第1話 出会い
第1話 出会い
僕はアラン・グリープリース
ごく普通の魔導士。
冒険が好きで、よく討伐ついでに森に出かけている。
「魔法学校卒業後に魔法学校直属ギルド入る」というごく一般的なレールそのまんまを歩いた感じの一般的な魔導士の生活を送っているが、冒険が自由にできるから何も不満はない。
そう。つい先月までは…
先月の朝
親友のアーサーとエーフィーで森の中で素材採集をして、ギルドに帰る途中のことだった。
アーサーは重い素材を毎回持ってくれる。
「アーサーくん、いつもありがとね!」
「にしても今日は特に重いなぁ…」
「今日は魔剣の木だからね…見た目の割に重いだろうね…」
魔剣の木は魔法が伝わっても、変質しない頑丈でちょっと珍しい木である。
学校で魔法実践授業の練習用の杖によく使われる。
そして魔導書を歩きながら読んでるエーフィーはいつものように突然会話に参加してくる
「でもお前が持ってる大剣の方が重いんじゃねーの?」
「おお!こりゃ一方取られたなあ!」
明るい感じは変わらないが今日は少し汗の量が多めだった
「でもアーサーくん、今日はやけに重いって感じが顔に出かけてるよ」
「まあいつもよりかは重いな」
いつも通りの大剣重いという内輪ネタを挟みながら帰路を辿っていると少しの人だかりを見つけた。
そして男性魔導士がこぞって煽り口調で喋っているように聞こえる。
「珍しくひと気のある街に出てるやん!えらいぞガキンチョ!」
「うるさい!私はガキでもなんでもない!」
「ちょっとちょっかいかけただけだろ〜
最高位魔導士のくせにそんな煽りに乗んなよ〜」
「はぁ?そんなにキレてないけどー。私が本気出せばあんたたちなんて雑魚同然なんだからねーだ!」
「お前あまりに姿出さないから周りからなんて呼ばれてるか知らないだろ」
「なんなのそれ?聞いたことないけど」
「魔導士名家最弱のメスガキ ってよくネタ扱いされてるけど聞いたことなかったかぁ」
「なんだとーー!?」
「はいキレたーw」
「やっぱ煽りに弱いガキだったじゃねーか。たまには煽り返してみろよ」
「うぅーうん!雑魚に付き合ってる暇なんかねーよザーコザーコ」
「生メスガキ!」
「うるさい!」
ひと目見た瞬間にわかった。
五大最高位魔導士のメリー・ゼルヴィアス
実際身長と性格上バカにされがちだが、実力は本物。
ただ他の最高位魔導士は、日常でも見かける程度には街にいることが多く、彼女だけが滅多に見ないレアな魔導士だった。
だから本当の実力を見る機会もなく、彼女を強いと信じる者は数少なかった
「俺らも一回煽りに行くか?」
「アランはどうする?」
アーサーくんの提案には反対だが、彼の言葉が背中を押してくれた。
彼女が森に入ってしまう前に一度は喋ってみたいという気持ちの一心で走り叫んだ
「おーーーい!メリーさあああん!」
「ん?」
息切れしながらも、頑張って想いを…
「いつも月刊メリーの探索日誌を読ませてもらってます!!魔法の精度とか…色々言い切れないほど凄くて尊敬してます!
あの…握手とかってしてくれたりしますか?」
「え……あれ読んでるの…?…」
「毎月読ませてもらってますよ!」
「あれ一冊も売れなくて原本をそのまま書店に置いてたから、毎月捨てられて無くなってたのかと思ってたんだけど…」
「え!あれ世界で一冊なんですか!!」
「う…うん… まさかあの本のファンが1人でもいるとは思わなかったな…
はい…… 」
メリーは顔をほのかに赤めながら手を差し出した。
「ほあぁぁ!ありがとうございます!」
今日は人生で一番幸せだと言わんばかりの幸せだった
あのふわっとして少し湿った指の感触を一緒忘れられない
「おめぇマジでメリーが好きだったんか…」
「正直ネタだと思ってたわー」
若干アーサーに引かれ、エーフィーは魔導書に落書きしながら棒読みでツッコみ、そして今日もギルドへ帰る。
ここの魔法学校直属ギルドは宿舎と食堂付きのギルドで、学校直属では無い普通のギルドは基本泊まれないことを前提をしている場合がほとんどだ。
この便利な生活環境があってこそ、僕は普段の出費を気にせず冒険に出かけることができる。たまにひと部屋で3人寝泊まりするのも楽しい。
普段だったら自分の部屋に入って研究してる魔導書の続きを読んだり、お絵描きをしながら暇つぶしをするけど、今日はあの指の感触を一生忘れないように握りしめながら、夜を過ごした。
寝不足覚悟で。
翌日。最高位魔導士が集まる城
フォーラル城では緊急招集 警戒レベル1の鐘が鳴り響いていた。
鐘はレベル4未満の場合民衆には聞こえず、「最高位魔導士」のみに伝わる仕組みとなっている。
「なんか嫌な予感はしてたんだがな…」
「こんな平穏な日になんの騒ぎかしら」
「うお!これは面白い予感!」
-城の入り口-
「雑魚モンスター大量狩りか?久々の鐘だな!」
「相変わらず脳筋だなぁ…君は」
「うるせえなあ!おめえもアイドル気取りすぎて魔力落ちてんじゃねーの?」
「アイドル気取りなんて心外だなぁ…これでも常任の教師なんだよ…」
「朝からうるさいわねぇ…」
「あれ?メリーちゃん来ないの?僕の予感もしかしてはずれた?」
「あいつは来ねえだろ、多分警戒レベル3でも来ねえよ。」
「僕は久々に見たかったなぁ。まあレベル3はギリギリ全員招集しなくても勝てるラインだからね」
「あの時レベル1で3人やられた時の悲惨な事件をもう忘れたのかしら…
時間というのは残酷ねぇ…」
「お前がババアだからだろ!俺らの世代と被ってねぇんだわ」
「もう一回ババアって言ったら殺す」
「えぇ…怒るところちょっと違う気が…」
「まあ僕たち最強だからね〜、ぶっちゃけメリーちゃんは親友だけど戦力的にはあって無いようなもんだから気にしなくていいよ〜」
「あいつそんなに弱くないぞ。マジ。」
「メリーちゃんに責任とか感じで欲しくないだけだから〜、もちろんメリーちゃんが強いこともかわいいことも僕が一番わかってるよ」
「そうだね、僕もそう思うよ。」
「おーい!みんなー!」
上から声が聞こえた。
メリーが城の窓から手を振っている。
「もしかして鐘鳴らしたのお前か?」
「はぁ…嫌な予感が当たった…」
「メリーちゃーーん!」
「どうやら平穏な日常は続いていたようで安心したわ。」
次回「メリー、告白」




