がエルンストに飛びかかる寸前。
壁際で大人しくリュートを引いていた吟遊詩人が、いきなり激しい曲を奏でだした。
「まさか、お前も?」
「はい。隠密騎士、【リングール】!」
リュートを奏でる吟遊詩人は、豪商に声高らかに名乗り上げた。
そして続けて小人族の青年も名乗る。
「同じく、【セベロ】!」
「さあ、悪人どもめ。コキュートスの川を渡れ! 地獄で己の罪を後悔してこい!」
エルンストは豪商らに死刑宣告をし、身体強化魔術を全開にして敵集団に向かって突撃していった。
「はぁ!」
得意な風魔術を併用し、凄まじいスピードで間合いに踏み込むエルンスト。
彼の真空を伴った剣の一撃は、確実に敵を倒してゆく。
エルンストの剛剣を受けた者は、受け止めたはずの剣ごと胴体が真っ二つになって死んだ。
二本の鉈を両手で振るう小人族セベロも、紫電を纏う高速走法で壁まで使い、立体的に動き回る。
そして的確に敵の首を跳ね飛ばして、命を奪っていく。
武器を持っていないとみて吟遊詩人を襲う盗賊達。
しかし、吟遊詩人リングールは手から糸、いやリュートの弦を飛ばして自らに迫る者達の首を容赦なく絞め上げた。
リングールの歌う「闘いの詩」は、ますます激しさを増す。
その歌には対象者の戦闘能力を上げる効果があり、エルンスト達のスピードも増していく。
「こ、これは……。逃げないと」
「お前、雇い主を放置して逃げるのか!?」
鬼神のごとく戦うエルンスト達を見て恐怖に襲われる盗賊団の頭と豪商。
しかし、彼らの背後から盗賊団の者が慌てて逃げ込んできた。
「お頭、それに旦那様! 向こうではドワーフと妙な女が屋敷の入り口で暴れてます! 連発する銃で、あちらは皆殺しにあってまさぁ!」
「逃げ道を封じられたのかぁ!? 隠密騎士共めぇ!」
配下の報告を受けて苦々しい顔をする豪商。
しかしエルンスト達の攻撃は更に速度を上げ、残る配下は数人までになった。
「そ、そうだ! 先生! 今こそ出番です!」
「呼ぶのが遅いぞ。さて、帝国騎士団に豪の剣とうたわれた『血風のエルンスト』殿と戦えるとは光栄なり」
豪商の背後に控えていた老剣士。
彼は仕込み杖から剣を抜き、杖の柄と二刀流の構えをする。
「貴方は……。では、尋常に勝負!」
エルンストは老剣士の顔を一瞥したのち、彼と向きあう。
その間にも小人族斥候と吟遊詩人は、残る残党を殲滅していった。
「はぁ!」
裂帛の気合で踏み込むエルンスト。
しかし、彼の上段からの剛剣は見事に老剣士によって受け流される。
「く!」
「まだ甘いのぉ?」
返しに軽い一閃を喰らい、避け損ねて顔を隠す布が切り裂かれたエルンスト。
彼の頬からは血が滲む。
「次はわしから行くぞ!」
「う!」
老剣士の素早い二連撃突きを、必死に受け流すエルンスト。
後方へ飛び去り、なんとか間合いを取り直す。
「昔、御世話になりました。貴方とはこんな形で再会はしたくなかったです」
「これも運命。最後にわしの贄となれ!」
顔を見合わせて後、踏み込み合う二人。
ガチンと大きな音を立て、お互いの剣がぶつかり合った。
「エルンスト。冥土の土産に教えてはくれぬか? 最後の一撃は?」
刃をぶつけ合い、チリチリと火花が出る押し合いになった状態で、老剣士はエルンストに呟いた。
「はい。風魔術を併用した真空斬、『おぼろ刃』。刃が重なった状態からの必殺技です」
「……そうか。お前はわしの様にはなるなよ……ぐふぅ」
老剣士は笑みを浮かべた後に大量の吐血をし、腹部からも大量に出血をして倒れた。
「先生!? ち、ちきしょぉ!」
もはや後が無い豪商は、持っていた単筒をエルンストに向け発砲した。
しかし、射線を見切っている上に身体の周囲を風の結界で守るエルンストには命中しない。
「無限地獄へ落ちろ、外道め。ふん!!」
エルンストは、離れた間合いから剣を振り下ろす。
剣先は音速を越え、剣閃は真空を纏う衝撃波となる。
そしてその一撃は、豪商と盗賊団の頭を肉片へと変えた。
◆ ◇ ◆ ◇
「おはようございますにゃ! エルンスト兄ちゃん」
翌朝、ギルドに出向いたエルンストは、元気な声で出迎えられた。
「お、おはよう。レニータちゃん、その恰好は?」
「そんなのわたしが見繕ったに決まっているじゃない? 可愛いでしょ?」
エルンストの前には、メイド服を着たレニータが居た。
その背後には、ドヤ顔の受付嬢もいる。
レニータ、昨日までのみすぼらしい格好とは大違い。
この先が期待できそうな美少女っぷりである。
その笑顔に見える八重歯っぽい犬歯が、これまたチャーミングであった。
「この子、住むところも行く先も無いっていうし。エルンストさんが盗賊ギルドに話を付けてくれたから、ウチで雇っても問題無いでしょ? だから、住み込みで働いてもらう事にしたの」
「そうですか。すいません、俺が子猫を拾っちゃったから」
「アタシ、捨て猫じゃにゃいもん!」
エルンストは、受付嬢と笑いあうレニータの表情が明るいのを見て安堵した。
……昨日聞いた時、復讐は何も生み出さないって言ったんだよな。この子は強いよ。
レニータに父親の敵討ちが出来ると聞くも、彼女は興味が無いと言う。
「お父ちゃんがいつも言ってたよ。世界は神様や太陽が空の上からずっと見ているんだって。だから、いつも自分が正しいと思う事、人の為になる事をしなさいって言ってたの。悪い人はいずれ天罰が落ちるってのもね。復讐なんて何も生まない事しないで、天に恥じないように生活するのが一番の幸せだってお父ちゃんに教えてもらったんだ。だから、敵討ちなんて興味無いよ」
エルンストは思う。
こんな優しい子の笑顔を守るのが、自分達。
影に生きる『隠密騎士』の役目だと。
「あー、アニキ。いつのまに、こんな小さくてかわいい子に目をつけたの?」
「エルンスト殿も油断できませぬなぁ。これは異界の言葉でいう『ロリコン』でしょうか?」
「お、お前ら。好き勝手言うなぁ!」
エルンストを揶揄う様に話しかける小人族斥候と半エルフの吟遊詩人。
今日も、帝都は春の日に暖かく照らされていた。
(終劇)
今回、新たに物語を作ってみました。
ご感想など宜しくお願い致します。