第三章 ガネッドの作戦
オスティア城下町──。
「皆さん!急いでこちらのほうまで移動して下さい!!」
グレンの声が辺りに響く。
住民たちは我先へと避難を始めていた。
「グレン将軍!!報告します。現在敵勢力がすぐそこまで来ています!」
一人の兵士がグレンに近寄り言う。
「分かった。お前は住民の避難を頼む。手の空いている者は私の後に続け!!」
グレンは馬に乗り、部下と共に敵の方へと向かっていった──。
オスティア中心部──。
「この愚か者が!!」
オウカの拳がコルテオの左頬にあたる。その衝撃に耐えられずにそのまま跳ばされ、倒れる。
コルテオは黒刀を持った青年にやられた後の経緯をガネッドらに知らされ、合流していた。
そして、コルテオと合流した瞬間にオウカは彼を殴った。
「──痛いですね、いきなり何をするんですか」
殴られた頬を擦りながらコルテオは言う。
「っ貴様、自分が何をしたのか分かっているのか!!」
「ええ、十分に理解はしています。私が部下を死なせてしまったことを、ね」
「ガネッド将軍から命令が出ていたはずだ! 関係のない住民、及び戦う意欲のない者の殺害を禁じられていたことを!!」
オウカはコルテオの胸倉を掴み怒鳴る。
「それまでにしておけ。オウカ」
後ろでそのやりとりを黙ってみていたガネッドはオウカをなだめた。
オウカは舌打ちをしながらもガネッドの言うことに素直に従い離れる。
「なぜ、命令に背いたコルテオ」
ゆっくりと立ち上がりながらコルテオは言った。
「あまいんですよ、将軍は」
コルテオは語る、長々と。
「無抵抗な者は生かす?住民は生かす?この戦争に意味があるのか?──くだらない、実にくだらない。
戯言はやめてください。目の前の敵を生かすのですか?見逃すのですか?──有り得ませんね。そいつらはいつか力をつけ仲間を集め、我々に復讐を誓うでしょう、行うでしょう、必ず……。そんな危険な分子をわざわざ将軍は見逃せと?──ふっ、笑えない冗談はやめてください。寒気がします。この戦争に意味があるのか?……とてつもなく、くだらない。ええ、実にくだらないです。戦争に意味があるのか?ではあえて私から言わせてもらいましょう、『意味のある戦争とはあるのですか?』」
ガネッドはそう問われるが答えずに黙っている。
「……答えられないのですか。まぁ、思っていた通りですがね、将軍。あなたは私やオウカさんより実力は遥かに上なのは認めます。ええ、認めますが、あなたは心が弱すぎる。覚悟が無さ過ぎる。なぜいちいち人を殺すのにそんなに躊躇うのですか?あなたはグリアの将軍でしょう?そんなあなたがなぜ躊躇うのですか?──戦場ではどんな美しい理想を掲げても、どんなに綺麗な言葉を並べても、所詮戦争は人を殺すのが本分です。戦争に意味なんかありませんよ。──あなたはこの戦場で何を求めているんですか?理想ですか?平和ですか?実にくだらない、ええ全く、実にくだらないですよ。人を殺し殺され命を奪い奪われ体を斬り斬られ殴り殴られ人が泣き泣かれ叫び叫ばれ──ここはその数え切れない負の感情と行動しかないんです。あなたがどんな夢物語を見ているかは私には知りませんが──知りたくもありませんが、ここではそんなものは通用しませんよ」
長々と語るコルテオ、それに対してまず反応したのがオウカだった。
「コルテオ、貴様、将軍に向かってなんと無礼を!!」
オウカは近くにいた兵士が持っていた剣を奪い、コルテオの首の辺りで剣先を止める。
「──貴様は、私が直々にあの世へと送ってやろう!!」
そう言って、剣を振り上げる。
「やめんか!!!」
ガネッドが叫ぶ。
「──オウカ、剣を収めろ」
「なっ!し、しかし、この者今生かしておけばきっと後悔します!!」
「……今は同じ軍の仲間を殺すときではなかろう」
そう大人しい口調で、それでいて小さくはない声で言った。
「……くっそ!」
剣を鞘に収め、乱暴に部下に渡したオウカ。
「命拾いしたな……」
オウカは吐き捨てるかのように言った。
そう言われてもコルテオはその言葉には気にせずにガネッドに向かって言う。
「ガネッド将軍。あなたはなぜ戦うのですか?何のために戦うのですか?」
「……私は祖国グリアを、そこに住んでいる民を守るために戦っている。それだけだ」
「たとえ、あなたの嫌うこのような形でもですか?」
「……それが陛下が思うグリアにとって、民のためになるなら私は心を鬼にしよう」
ここで会話をひとまずは打ち切り、ガネッドは二人にこれからの作戦を話した──。
「──というわけだ。異議はあるか?」
ガネッドは二人に対してそう言った。
「……私は構いませんが」
オウカが先に口を開いた。
「ええ、いいですよ。でも、将軍。本当によろしいのですね?さっきまでの会話のつながりだと矛盾しているとは思いますが?」
続いてコルテオも口を開いた。
「構わん。たとえどのような形であろうとも、私の嫌うようなことであろうとも、これがお互いの被害を
抑える最小限の方法だ」
ガネッドはコルテオに言った。
「──そうですか。分かりました。では、私は先へと向かわせてもらいます」
そう言ってコルテオは部下を引き連れてその場を離れた。
「……将軍、本当にこれでよいのですか?あいつ(コルテオ)にあのようなことを命令してしまえば、本
当にそうします」
「……構わん。さっきも言ったとおり、たとえ私の嫌うような形でもこうする方がいいんだ」
オスティアにとってな、と後から付け足してガネッドは言った。
「ガネッド将軍!!オスティア兵がこちらに近づいてきました!!」
数人のグリア騎兵が勢いよくこちらに向かって言う。
「とうとうこのときがきてしまったか……。オウカ出撃準備を」
「はっ!!」
そう言って、ガネッドは馬に乗りグリア軍はオスティア兵に向かって進撃した──。
オスティア騎士団。
「グレン将軍、、敵が見えてきました!!」
先頭にいるオスティア兵がグレンに言う。
「よし、わかった。皆のもの準備はいいな!!」
オスティア騎士団全員、そのグレンの言葉に呼応した。
「では皆のもの我に続け!!!」
グレンは馬に乗り、自分の部下に向かって叫んび出陣をした。
こうして、オスティア軍とグリア軍の戦争は、始まった──。




