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第十二章 獄中

今回は話の繋ぎの部分です。

いつもの庭園。


「……遅い」


どれぐらい経ったのだろう。彼は未だにこの庭園に姿を見せない。


どうしたのだろう。約束の時間は過ぎているのに。


それから、辛抱強く待つこと数分後……。


一人の少年がこちらに向かって走ってきた。


少年はここまできて足を止め胸の辺りを押さえながら言った。


「ひ、姫様、もうし、わけ、ありません──すこし、父上に呼ばれて、いたので、だいぶ──遅くなって、しまいました──」


ぜーっぜーっと息を切らしながら、ウィルは言った。


「ハーゲン将軍より、位の高い私の方を優先すべきじゃないかしら? それについ三日前のことを忘れたの? ウィル?」


「へっ?………………あ! あああああああああああ!! す、すみません!! 忘れていました! え、えーっと、セフィリア…様……?」


「なんで私に聞くの……。それに様付けも禁止したはず。分かっているの?」


「あ、す、すみません。え、えーっと、せ、せっ、せせせせせせ、セフィリア」


「……」


「……あのー、……セフィリア様?」


「…………あなたって人は、三日も経ったっていうのにどうしてなれないの?」


「え? あっ、すみま──」


ウィルの唇に人差し指を当てるセフィリア。当然ウィルが言おうとした言葉を遮ってしまった。


「そこは『ごめん』でいいの。私達、友達なんだから敬語は必要ないの」


そっと、ウィルの唇から指を離すセフィリア。ウィルはその動作をただ茫然と眺めている形になる。


その硬直状態がしばらく続き、セフィリアは不思議に思った。


「ウィル……?」


そう問われても、頬を赤めたままの少年はただ固まっているだけだった。


「ちょっと、ウィル、どうしたの!?」


手を目の辺りにひらひらと振る。数秒後、ハッと我に返ったウィル。


「どうしたの? 顔が赤くなってるし」


「あ、い、いえ、そ、その……、な、何でもないです! 大丈夫です!!」


「そう? でも顔が赤いみたい……風邪にでも引いたの?」


「へっ? ……ああ、そうみたいで──じゃなかった。そうみたい。 うん、じゃあ、今日はここまで、えーっと、そ、そういえば、兄さんに呼ばれていたんだった。こ、これはいけない。そ、それでは!」


慌てながらそう言うとウィルは走り去ってしまった。


二人の会話は五分ももたずに終わった。


「……へんなウィル」


そう呟いた、八年前のある日の出来事──……






「ん──」


目を開けた。ぼんやりと視界が目に映る。


まだ寝ぼけているのかセフィリアは体を動かそうとする。


「ん……? あ、あれ?」


手首に何かで縛られているようだった。後ろに縛られているので彼女自身その何かが全く分からない。


「えっ? えええっ!!? ちょ、これどういうこと!? ええっ!!?」


どうやら完全に目が覚めたようだった。


そんな彼女セフィリアが今現在いる場所は石で詰まれて出来た部屋。そこは──


「なんで私、牢屋にいるの!? クロイド! どこ!? 私を売ったわね!!? えらそうなこと言っといてこんなのって酷すぎない!!?」


状況がいまいち理解できず、混乱するセフィリア。







「チッ、うるせーなぁ。ちったぁだまっててくんねーかなぁ」


木で出来た扉の向こうから声が聞こえた。その声に聞き覚えはなかった。


「ちょっと! これは一体どういうことなの!? あなたは一体何者!? 長髪黒髪無愛想男(クロイド)どこにいるか知らない!? お腹すいた! 豪華な朝食を寄越しなさい!!」


「……だから喧しい。それにいくつも質問をするな、耳が痛くなる。それに質問に答えるなら俺はグリアの一般兵で、そんな男知らないし、それに今はもう……昼だ」


随分と優しい一般兵だった。


そんな優しさを無視するかのように(実際無視をしている)言葉を続ける。


「グリアの一般兵!? 私より位がずっと低いじゃない! 口には気を付けなさいよ!! 昼? だったら昼食寄越しなさい、今すぐに!!」


「こいつほんとに王女なのか……?」


溜め息とともにそう呟く一人のグリア兵だった。











グリア帝国、グリア城──





扉からノックする音が聞こえる。


「入りたまえ」


グリア帝王は向こう側の者へ言う。


扉が開き、一人の男が入る。


「……お前か。例の件、どうなっている?」


「現在オスティア王女セフィリア姫は牢屋に閉じ込めている」



仮面の男は答えた。



「そうか、……で、グレンはどうした?」


「グレン殿とは、アラスク山にて別離した。……何か問題でもあったか?」


「別に問題なぞない。処刑はお前に任せる。翌日、オストンの多くの人の面前で死に顔でも晒してやれ」


「御意」


そう言うと、男はその場から消えた。


「全く、相変わらず不気味な奴だ。まぁこちらに加勢してくれているんだったら問題はないか……」


そう言うと不敵な笑みを浮かべていた男。


片手に白く美しく光る白銀の刃が柄と鞘の間から見える刀を持ちながら・・・・・・。











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