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流行

作者: 森内哲

 僕は流行に詳しくない。テレビも見ないしSNSもしていない。ネット自体、たまにニュースサイトを見て周るぐらいしか使わない。


 単に関心がないだけではない。僕はある意味、無理に流行を避けようとしている。友人との会話で芸能関係のことが話題になるとそっと離れるようにしているし、コンビニに入っても週刊誌は決して開かない。本屋へ行っても平積みの本は目もくれず通り過ぎるので、どんな本が売れているのかも知らない。


 しかし、そんな僕でもかつてはこれほど世間の流行り廃りに置いて行かれていたわけじゃなかった。ここまで頑なになったのは、ある事件のせいだ。


 僕がまだ高校生だったころの話だ。今よりましとはいえ、芸能人のことも話題のマンガ、映画、ドラマのことも、ほとんど知らなかった。男性なら覚えのある人も多いだろうが、流行っているものに飛びつくことを恥ずかしいことだと思っていたのだ。


 しかしある日、友人のKに「知りもしないで毛嫌いするのはもったいないよ。せめて知ってから嫌ったら?」とアドバイスされた。Kは弁舌爽やかな男だった。そのKに言われ、僕は確かにそうだなと納得してしまい、たまには流行に乗ってみる気になった。


 翌日の昼休み、いつものグループで雑談していると、Mが青信号を進もうとした瞬間、車が横断歩道に突っ込んできて肝を冷やした、という話をした。


 当時、某朝ドラが流行っていた。そのドラマで有名になった方言とともに、主演の女性俳優のかわいさが男子の間でよく話題になっていた。


 ここだ、流行に乗るならここだ、と思った。僕は間髪入れず「そりゃぎょぎょぎょって感じだね」と返した。


 しかし自分の期待とは裏腹に、みなが怪訝な表情をした。しまった、もしかしてこのセリフ、本当はそこまで流行ってないのか?と冷や汗をかく。


 「あ、いまの『あまちゃん』で出てくる方言なんだけど……」と言い訳するように付け加えた。するとKが悲しげな表情を見せた。そしてどこか申し訳なさそうにしながら、こう指摘した。


 「あまちゃんは『ぎょぎょぎょ』じゃなくて『じぇじぇじぇ』だよ。『ぎょぎょぎょ』はさかなクンだよ」


 二度と流行に乗ってなんかやらない、そう固く誓った。

最後まで読んでくれてありがとう。そんなあなたに感謝します。

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