第十章 互いの意志
前回は約束を守れず、すみませんでしたm(__)m 今回は戦いがメインです。如何せん初めてなものでどうなのかは分かりませんが、これでもがんばった方なんで読んで下さい、お願いします><
「さぁ……来い」
なんで……。
「どうした?」
どうして……。
「早く来い。さもなくば……死ぬぞ」
どうして、こんなことになってしまったんだ。
どこで間違った。
いつ、どこで間違ってしまった。
あの時……からなのだろう……。
全てが狂ってしまったのは──
グリア帝国、グリア城内──。
「違う、これでもない」
ガネッドの話からでた『幻術士』という言葉に違和感を感じていたオウカは訓練の終了後、一人資料室で古い文献を読んでいた。
『幻術士』
人の心を惑わし、相手に幻を見せる者。
人の心に漬け込むもの。
存在自体、幻とされている者。
何百年も前に滅んだ一族──
「違う、こういったものじゃない。……きっと何かあるはずだ。この違和感、とてつもなく嫌なものだ……」
そう言いながらも、一冊一冊、乱雑に手に取り読んでいく。
(幻術士……そんな者が仮にいたとしたら、陛下は、陛下は……いや、そんなはずはない。決してありえない。もし、仮にそうであったとしても多人数同時に幻を魅せられるのか? 幻術士とやらは、果たしてそんなことができるのか?)
彼の頭の中には『疑惑』の二文字しかなかった。
アラスク山の森の中、二人の男が向かいあっていた。
一人は鎧を身につけ、両刃の剣を構えるグリア帝国軍、グレン。
対するは鞘、鍔、柄それぞれ黒い刀、黒刀を握りしめて体勢を低くしグレンを凝視する男、クロイド。
風が吹く。木の葉が舞う。クロイドの結わえた長い黒髪が僅かに揺れる──。
「……どうした?なぜ、かかってこない」
グレンは剣を構えたまま言う。
クロイドからは何も返事が返ってこない。
「死を恐れているわけではないだろう。ではなんだ?なぜ向かってこない」
「・・・・・・」
「……もういい。来ないなら、こちらから行かせてもらう!!」
そう言うとグレンはクロイドの元へ一気に駆けていく。
相手が向かってきたというのにクロイドは微動だにしない。
どんどん両者の間は縮まっていく。
そして、グレンの剣がクロイドに向かって斬りかかる──!
「はぁああああ!!」
「っ!!」
キィン!!──……
金属音が鳴り響く。それは剣の刃と黒刀を鞘に納めたままの状態のものがぶつかってなった音だった。
「!!!?」
抜刀されていない状態のままで攻撃を防がれたグレンは驚く。そして、そのクロイドの態度にグレンは激怒する。
「……貴様、俺を馬鹿にしているのか!!」
「くっ……」
「さぁ、早くその不気味な刀を抜刀してみろ。手加減など一切……無用だ!!」
そう言ってグレンは思い切り右足でクロイドの左わき腹に目掛けて見事な回し蹴りを浴びせる。
「ぐっ──」
その衝撃に絶えられず蹴られた方向へ飛ばされるが、地面に叩きつけられる前にクロイドは空中で一回転し無事、着地する。
「さぁ、やるからには全力で来い」
そう言ってグレンは剣を構えたまま、クロイドの元へ一直線に向かう。
体勢を立て直し、向かってくるグレンに対しクロイドは刀を抜刀しようとはせずにそのままグレンの元へと走る──。
剣と鞘に納めたままの黒刀がぶつかる。
「貴様、……未だに俺をなめているのか!! ふざけるな!!」
グレンは未だに抜刀しようとはしないクロイドに向かって剣を振るいながらも、激怒する。
「──……するな……」
「何?」
「勘違いするな。俺は別にあんたと闘り合うつもりはない」
「なんだと……? 俺をまだ戦う相手として見ていないのか、貴様は!!」
「そうじゃない」
対するクロイドもグレンの攻撃を納刀したままの黒刀でかわしながら言う。
「あんたには、守りたい人達がいるんだろ? あんたを殺したらあんたが守りたいと思う人々はどうなる? あんたの代わりになるような奴を俺は知らんが……」
「──知った風に言うな!! 貴様に何が分かる!! 国を滅ぼされ、陛下を守れずにただ敵国の駒としていいように扱われる気持ちなんぞ、貴様に分かるはずが無い!!」
「……確かにな」
刀と剣がぶつかり合い、お互い押し合った状態へと流れる。
クロイドは溜め息をつき、そして言う。
「でもな、そんな立場にたったことなんてないけどな、あんたと俺の立場は少し似てんだよ」
グレンの言葉を待たずに、続けるクロイド。
「俺には守りたい人がいる。そいつは知識が無くて寝相が悪くてわがままでだらしない──けどな、そんな奴だからこそ、守りたい……って思ったのかもな」
「……なるほど、な。君にも守りたい人がいるのは分かった」
少し落ち着いたようで、穏やかな口調に戻るグレン。
「……だがな……、例え君に守りたい人がいて俺にも守りたい人がいる──そうであったとしても──この戦いは……やめられない!」
そう言うとさっきまで剣と刀が押し合ったままの状態から一転し、グレンが剣を上部へ力尽くに上げてクロイドの構えを崩す。
その行動を全く読めていなかったクロイドは思惑通り、黒刀を持っていた両手全体が上部へ勢いよく上がってしまう。
「!!?、しまっ──」
クロイドの顔に焦りが見えた。
「これで、終わりだ!!」
その隙にグレンは持っていた自分の剣を勢いよくクロイドに向けて斬りかかる──!
アラスク山の山中、風が吹き、山の木々の枝が微かに揺れていた──。
~お知らせ~
第一章の部分に付け加える予定がありますので、付け加えたらまた後日連絡するので楽しみにしていてください♪